ダイエットモニター
二次元世界の調教師:作

■ 2

――うわあ、カッコいい人……

 それが渋谷マコト先生の第一印象です。全身黒いレオタードを着用した先生は、スラリと長身でボーイッシュなショートヘアの、いかにも運動神経が良さそうな女性でした。ホントにモデルさんみたいにやせていて手足が長いから、とてもカッコ良くてステキなんです。声も電話でお話した通りの低音で、私は同性なのに不自然なくらい胸をトキめかせてしまいました。

ー良かった。こんなステキな女の人に教えてもらえるんだ……

「妹さんですね。渋谷マコトです。どうかよろしくお願いします」

 お姉ちゃんが隣で小突いたので、先生に見とれてボヤッとしていた私は慌てて頭を下げました。

「あ、あの、山下久美です。姉がいつもお世話になっています……」
「まあ、妹さんもかわいらしいわね」

 先生がお世辞を言われたのに、私は顔を赤くしてしまいました。

「どうぞこちらへ」

 先生に案内されて奥の部屋に行くまでに、まるでトレーニングジムみたいな室内では数人の若い女性が汗を流していました。私はお姉ちゃんにヒソヒソ話をします。

「お姉ちゃん、みんなレオタード着てる……」
「アンタは着替えるんだからいいの」

 お姉ちゃんはパンツが見えそうな私服のミニでいいのかしらと思いながら、場違いな服装の私たちはマコト先生の後を着いて行きました。入口は狭かったけど、中もやっぱりそんなに広くはなかったです。

「それではモニター契約に関してお話をさせて頂きましょう」

――契約って? 無料じゃないの……

 奥の小部屋は事務所みたいになっていて、事務机を挟んで私たち姉妹と先生が向かい合わせに座りました。そこでいきなり「契約」と言う言葉を使われたので、私はちょっと驚いてしまいました。でも隣にお姉ちゃんがいて、ニコニコしているので安心でした。きっと心配することなんかないのでしょう。

「ダイエットコース1か月間無料モニターです。間違いありませんね?」
「はい」
「お姉さんはもう1か月が過ぎられるんですけど、無料モニターに妹さんを紹介して頂けましたので、ご希望なら一緒にコースを続けることが可能です。もちろん完全無料です。希望されますか?」
「はい、是非お願いします!」

 お姉ちゃんの声は弾んでいましたが、それはちょっと話がうま過ぎるのではないでしょうか。すると私の気持ちを見透かしたようにマコト先生が言われたのです。

「どうしてそんなオイシイ話が、とお思いでしょう。実はこのダイエットコースは、私が特別に研究開発したこれまでにない方法を実践して頂きますので、どうしても多くの方に試してその効果を実証したいのです。又、少々辛いこともありますので、出来れば紹介者の方と一緒に励まし合いながら実践して頂きたい、とこういうわけなのですが」

――え、そんな辛いことがあるの? 大丈夫かなあ……

「久美、一緒に頑張ろうね」
「え? う、うん、わかった……」

 ちょっと不安が頭をよぎりましたが、お姉ちゃんがもう1か月近く続けて、実際に7キロもやせたんです。仲の良いお姉ちゃんにそう言われたら、ウンと言うよりありませんでした。第一私の方から紹介してくれと頼んだわけですし。

「このコースは、隣の器具を用いたトレーニングとこの部屋でのボディケアが中心ですが、その他普段から私の指示に従って生活改善を行って頂きます。先程申し上げましたように、少々肉体的に辛いこともございますが、大丈夫でしょうか?」

 するとお姉ちゃんの方が答えてしまいました。

「先生、妹は私より体が丈夫だし、しっかりしているから大丈夫です。そうよね、久美?」

 うーん、お姉ちゃんの言い方は却って不安を煽るものです。でも昔から運動はまるでダメでおしとやか過ぎるお姉ちゃんが頑張れたんだから、私もきっと大丈夫だろうと思うよりありませんでした。実際お姉ちゃんより健康面では自信があります。

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