2001.6.15.

綾香の恥辱アルバイト
01
木暮香瑠



■ 誤解を生んだアルバイト初日1

綾香

 綾香は、夏休みの間、食品卸をしている配送センターでアルバイトをすることが決まっていた。

 高校3年生の夏休み、受験の夏でもあるけれど、アルバイトの夏でもある。大学の付属高校にかよっている綾香は、成績優秀でエスカレーター式に系列大学に上がれることがほぼ決まってる。来年の3月には、クラスの友人6人で卒業旅行に行くことになっている。その旅費をアルバイトをして都合することにしていた。他の友人達は、みんな、親におねだりをすると言っている。受験もあり、アルバイトどころではないのだ。進学できることがほぼ決まっている綾香の心配は、親に進学のお金を使わせることだけだった。綾香は、そんなこともあり、アルバイトをすることを決めた。友達たちは、皆、驚いた。普段はおとなしく幼く見え、アルバイトなどするタイプには見えない。小顔の、笑顔がかわいい、良い所のお嬢さんって感じだ。中学生に間違われることもしばしばある。

 アルバイト先の配送センターでは、パソコンで配送管理、経理等が行われる。綾香は、パソコンの操作が出来るということで、高校生のアルバイトとしては破格の時給で使ってもらえることになっている。綾香の家からは、少し遠いが、そこがアルバイトを決める決め手になった。

 今日は、アルバイトの初日ということもあり、午前10時に社長の部屋に出社である。社長の部屋のドアをノックすると、中から
「どうぞ」
と、社長の声がした。中に入ると、社長は暇そうに新聞を読んでいる。

「ああ、今日からアルバイトをしてくれる綾香君だね。よろしく頼むよ」
 そういいながら、いやらしそうな目を、綾香の全身を舐めるように下から上の這わした。綾香は、この社長がどうも苦手だ。禿げた頭にいつも汗をかいている。目つきがいやらしく、人をしたから上に舐めるように見るのも嫌であった。アルバイト採用の面接のときにも気になったが、でも、社長と仕事をするわけでもないし、高校生のアルバイトとしては割のいいアルバイトなのだ。

 社長が事務所に電話をする。
「織田君と小林さんに社長室に来るようにいってくれ」
そういう間も、綾香の身体から視線をはずさない。綾香は、ミニスカートをはいてきた事を後悔した。高校生らしいデニムのみにスカートから伸びる足に視線を這わしている。カモシカのような足とは、綾香の足のことを言うのではないかというほど、きれいな足をしている。足首が細く、ふくろはぎにかけてのラインがとてもきれいなのだ。正座などしたことがない綺麗な膝の上には、太からず細からずのバランスを保っている太もももがある。筋肉質ではなく、かといって油が乗っているわけでもなく、絶妙のバランスの女子高生特有の若々しいきれいな太ももなのだ。なんと言っても色白なのが、社長の目を釘付けにしてしまった。髪をポニーテールにしているため見えるうなじに、社長の目線が移った。色の白さがうなじをいっそう細く見せている。その上に小さい顔が乗っている。濡れたような瞳をした目が大きく、前髪が眉毛にかかるところで、綺麗に切りそろえられてる。そのせいで、愛らしく幼く見える。

 しばらくすると、織田と小林が社長室にきた。
 織田裕紀は、24歳の男性。入社2年目の平社員だが、パソコンから経理まで精通していて社長のお気に入りで、この配送センターの全体の管理を任されている。背が高く、好感の持てるタイプだ。
 小林恵美子は26歳の女子社員で経理を担当している。金髪に染めた髪と、アイラインの引かれた目が、大人の女性を感じさせる。

「この娘が、先日紹介したアルバイトの山川君だ。よろしく頼むよ」
 社長は綾香を、そう二人に紹介した。
「小林君は経理、配送を担当してるから、君のあるバイト中のことは彼女に任せるから……。
 織田君は、ここのことは何でもわかるから、判らないところは聞きなさい」
 紹介が終わり、綾香は、「アルバイト:山川」と書かれた名札を受け取り、下の事務所に下りていった。他の社員全員が集まり、紹介される。若い男子社員の間から、
「かわいいじゃん。ちょっと幼い感じだけど……」
「おおっ、いいせんいってるね。スタイル良いぜ。あし、なげーなー」
 若い社員たちは、綾香の出現に色めきだした。

 アルバイトは、初日から忙しかった。小林恵美子の指示で、伝票の整理から、ダンボールに配送票を張る仕事まで、月末でもあり、また、お中元のシーズンの真っ最中で、大量の作業があった。アルバイトの初日ということで緊張しているため、実作業以上に忙しく感じたのかも知れない。訳がわからないまま恵美子の指示のまま働いた。

「山川君、少し休憩したら」
 パソコンに向かって、伝票を打ち込んでいる綾香に、織田裕紀が、自販機のアイスコーヒーのカップを持ってきた。
「3時だよ。みんな休憩してるから、君も少し休みなさい」
 そういって、アイスコーヒーを綾香に手渡した。時計を見ると、3時を5分程周っている。あたりを見渡すと、みんなジュースを飲んでいたり、雑談に花を咲かせている。そんなことにも気付かないほど、緊張の中で作業をしていた。始めてあった時から、好感を持った織田が、わざわざコーヒーを持ってきてくれたことが嬉しく、また、時間も気付かなかったことが恥ずかしく、頬を赤く染め、
「ありがとうございます」
と、下を向いたまま答えた。
 織田は、綾香の緊張感を察したのだろう、話かけてきた。
「パソコンの入力も慣れたもんだね。パソコンを持ってるの?」
「はい、インターネットをしたり、メールをするくらいなんですけど……」
 コーヒーを飲みながら、しばらくの間、パソコンの話やインターネットの話に付き合ってくれた。
「ところで、君の名前って、母音がすべて「A」なんだね。YAMAKAWA AYAKAって」
「そうなんです。変わってるでしょ。ウフフ…」
 綾香は、話が終わる頃には、笑顔が出るほどに緊張が解けた。

 休憩が終わり、織田は自分の席に帰っていった。初めて会っってすぐに好感を持った織田さんが、休憩に付き合ってくれた。緊張していたわたしに気付いてくれ、わざわざ話し掛けてくれたのだ。それがとても嬉しかった。織田が戻っていっても、綾香の頬には、ほのかな赤みが刺していた。その時、綾香は背中に刺すような視線を感じた。綾香がその方向に振り返ると、そこには小林恵美子がパソコンに向かっている。少し、眉毛の端が上がっていた。

 初日のアルバイトも終わり、帰るとき、一番若い女子社員が綾香に話し掛けてきた。
「山川さん、気をつけたほうが良いわよ」
「えっ、何をですか?」
 綾香は何のことかわからない。
「織田さんと親しく話をしない方がいいわよ。恵美子さんに睨まれるわよ。
 彼女、織田さんのこと、アタックしてるんだから。恨まれるわよ。  織田さんは、恵美子さんにはぜんぜん興味ないみたいだけど」
「わたし、そんなんじゃないです。織田さんのこと、なんとも思ってません」
 綾香は、嘘をつきてしまって、少し気が沈む。ほのかに恋心が芽生えかけていた。
「ならいいけど。でも、誤解されて虐められるのも辛いでしょ?
 彼女、結構、陰険よ。昔は、結構ならしたヤンキーだったそうよ」
 そういって、彼女は帰っていった。

 なぜか、綾香の目には涙が浮かんできた。自分では気付かなかったが、織田に一目惚れをしていたみたいだ。他人と争ってまで恋人を奪い取ることが出来ない自分を知っているだけに、何も出来ない自分が悲しかった。



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