蛸壷 〜海岸の美女〜
田蛇bTack:作

■ 4

…ゴボリ。

その時ペニスに違和感を感じ、女と自分の境を見つけると、信じられないものがそこにあった。


女の愛液が……黒い……。

「あそびは終わりよ」

急に冷めた声がした。それは女のものだった。
美しい赤毛からは、何か実のようなものが無数についていた。

その実が何なのか、俺にはすぐにわかった。


「ずっと待っていたわ。8年間と88日。今日は貴方をここに呼び寄せたの。
それくらいのことは、私には簡単にできるわ。だって…」

女は自分の足元を見た。
女の足元は、いつの間にか透けてなくなっていた。

そうだ、やっぱりこいつは…。



信じたくなかった。
こいつは、俺の初めてのセックスの相手。
セージと俺と他の悪ガキどもが…

8年前に集団でコイツを犯ったんだ。


「…ということは…セージは…?」

震える声で俺が女に尋ねると、女はにっこりと笑って茂みの外を指さした。


「せ、セージ!!!!!」

俺はセージにかけよった。
体はあたたかく、まだ死んではいないようだが、俺がいくら体をさすっても、目をさましてくれはしなさそうだった。

「おい、せーじ、セージ!! セージ!!! セー…」

何度もセージの名を呼ぶうち、俺はとんでもないことに気づいてしまった。

セージの性器が…ない!!!!

裸で横たわるセージの股間に、性器はなかった。
まるで女のそれのようになめらかになってしまったセージの股間。


ということは、次は俺が…!?

恐怖に身震いすると、女は勝ち誇ったように笑いだした。


「もう遅いわよ。黒い愛液はペニスを溶かすんだから。あはははは!」

そういえばさっきから、興奮とはまた違った熱さをペニスに感じていたのだ。おそるおそる自分のブツに手をやると、それが普段より格段に小さくなっていたのがわかった。



「あああああああああああああぁあああ!!!」

暗い海岸に響いたのは、タクヤの叫び声。
だが、それもまたすぐに潮風にかき消された。

明け方、海辺にあったのは、ひからびた蛸の死骸と、それを首にまとった一個の死体。

蛸の死骸は、心なしか泣いているように見えた。

おわり


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