支配の小屋
しろくま:作

■ 16

 翌日、学校で、和輝は美紀に、写真とビデオのデータが入ったCDを渡した。
美紀「え・・・これって・・・」
和輝「これでお前は自由だ。警察に言いたきゃ言っても構わないぞ?」
美紀「別に、あたしは・・・」
和輝「まぁ、警察行っても証拠不十分で追い返されるだけだけどな!」
美紀「はぁ?」
 和輝の言葉の意味が美紀には分からない。
和輝「何も写ってないんだよ・・・昨日まで普通だったのに・・・」
和輝「そればかりか、あの《小屋》・・・影も形もないんだよ・・・論より証拠! 帰り一緒に見に行こう。」
 放課後、和輝と美紀はあの《小屋》のあった場所に向かった。しかしそこは、本当にただの空き地になっていた。
美紀「な、なんで? だって・・・」
和輝「他の奴等に聞いてみたんだが、昔からあそこに《小屋》なんてものはないって、皆同じこと言ってたぜ?」
実際、あの《小屋》のことを覚えていたのは4人だけ(裕之には確認はとっていないが)しかいなかった。周りの記憶が消されているのか。自分たちが幻覚を見ていただけなのだろうか。いずれにせよ、あの《小屋》はもう存在していない。
美紀「そんなことって・・・」
和輝「いや・・・もしかしたら、見える奴には見えるのかもな。」
美紀「?」
和輝「いや、そんな気がしただけだよ・・・」
 和輝はなんとなくだが理解した。あの《小屋》には何か不思議な力がある。
 それは、あの中では《人を操ることができる》・・・そんなチンケなものではない。恐らくもっと大きくて強力な力。それを魔力とでも呼べばいいのであろうか・・・
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 2年後、和輝に恋人が出来た。見た目はさほど美人ではないがいい子だ。
 美紀にも恋人はいる。美形で、天才、さらに金持ち。非の打ち所がない。
 由香は受験勉強でそれどころではない。由香も、もう立ち直り医者を目指して勉強している。膣の怪我も治ってはいるが、誰ともエッチしていない様子。
 裕之は・・・奴とはまったく会っていない、あれ以来学校にも来ていない。どこかに引っ越してしまったのようだ。
 和輝と美紀は今でも定期的に会ってはSEXをしている。
周りからみれば不純だと思われるかもしれないが、二人にはそんな気持ちはまったくない。
 普段はお互い、自分の恋人を愛している。しかし、会ったその時だけ。期間限定の恋人同士とでも呼べばよいのか。
 この不思議な関係が、2年前からずっと今も続いている・・・
一回限りのはずだった関係だ・・・
二人はたまに、あの時のことを思い出すようだ。いや、忘れられないだけであろうか。
美紀「私たちが始めてエッチした時ってどんなだったっけ?」
和輝「・・・・・もう忘れてくれくれよ、いい加減・・・」
美紀「だ〜め!・・・ほら、早く始めよ?」
 この瞬間だけは相思相愛、行為が終わったらまた元の生活に戻る。それを繰り返していた。
 もちろん、お互いの恋人には内緒である。二人だけの秘密の関係である。
 美紀は和輝と、和輝は美紀とSEXする時が一番気持ちいい、一番感じることが出来る。
 しかし、普通の不倫とは違っていた。言葉には出来ないが、何か違う。決して《愛人》という関係ではない。
 単純に身体が目当てという訳ではないが、二人は恋人ではない。そんな不思議な関係。
 不思議な体験をした者にのみ、理解することが出来る関係・・・
 和輝は時々、ふと考えることがある。なぜあの《小屋》が自分の前から姿を消したのか。
和輝(いや、あんな物必要がないか・・・嫌がる相手を無理矢理《支配》しても空しいだけだしな)
 和輝が必要としなくなったからか、それとも《小屋》の方が・・・・・
 和輝はあの《小屋》のことを何一つ知らない。誰が作ったのか、いつ、何のために。あの《小屋》には本当に、何らかの意志があったのか。
 ・・・わからない。調べようとしたこともあったが、何故か途中で止めてしまう。止めるように思わされてしまう。何故か・・・
 結局あの《小屋》は・・・・・・・・いや、止めよう。

 恐らく、今も、人を無理矢理《支配》したいと思う《誰か》があの《小屋》を使用していることだろう。
 本当は、そんな自分自身こそが、あの《小屋》に支配されているとも知らずに・・・

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