2009.03.26.

『娼品』梓
01
matsu



■ 1

私は今、とあるオフィスの応接間にいる。この会社の説明と、ある契約を結ぶためだ。

「それでは宮本梓さん、私があなたの担当となる藤田と申します。さっそくですが、説明に入らせていただきますね」
「はい」
「私どもの会社は性的な仕事をする『娼品』を開発しております。あなたはその『娼品』となるべく、これから一ヶ月間、開発担当の人間によって開発されていただきます。そしてわが社の『娼品』として適格であると私どもが判断した場合にのみ、さらに一年間の契約を結んでわが社の『娼品』となっていただきます。と、これがわが社についての簡単な説明ですが、何か疑問点はありますか?」
「いいえ、ありません」

 こんないかがわしいところになんか、ふつうは絶対に来ない。それなのになぜ私がこんなところにいるのかと言うと、簡単に言ってしまえば身売りだ。私の親が起こした企業が倒産しかかっていた折に、この会社の人間が来てこう言ったのだ。「もしお嬢さんがわが社の『娼品』として開発されるのであれば、わが社からあなたの会社へ援助をして差し上げましょう。さらに『娼品』として働いていくならば、稼いだお金のうちの何割かをさらに援助に上乗せしましょう」と。当然親は反対したが、結局は私の説得に負けて認めてくれた。

「それでは、契約に入らせてもらいます。詳しいことは契約書に書いてありますが、簡単にご説明しますね。あなたがこの契約を結んだ場合、その瞬間からあなたは人間として扱われなくなります。つまりあなたが有するあらゆる人権を放棄して、完全に『生きている道具』となっていただきます。といっても、当然わが社の『娼品』となりうるものですから、身体的に欠損させるようなことはありませんので安心してください。」

私は説明を聞きながら契約書を読んでいた。そこに書いてある内容を簡単に説明するとこうだ。

・完全に「モノ」として扱われる
・一ヶ月間外部との連絡を取ることも、外出することも許されない
・もし健康に異常をきたした場合は療養のために開発は中断されるが、中断した日数分開発期間が延長される
・開発期間終了時に適格と見なされれば『娼品』として契約できるが、不適格である場合はそこで開発をやめて日常に戻るか、開発を継続するかを選択できる。継続した場合は親の会社への援助も継続されるが、やめた場合にはそれまでに援助した分と開発にかかった費用などを請求される

といったところだろうか。私は契約書を読み終えると、渡されたボールペンでサインして捺印した。するとさらにもう一枚書類を渡された。

「それは宣誓書です。これからビデオを撮りますので、その宣誓書の全文を読み上げてサインと捺印をしてください。それをもって正式に契約となります」

 私は毅然とした態度で、男が構えたカメラに向かって誓約書を読み上げた。

「宣誓書。私、宮本梓は自身が有するあらゆる権利を放棄し、貴社の『娼品』として一ヶ月間開発されることを宣誓し、この宣誓書にサインします」

 読み終えた私は、契約書のときと同じようにサインをした。そしてその宣誓書をカメラに向けて開示した。

「結構です。では、これからあなたは人間ではなくなります。しかし、まだ『娼品』でもありません。あなたは現在『娼品』未満ですので、余計な飾りはまだ不要です。ここで身につけているものを全て脱いでください」
「はい」

当然恥ずかしくないわけがないが、私は恥ずかしがるそぶりも見せずに、身につけているものを全て脱いだ。今まで誰にも見せたことのない裸身が白日の下にさらされた。

「少しは恥ずかしがるかと思いましたが、大変結構です。それではついてきてください。これからあなたの詳細なデータを計測します」

 そうして私は医務室に連れて行かれることになった。行く途中で何人か会社の人に会うことがあったが、私は自分の体を隠すことなく堂々と挨拶をした。会社の人は口々に「もう計測は終わったのか」と聞いてきたが、藤田さんがまだだと言うと少しがっかりした様子で去って行った。

