優等生の秘密
アサト:作

■ 27

 金曜日、いつものようにテストが始まった。いつもと変わらない、この一週間で習った範囲に重点を置いている実力テストだ。いつもと違う事があるとすれば、貢太がちゃんと問題と向き合って、すらすらと問題を解いている事だ。
(そろそろ、30分か。あいつら、もう解き終わってんだろうな……)
 貢太は京介と聡子をちらりと見やった。二人とも、貢太が予想したとおり、もう解き終わっているようで、その手は止まっている。だが、教師の30分経過を告げる声がしても、立ち上がったのは京介だけで、聡子は立ち上がらない。
(……なんで??)
 思わず、眉をひそめてしまう。数問だけ残っていた問題を解いて、貢太は立ち上がった。教室を出る時に、聡子の様子をうかがうと、熱でもあるのだろうか、頬が少し赤く、その額には僅かに汗が浮いていた。
(……具合悪けりゃ、休めよ……)
 そうすれば、不戦勝……一瞬よぎった自身の卑しさに、貢太は嫌悪感を覚えた。教室を出ると、廊下で京介が次の時間の教科を予習していた。
「速かったな。」
「……お前らほどじゃない。辻野だって……もう、解き終わってるだろ?」
 貢太の言葉に、京介は目を丸くした。そして、面白そうに微笑んだ。
「なるほど、ちゃんと見ていたわけか。」
「一応、当面の目標だからな。」
 貢太が言うと、京介はその笑顔を少し不機嫌そうに歪ませた。気に食わない、そういいたい気持ちを全く隠していない表情だった。貢太は京介から少し距離を取って、教科書を開いた。
 次の時間も、その次の時間も、聡子は席を立たなかった。辛いのか、少し息が上がって来ている。教師が数人心配して声を掛けたが、聡子は大丈夫の一点張りでテストを受け続けていた。

 その日の放課後、HRで早速テストの結果が発表された。クラスの上位10名が、10位から順に発表される。
「4位、加藤。」
「な……っ!?」
 いつも、3位で不動の地位を築いていた加藤は、言葉を失ってしまった。信じられない、そういったどよめきが、教室のあちこちから聞こえてくる。
「ちょっ……加藤君抜いたのって誰……?」
「わかんないけど……」
「皆、静かにするんだ。」
 梶原の声に、どよめきがぴたりと止まった。
「3位、仲原。良く頑張ったな。」
「まじで!?」
「ちょっと、アイツ、バカなんじゃなかったの!?」
 遠慮の無い声が、教室のあちこちから上がった。だが、貢太は具合の悪そうだった聡子より成績が悪いと言う事実に愕然としていた。
「2位、真田。1位、辻野。」
 再びどよめきが起こった。具合が悪そうだった聡子は、見事1位を勝ち取っていたのだ。貢太は、二人の真の実力を垣間見た気がして、恐怖に似た感情と、絶対に勝てないという感情を同時に抱いていた。
「来週も金曜日に定期テストを行う。各自、自分のベストを尽くすように。」
 梶原はそう言って、教室を後にした。それが合図であったかのように、教室から生徒が次々と出て行く。貢太の事を見下していた連中は、口々にもっと勉強しようと言っていた。
「ていうか、アイツが3位って、アタシ達の誰かが最下位って事!?」
「ちょ……冗談じゃないわよ!!」
「親に怒られる……」
 ざまあみろ、心の中でそう呟いて、貢太も荷物をまとめた。
「仲原。」
「分かってるよ。教室に残れ、だろう?」
 京介に話しかけられるのももう慣れてしまった。貢太は諦めたようにため息をついて、椅子に腰掛けた。相変わらず、聡子は椅子に座ったまま、具合が悪そうだ。京介はドアをしっかりと閉めて、鍵までかけた。
「さて、これで邪魔者は入らないな。」
 京介はそう言うと、聡子を立ち上がらせた。そして、聡子の下着をおもむろに降ろすと、両脚の間に手を滑り込ませた。
「んっ……あぁっ!!」
 聡子は悲鳴を上げて、もう立っていられないというかのように京介に寄りかかった。力なく震える身体を京介が支え、聡子のスカートの中から手を抜いた。その手には、微弱なモーター音を上げながら振動するローターが握られていた。それは、聡子の蜜で濡れそぼっており、聡子の太ももにも、蜜が伝っていた。
「よく、朝から耐えられたな。」
 言いながら、京介は聡子の蜜壺に遠慮なく指を突っ込んで、中をぐちゃぐちゃとかき混ぜる。貢太の方からはスカートが邪魔で見えないが、卑猥な音はしっかりと耳に届く。
「んぅっ……あぁあっ! あんっ!!」
 聡子は京介の肩につかまり、その肩に指を食い込ませるぐらいに力を込め、波の様に次から次へと押し寄せてくる快感に必死で耐えていた。京介は聡子の手を近くの机につかせると、スカートを捲り上げた。形のいい、白い尻が露わになる。京介はそのすべすべとした感触を楽しむかのようにそっと撫でた。
「……聡子、今日は帰るか。」
「え……っ? してくれないの……?」
 聡子は驚いたように京介の顔をまじまじと見つめた。京介は悪戯っぽく微笑んで、捲り上げたスカートを調えると、聡子を抱きしめた。
「今日ぐらい焦らした日は、ギャラリーがいるところじゃ出来ないぐらい激しくしてやりたいんだ。」
「もう……」
 聡子は半ば呆れたように微笑んで、京介に口付けをした。聡子は唇を触れ合わせるだけの軽いキスをしようとしていたが、すぐに唇を離そうとした聡子の頭をかき抱いて、京介はその唇を強く吸い上げた。歯の間から舌を割りいれて、濡れた音がするほど激しく舌を絡ませあった。
「んっ……ぁん……」
 聡子は甘い声を上げながら、京介にすがりつく。やはりその目には、貢太は映っていない。貢太はそんな聡子の姿に欲情してしまう自分自身が悔しかった。
「さて、聡子……帰ろうか。」
 言いながら、京介は聡子に再びローターをねじ込むと、ふらつく聡子を支えるように肩を抱き、貢太の方を見ようともせずに教室を後にした。
 二人の眼中に、まだ自分はいない。その事実をまざまざと突きつけられたようで、貢太はその場に呆然と立ち尽くしていた……。

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