SMごっこ
二次元世界の調教師:作

■ 6

 こうしてセーラー服の上下から白い下着をのぞかせるという露出狂のような格好で、翔に抱え起こされ歩きを再開した私は、フワフワとピンクの雲の上を歩いているような奇妙な感覚で人混みの中を進んで行った。カラダが自然と隣の翔にピタリと寄り添い、群衆の中にいながら私の気持ちの中では2人切りの世界になっていた。

 新しく出来た「甘味処」はやはり人でいっぱいで、私達は入口を入ってから待合い用の長椅子に座って待たねばならなかった。私達はもうベタベタのバカップルみたいにピタリと寄り添って座り、手が使えない私は必死で両ヒザを揃えて座ろうとしたのだが、翔が「脚を広げるんだよ、めぐ姉。」と耳元で囁くと、私の脚は仕方なくゆっくりと広がって白い物をはっきりと覗かせてしまっていた。

「大丈夫だよ、めぐ姉。
 僕がついてるから……」

 パンチラ、ブラチラをモロに見せている余りにも羞ずかしい格好に泣きそうな表情になった私の肩を、翔は優しく抱き寄せてそんな言葉を呟いた。大勢のお客さんの中にはうちの学校の生徒もいたはずだが、もう何も気にならなかったし、私達の異様なムードに気圧されたのか、誰1人声を掛けては来なかった。たぶん誰か知り合いに見られたに違いないのだが。

 ようやく番が来て案内されたのは、小さな他とは隔離された和室だった。もちろん完全な密室ではなく、店の人は出入りするし中を覗けば丸見えだが、向かい合わせに座った私達2人にとっては十分だった。オーダーを取った店の人が出て行くとすぐに、翔は身を乗り出して言ったのだ。

「めぐ姉。
 キスしよう。」

 こんな所で、と言う気持ちはあったけど、もう血の繋がった実の弟と口づけを交わす事に対する背徳の思いは不思議なくらいわいて来なかった。そう、翔が始めに私に対する思いを、自慰行為に耽ると言うやや不謹慎な形とは言え告白して来たように、私の方も翔と男女の関係になってしまう事を心の底ではずっと望んでいたのである。そしてこの「SMごっこ」でカラダのガードが解除されてしまった今、私の気持ちがこの出来が悪いけど憎めないかわいい弟に傾倒してしまうのは自然の成り行きであった。身を乗り出し唇をすぼめて顔を近付けて来た翔に、私は無言で目を閉じて承諾の意を示し、求められるまま彼に唇を与えてしまったのである。翔は手が使えず唇を突き出す事しか出来ない私の後頭部に両手を回して、顔を抱え込むようにして唇を優しく吸ってくれた。その時間はわずかだったと思うけど、私達にとっては決定的な超えてはならない一線を越えてしまった瞬間であった。

 唇を外して私も、そしてたぶん翔も、誰かに見られていないかドキドキしながら辺りを見回し、どうやら大丈夫だったらしい事を確認すると、甘い物があまり好きではない翔は、私の希望で注文した白玉ぜんざいとケーキのセットを、スプーンですくって、はい、ア〜ン、と正にバカップルのように食べさせてくれた。翔は自分の分は半分くらいしか食べず、その残りまで食べさせてくれたので、やたらと時間が掛かった。時折姿を現す大人の店員がこんな混雑した店内で、ゆっくりと「彼氏」が「彼女」に食べさせている私達カップルを、全く近頃の若いもんは、とでも言いたげに嫌な目で見ているのがわかった。それに正座している下は大丈夫だが、胸元がだらしなく開いて下着を見せているのも、物凄く羞ずかしかったけど、そんな思いは軽いスパイスになる程度の、それはカラダにも心にも「甘い」瞬間だった。

 ようやく食べ終えた時、私は困った感覚にモジモジしながら、翔に「トイレに行くから、手を解いて」と言った。が、見ると混雑した店のトイレにも待っている女性が長蛇の列を作っている。翔は賭けに勝ったのに、「僕が払う。」と2人分の支払いをすませながら、公園のトイレに行こう、と言った。私はそんな所の公衆便所など使うのは嫌だったけど、短か過ぎるスカートのせいで冷えたのか尿意はいつになく切迫しており、いつ果てるとも知れないトイレの行列を見ていると、翔の提案に従うよりなかった。

 公園は帰り道ぞいで少し脇道を入った場所にある。出るともうすっかり暗くなっていて、店で時間を使い過ぎたようだ。公園までは3分くらいで着いたが、園内はもうこうこうとライトで照らされていた。私は人の気配がまばらな公園内のトイレまで急いで行ったが、こんな時間に入ったのは始めての公園は子供達の遊び場である昼の姿とは違って、所々に私達のようなカップルが見られる、一種のデートスポットのようになっていた。

 トイレの前で私は、手を解いて、と言ったが、翔はとんでもない事を言い出した。

「帰るまで手はそのままだよ。」
「で、でも……」

 私はもう切羽詰まって地団駄を踏みながら、翔の意地悪な言葉に困ってしまった。

「僕がめぐ姉のトイレを手伝ったげるよ。
 小さい方でしょ?」
「そんな! ……」
「えへへ、SMごっこらしくなって来たでしょ。」
「私が嫌だと言ったら、やめてくれるんでしょ!」
「嫌なら僕はここで待っとくから、1人で行って来ると良い。」

 一体いつから翔はこんな意地悪な、悪智恵の働く子になったんだろう? トイレを見て安堵の余り緩めてしまった私の股間はもう限界が近く、ここでためらっている時間は残されていなかった。手が使えないのでは、トイレを自分で使うのは不可能ではないか。

「う、うん、わかったよ翔。
 手伝って!」
「よしちょうどそこに大きいのがあるから、入ろう。」

 翔がそう言ったのは身体障害者用の大きな個室である。さらに罪悪感が強まったが、私は背を腹には替えられずにその中に入り、一緒に翔も入り込んで来た。もうヤバい状態の私はすぐに便座に腰掛けて翔に、早くして! と救いの視線を送る。翔はほとんど用をなしていない短いスカートをどけると、私のパンツに手を掛けた。

「めぐ姉、もうお洩らししちゃったみたいだね。」

 状況が許せば股間蹴りを喰らわせてやりたい気分だったが、私の情けない言葉は、早くして! と翔に懇願するだけだった。そして翔の手が既に別の液体で濡れまみれていた白パンツをずり下ろすのとほぼ同時に、私の股間は決壊してシャーッと勢いよく水しぶきが噴出したのである。

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