内側の世界
天乃大智:作

■ 第1章 想念3

今日も、ふわふわしてたら、
急に、目の前に、
天使が、現れた―
天使、かな・・・?
天使だと、思う。
人間の姿をしていて、翼がある―
大人の女の人、天女の羽衣を着ている。
腰のところを帯で結んでいる。女の人の胸と臀部が強調され、女の人の見事なプロポーションを引き立てていた。
なめらかそうな白い肌、赤い唇、憂いを含んだ瞳・・・
絶世の美女。
非の打ち所のない美人であった。
天使が、僕のほうを向いて、驚いた顔をした。
その表情が止まり、綺麗な瞳を大きくした。黄金の瞳であった。
そして、目の見えない人が、空中をまさぐるように、両手を差し出した。
目の焦点が、合っていない。
僕のことが、見えないらしい―
でも、僕に気付いている。
どんどん、僕に近付いて来た。
良く見ると、その天使の翼は、天使のそれではない。
黒い、まるで蝙蝠の翼のようであった。
栗色のさらさらした髪の中に、異物も見えた。
角?
それじゃあ、天使じゃない。
悪魔だ。
僕は、急に怖くなった。
逃げた。
僕は、雲の中に逃げ込んだ。
「だめ、離れないで・・・、お願い―」
悪魔は、追ってくる。
僕は、逃げた。
僕は、雷雲に逃げ込んだ。
真っ黒い雲の中に、稲妻が走る。
轟音の中に、僕は、身を潜めた。
長い時間が経った―
僕は、悪魔を振り払った。
その時、光が射してきた。
僕は、見上げた。
雷雲が大きく裂け、真ん中から広がっていく様子を―
今まで、雷雲が立ち込めていたところに、青い天空が広がった。
ちょうど、雲の上に出てしまった様な感じであった。
その雲の中から、大木が現れた。
落葉樹林らしい。葉はない。
東京タワー程の大きさであった。
僕は、圧倒された。
続いて、頭部。
それは、大木ではなかった。巨大な頭部から生えた角であった。
カモシカのような角であった。
その頭部には、長い銀髪が、風に靡いている。
そして、顔。
長い眉毛。
髪の毛と同じ銀色の長い髭。
その巨大な顔を支える為の、巨大な首。
その首の根元から、肩の筋肉が盛り上がっている。
悪魔であった―
角が三本あった―
悪魔の上半身が、上空を覆い尽くす。
僕は、度肝を抜かれ、動けなかった。
「やっと、見付けた―」
悪魔が、悪魔の声で呟く。
開いた悪魔の口から、巨大な牙が見えた。獅子口であった。
飛行機の音が、突然聞こえた。
その時、悪魔の後方から、ジャンボジェット機が飛んできた。
そのシルエットが、巨大な悪魔を透かして見えた。

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