SMごっこ
二次元世界の調教師:作

■ SMごっこ2-3

 翔とは頻繁にメールや電話を交わしていた。が、浮ついた話は一切なし。私は空手漬けの毎日について語り、翔はいっちょまえに進路についての悩みを私にぶつけて来た。すぐに社会に出る根性などあるはずのない翔は大学に行きたいらしいのだが、相変わらず赤点をもらいながら超低空飛行の学業成績では、行ける大学はない。私はすぐにでも規制して、ヘタレのアイツに愛のムチをふるいながら勉強机に着かせたい衝動に駆られたが、ここで甘やかしては翔のためにならない。自分で良く考えろ。大学に行きたいなら、自覚して勉強しろ、と冷たく突き放した。

 その後も私は熊のような彼氏と関係を重ねた。最初はあまりにおざなりに思われた彼とのえっちを、まるで楽しむ事は出来なかったが、それとなく彼にしてもらいたい事を教えて、それなりの歓びを得る事が出来るようになって来た。本当に、それしか才能のない翔のえっちは、素晴らし過ぎたのだ。体の割に翔より固さもサイズも物足らない彼氏のペニスを力の限り締め上げながら、私は心で念じていた。早く私を満足させて、翔の、あの素晴らしいペニスを忘れさせてくれ、と。

 いよいよ初めての盆が来た。すっかり女子大生らしう変わった私を見て、両親も上の姉も大いに驚いているようだった。女なのにまるでおしゃれに興味がなかった高校までが異常だったのだ。ほとんどスポーツ刈りみたいだった髪は伸びたし、美容院で華やかにセットした。大学で初めて覚えたお化粧も板に付いて来た。

 さらにまだ残暑の厳しい季節とは言え、ノースリーブのシャツにフレアミニと言う、以前の私には考えられない露出過剰な格好で、私はこれまで抑えて来た若い女性のフェロモンを全開に振りまいている、と自分でも思った。でもこれは付き合っている彼氏を喜ばせるためのもので、決して翔を意識したわけではない。そんな格好で里帰りした時点で、私の気持ちは矛盾していたのだけれど。

 他の家族の目も気になったが、私が一番仲の良かった翔の部屋に2人切りで入り込んでも、それほど不自然ではなかっただろう。

「め、めぐ姉……
 パンツ見えてるよ」

 リラックスして床に座ると、白い物がのぞいていたようだ。下着くらい見えたって平気な強気のミニスカだった私だが、翔に言われるとおかしなくらい羞ずかしくなって、顔から火が出そうなくらい真っ赤になってしまうのがわかった。

(コイツにパンツくらい見られたって平気なはずなのに……
 羞ずかしがってちゃいけないわ)

 そう。実の弟に胸をときめかせてキュンとなってしまうような気の迷いを、私は無理にでも断ち切らねばならない。だから私はあえて大胆に振る舞った。

「別にいいだろ、パンツくらい見えたって。
 減るようなもんでもないし」

「めぐ姉、キレイになったね」

「生意気だな、弟のくせに」

 ああ。翔、そんな事言わないで。アンタがそんな事言うもんだから、私は……

「女子大生になると、そんなえっちなパンツをはくんだね」

「ははは、彼氏に見せる勝負パンツだ。
 見せてやろうか。」

 ああ、私は何て愚かなのだろう。アンタに見られたって全然平気とばかりに虚勢を張り、バッとミニスカをめくって見せたのは、彼氏が見たら鼻血を出してしまいそうな白いスケスケのヒモパンツ。でも喰い入るように見入って来た翔の視線で、私はどうしてもドキドキして、感じてはならないイケない気持ちを覚えてしまった。

「彼氏が出来たんだ……」

「当たり前だろ。
 ホラ。」

 ケイタイを開き、熊みたいな彼氏とのツーショット写真を見せてやった。

「めぐ姉って、そんな趣味だったんだ」

「お前には関係ないだろ。
 もちろん、えっちもしたぞ」

「め、めぐ姉、えっちしたって……」

 そんなはしたない言葉を口にする堅物だった姉の変貌ぶりに大いにあたふたした様子を見せる翔を見て、私は勝利を確信した。どうせヘタレの翔はウジウジして彼女の1人も作れずにいたに違いない。

 が、しかし。

 翔はもう私が知っているヘタレの翔ではなかったのだ。

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