優等生の秘密
アサト:作

■ 50

 覆いかぶさる重さがふいになくなった。同時に、少しだけ柔らかくなったものが、濡れた音を立てながら引き抜かれた。直後、生暖かい精液が流れ出てくる。
「京介……本当に、どうしちゃったの……?」
 聡子の問いに、京介は無言のままだ。思いつめたような眼差しが、聡子をじっと見つめているだけだ。聡子は小さくため息をついて、ゆっくりと立ち上がった。中から溢れ出す白濁液が、脚を伝って床に点々と痕をつけていく。
「……中、洗ってくるわ。」
 聡子はそう言って、京介に背を向けた。だが、京介の手が聡子の艶やかな髪を乱暴に掴み、自分の方へ引き寄せた。
「痛……っ! 京介!? やめて!!」
 聡子の声に、やはり京介は無反応だった。京介の手を振り払おうとする聡子を壁に押さえつけ、その背中に自分の身体を密着させる。そして、また硬さを取り戻したものを聡子にあてがう。
「京介、やめて!」
「うるさい。」
 耳元で低く囁かれ、聡子は身体を強張らせた。今まで見た事がないほど、不機嫌だ。聡子は考えうる限りの、京介の不機嫌の原因を必死で考えていた。
「ねぇ……私が、仲原君に負けたから?」
 答えは無かった。代わりに、亀頭がゆっくりと侵入してくる。聡子はその圧迫感に、声を上げてしまいそうになるのを堪えながら、京介の表情をうかがおうとした。だが、壁に頭を押さえつけられ、それすら叶わない。
「っ……京介……お願い、もうやめて……」
「……だったら、今日みたいなことが二度とないようにするんだな。」
 言いながら、京介は聡子を容赦なく突き上げる。聡子のつま先が床から僅かに浮き上がるほどの勢いだ。
「ひあぁっ!! あぁっ!! あぁぁ……っ!!!」
 自分の体重で、さらに奥まで突き刺さる。その度に脳髄が麻痺してしまうような感覚が聡子を襲った。京介はそれでも全く手を緩めることなく聡子を攻め続けた。
「お、お願い……京介、あ、あぁあっ……!!」
「ん? もっと欲しいのか? この淫乱……!」
 聡子が傷つくと知っていて、わざとひどい言葉を投げかける。聡子は涙を流し、それに耐えていた。喘ぎ続けていた所為で、口の端からは涎がだらしなく垂れている。
「あ、あ……はぅっ……ひぃいんっ!!!」
 突然、肉芽を抓まれ、聡子は背中を弓なりに反らせた。京介は緩やかに腰を振っていたが、突然ストロークを強めた。
「いっ……ひっ……だ、だめぇえっ!!」
 潮を吹き、全身を痙攣させながら、聡子は絶頂に達した。それでも京介の怒張は衰えを見せず、意識を手放しかけている聡子を容赦なく攻め立てていた。



「それから先は、よく覚えてないの。気がついたら、翌朝だったわ。」
 聡子はそう言って小さくため息をついた。それだけやっておいて、妊娠しない方がおかしいと言いたげだ。
「俺が、成績上回ったってだけで、そんな目に……?」
「もちろん、そんなバカな理由じゃなかったわ。」
 聡子の目は、以前のような冷たさを帯びた目に変わっていた。話を始める前の穏やかな目からは想像もできないような変貌ぶりだった。
「じゃあ、どんな……?」
「京介は、全てを手に入れようとしているだけよ。自分の思い通りに、ね……」
「どういうことだ……?」
 話が読めない、と言いたげな貢太に、聡子は優しく、だが、哀しげな表情で微笑んだ。
「私を妊娠させたのも、貴方達に私を襲わせたのも、退学させたのも、全部、京介の計画の内なのよ。」
 聡子はそこまで言って、大きなため息を一つついた。
「私を妊娠させて、京介と私の結婚の口実を作って、親同士の再婚を阻止。」
「そうか、俺達に辻野を襲わせたのは、自分が妊娠させたことを隠すため……」
「その通りよ。」
 聡子は、説明する前に貢太が理解した事が満足だったのか、その顔に笑みを浮かべていた。だが、その目は笑っていなかった。
「でもね、その事実に最近まで気がつかなかったの。貴方達に襲われたのは、偶然だと思っていたから。」
「それは、どういう……」
「説明すると長くなるわ。座って。」
 聡子は、自分が座っているソファの空いたスペースをぽんと叩き、貢太に座るように促した。貢太はそれに従い、聡子の隣に腰掛けた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