医務室に入ると、すでに様々な道具が用意されていた。

「それでは私が計測しますので、藤田さん、記録をお願いします。まず身長と体重から……」

 そうして一時間後、私に関するあらゆるデータが計測された。

「では、データを確認しますね。身長161cm、体重50.2kg、トップ87cm、アンダー65cm、ウェスト54cm、ヒップ86cm。次に乳首直径0.6mm、勃起時1.2cm、乳輪直径2.3cm。
クリトリス直径0.8cm、勃起時1.8cm。膣の奥行8.3cm、膣口径4.3cm、膣圧平常値21mmHg、最高値43mmHg、よって膣圧22mmHg。肛門直径1.3cm、肛門の皺10〜12本、肛門内圧69.27mmHg。オナニー経験あり、男性経験は六回ほどでフェラチオの経験はあるが、アナルセックスやSMなどの経験はなし。主要な性感帯の感度はいたって普通。健康に関しては身体的にも精神的にも問題なし。こんなところですか。まあ、割と平均的ですね」
「……」

 私はさすがに恥ずかしくなって、顔を赤面させて俯いた。現時点での私の詳細なデータを知るためとはいえ、肛門の皺まで数えられるなんて……。

「さて、計測も終わりましたし、そろそろあなたが一か月を過ごす部屋に行きましょうか」
「……はい」

 私は気を取り直して藤田さんの後をついて行った。途中で一人の社員に会った。その社員は藤田さんに「もう計測は終わったのか」と聞き、藤田さんも終わったと答えた。この会話に何の意味があるのかと考えていると、突然その社員が私の胸を鷲掴みにしてきた。私は突然のことに驚いて短い悲鳴をあげ、咄嗟にその手を外そうと抵抗しようとしてしまったが

「何を抵抗しようとしているんですか?」

 という藤田さんの一言で、私は自分の立場を思い出し、抵抗しようとした手を素直に下ろした。

「それでいいんです。あなたはもうわが社の『モノ』なのですから、ただの『モノ』が人間に反抗していいはずがないでしょう。計測前にそうされなかったのは、正確なデータがとりにくくなるという理由だからですよ」

 そう、私はただの「モノ」なのだ。私は自分の立場を否応なく思い知らされ、ただされるがままに社員の猥褻行為に身を委ねていた。

「あっ、んっ……はあっ、んっ……」
「なかなか大きいな。ちょっとデータみせてくれるか? ……ふむ、もう少しでEカップか」

先ほど計測したデータを見ながら、社員の男は私の胸を揉みしだき、乳首を指でこねくり回した。そうしてしばらく私の胸を弄んだあと、股間のほうに手を伸ばし、オマ○コを触ったり、クリトリスを摘みあげたりしてきた。

「あっ……! はあっ、くぅ……」
「感度もそれなりにいいな。まぁ、さっき計測したばかりだから、すぐに濡れるのも当然か。だがちょっとやりづらいから、もう少し脚を開いてくれないか?」

 私はその言葉に黙って従い、脚を肩幅に開いた。すると男は無遠慮に、私のオマ○コを二本の指で激しくほじくった。私はいきなりのことに驚いて、思わず声をあげてしまった。

「ああっ! はっ、あっ、あんっ!」
「おお、中はトロトロに熱くて、しかもきゅうきゅうと締め付けてきている。なかなかいい反応だな」

 男はひとしきりオマ○コを楽しむと、今度はそのまま私の肛門に指を挿れてきた。指で腸壁をすりすりと擦りながら、男は満足そうに言った。

「ああ……肛門の締め付けも悪くない。……まぁ、この様子からすると、あまり慣れてはいないようだが」
「あっ……くぅ、ふぁ……」
「データを見る限りは総じて平均的だが、素材としては悪くないみたいだな。ちゃんとした『娼品』になるかはこいつしだいだがな」

 そう言うと男は肛門から指を抜いて、私の体から離れた。そのままどこかへ歩き去っていく男の後ろ姿を見送りつつ、私は乱れた呼吸を整えていた。荒い呼吸をつづける私に、藤田さんはこう言った。

「これがわが社の『モノ』になるということです。自分の立場が分かりましたか?」
「はい……」
「それでは早く部屋へ行きましょう。ぐずぐずしていたら、また今のように弄ばれますよ」

私は黙って立ち上がり、藤田さんの後について地下に降りた。部屋――「開発室」は地下にあるらしく、私が使う「第十六開発室」のほかにも結構な数の部屋があるみたいだ。おそらくほかの部屋でも開発が行われているのだろうが、完全防音のために何も聞こえないようになっている。私は藤田さんに導かれるがまま部屋に入った。

