寝取られ男の復讐
二次元世界の調教師:作

■ 52

「お義兄様。私やっぱりお見合いは出来ません」
「どうして? 相手はフタバ産業の御曹司だぞ! こんな玉の輿をソデにして、わしの顔に泥を塗るつもりかっ!」

 フタバ産業はこの辺りでは名の通った地場の大企業である。俺は職すら失った自分と比べてあまりの社会的立場の違いに複雑な気持ちになった。

「お義兄様! 私信一さんが好きなんです! どうか彼と結婚を前提にお付き合いすることを許可して下さい!」

――愛華さんっ!

 俺が天にも昇るような気分で彼女の言葉を聞き届けた次の瞬間、再び理事長が凄い剣幕で怒り出した。

「許さんっ! 絶対に許さんぞ、愛華っ!」
「どうしてですか、あなた。好き合っている2人を別れさせるなど、かわいそうではありませんか」
「気でも違ったのか、沙希! こんな仕事もないボンクラに愛華を任せられるのか?」
「あなたが、クビになさったのではありませんか!」

 校長も精一杯援護射撃を試みてくれるが、続く理事長の言葉は俺の耳には実に痛かった。

「結局、わしにすがっとるだけではないか! コイツは、わしが拾ってやる前はまともに働いてもいなかったロクデナシだぞ」
「信一さんは、そんな無能な人じゃありません!」
「柔道なら誰にも負けない力を持っておられます!」

 女たちの弁護もやや苦しく、痛い所を突いてやったと得意になった理事長はかさに掛かって来る。

「お前らもそうだぞ! 誰のおかげで、こんな贅沢な暮らしが出来ておるのだ?」
「そ、それは……ああんっ!」
「それとこれとは話が違います……うふうんっ!」

――ゲーッ! こんな時に……

 愛華さんと校長が言葉に詰まったかと思うと、場違いな色っぽい声を発した。貫太がリモコンバイブを動かしたに違いない。一体、アイツはどちらの味方をしてるんだ? と一瞬思ったが、美人姉妹が股間を抑えてモジモジと始めた悩ましい姿に、俺は不覚にも股間に血が流れ込んでナニが一気に固くなるのを感じていた。ソファーに腰掛けた2人は、ハッキリと女の部分に両手をやると少しお尻を浮かせた腰を揉みながら顔を真っ赤にしているのだ。理事長の目には2人がトイレを我慢しているように映ったことだろう。果たしてあまりに刺激的なタイミングでの快感が我慢出来なくなった2人は逃げようとした。

「すみません、お義兄様。ちょっとトイレに……」
「あなた、申し訳ありません。私も……」

 狐に摘まれたようなポカンとした表情になった理事長の前で、2人の美女は立ち上がり部屋を出ようとする。ところが愛華さんも校長も、途中でウッとよろめき下腹部に手をやってしゃがみ込むと、動けなくなってしまったのだ。

――イッちまったんだな……

「沙希っ! ど、どうした……」
「愛華さん! 大丈夫ですか?」
「あ、あなた……大丈夫ですわ、急に立ちくらみが……」
「緊張し過ぎてたんです、きっと。でも、もう大丈夫……」

 愛華さんは俺の方を向くと、何が起きたのかわからず慌てて校長に駆け寄った理事長にはわからないように、もう! と頬を膨らませて拗ねるように言う。だが、彼女は全身を真っ赤に火照らせながら、怒った様子ではない。校長の方はわからないが、俺はどMに調教してやった欲求不満の女たちが決して怒ったりせず、このスリリングな状況で大満足のアクメを味わってくれたであろうと勝手に判断して、ヨロヨロと脚を引きずるようにして部屋を出て行く2人を見送った。

 後に残されたのは、小テーブルを挟みソファーに腰掛けて対面している大男2人である。俺はここで女性陣がいなくなったのは貫太の計算だったのかと思い、勇気を出して切り札を使うことにした。

「理事長先生、愛華さんから手を引け、と言うメールには従って下さったようですね」
「何!? 貴様、あのメールは……」
「思い出してもらえましたか? 実はあのメールを送ったのはこの私です。興信所に勤める知り合いに調べてもらったら、いろいろ面白い物が手に入りましてね。どんな写真があったか、出してみましょうか?」
「いや、待て!……女たちには見せないでくれ、頼む」
「では、急いで確認だけして下さい」

 やはり理事長は馬鹿ではない。頭の切れる狡猾な悪党だ。ついに絶対的優位に立った俺は、ホクホクしながら持参していた写真を数枚パラパラと見せる。理事長が力づくで強奪しようとしても、力勝負なら負けることはない。そして無駄なあがきはしない理事長はもう全部見ようとせず、妙に落ち着いた口調で言った。

「何が目的だ。言ってみろ」
「もちろん愛華さんとの交際を認めて頂くことですよ。それから出来ればもう1回学校に雇ってもらいたいですね」
「それだけではあるまい。一体いくら欲しいんだ?」

 拍子抜けするくらいアッサリ俺の要求を飲んだ理事長は、早手回しにそう切り出した。

――女たちが戻って来るまでに何とか話を丸めこもうとしているな……悪いが、そんなに簡単に俺の復讐は終わりやしないんだぜ……

 理事長は体力があるだけで頭のにぶい男だと思ってるに違いない俺を見くびり、ある程度の金で解決を図ろうとしているのだろう。ヤツが大切にしている妻の木村校長には、絶対浮気写真を見られたくないらしい。実はすでに校長は全部知っていることをヤツは知らない。俺は理事長の愚かさを心の中で嘲りながら、本心を隠して応対した。女たちが帰ってからが本当の勝負だ。

「それだけですよ、理事長先生。私はあなたのようなワルではありません」

 チッと舌打ちして嫌な表情を見せた理事長に、俺はささやかな達成感を味わったが、その時愛華さんと木村校長が連れ立って帰って来た。

――さあ、お楽しみはこれからだぞ……

 理事長に対する俺の復讐はいよいよクライマックスを迎えていた。

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