「ここが今日から一ヶ月間あなたが過ごす部屋です」
「うわぁ……」

 私は部屋に入るなり思わず声を上げた。部屋の中にはベッドや三角木馬、拘束台、天井にはなぜか滑車も取り付けられている。透明な棚の中には大小様々なバイブやディルドー、何に使うのか分からないものまでしまってある。

「こちらがトイレとバスルームです」

 そう言われて目を向けると、そこには全面ガラス張りのトイレとお風呂があった。トイレは和式の水洗便所みたいだが金隠しがなく、さらには前後左右にカメラが仕掛けられている。それはお風呂も同じだった。聞くところによると、お風呂のガラスは湯気で曇らない特殊なガラスでできていて、しかもお風呂の使用中は換気扇が回るため、極力湯気で体が隠れないようになっているらしい。

「開発中はこうしてあらゆる場面のあなたを撮影しますが、これはあなたの監視と健康状態の把握のためのものでもあります。この映像が一般社会に出まわることはありませんので安心してください。ここで撮影された映像は、あなたが『娼品』となった場合にメイキング映像として保存され、顧客の方へのプロモーションビデオとして利用されるだけですし、もしあなたが『娼品』にならずに開発を断念した場合には即刻処分されますから」

 私は少しだけほっとして、改めて室内を見回した。すると机の上に電話を見つけた。

「あの……外部との連絡は禁止だと言っていたのに、なぜ電話があるんですか?」
「ああ……それは内線電話ですよ。もし何かあった際にそれを掛けて貰えれば、私のところに直でつながりますので」
「分かりました。……それと、キッチンとかがないみたいですが、食事はどうするんですか?」
「食事に関してはこちらが用意します。栄養とカロリーをよく考えてシェフが作りますので、味はもちろん太る心配もありませんよ。他に質問はありますか」
「いいえ、今のところはありません」
「でしたら今から早速開発を始めたいと思いますが、よろしいですか」
「……はい、よろしくお願いします」
「それでは今後の方針を説明しますので、とりあえずベッドに座ってください」

 私は言われるままベッドに腰かけた。藤田さんはと言うと棚から様々な道具を取り出している。そしてそれらを持って私の隣に座った。

「我々の開発は、基本的には何か一つに特化させるものではなく、あくまでオールマイティに色々なことを出来るようにするのが目的です。オマ○コでのセックスやフェラチオ・パイズリといったことはもちろん、アナルセックスやSMプレイにも順応してもらいます。さらにはSMの一環ではありますが、スカトロプレイや獣姦などもしてもらいますのでそのつもりで」
「え……? そ、その……スカトロとか獣姦って……?」
「知りませんでしたか? スカトロと言うのは糞尿、つまりうんこやおしっこを出したり、さらには体にかけたり食べたりするプレイのことです。獣姦は犬とか豚とかとセックスすることです。どちらも趣味としては当然アブノーマルですが、その手の好事家の方たちは好んで『娼品』にそういうことをさせたがるんです。ですから開発期間中にそういうことに慣れておかないと、いざそういうことをさせる段になって拒絶されたとクレームが来ては、わが社の信用が落ちますからね」
「は、はい……分かりました……」

 私はあまりに異常な内容に青ざめていた。しかし、それでもお構いなしに藤田さんは説明を続けていく。

「それに関連して、そうしたハードなプレイにも耐えられるように、オマ○コやアナルには十分に拡張を施しておかなければなりません。そこでここにあるバイブやディルドーなどを使って段階的に拡げていくんです」

 そう言いながら、藤田さんはいくつかのバイブやディルドーを私に見せた。さほど大きくないものから大体通常サイズと思われるもの、そして結構太いものまで様々だった。

「最終的には、私の握りこぶしがオマ○コにもアナルにも楽に挿れられるようになってもらいます。ですがただひたすらに拡げればいいというものでもありません。いくら拡張されていても締め付けや感度に問題があるようなら、やはりお客様は満足しません。もちろん私もその点には注意しながら開発していきますが、もしそれらの点に問題が発生した場合には、今は言えませんが特殊な手段を講じさせてもらいます」



NEXT ▼



この小説は、完全なフィクションであり、実在の人物、
団体等と何の関係もありません。
この小説へのご意見、感想をお寄せください。
感想メールはcopyright下のアドレスまで


NEXTBACK TO NOVELS INDEX


18's Summer : 官能小説、恥辱小説とイラストの部屋