2007.09.09.

色白の美奈
01
safty



■ メルトモ1

 僕には高校1年生のメル友がいる。
「美奈」16歳、アイドルの小倉結衣子似の市内の高校1年生で、制服は赤いチェックのミニスカートに紺のブレザーに赤いリボンらしい。
 しばらく前(彼女が中学生時代)からメル友だったが、最近もろに近所だと判明した。
 というのは、あるときチャットでどこにでもある駅前の雑貨屋の話で盛り上がっていたら、よくよくお互いの店の特徴が一致するものだからメールで確認したところ、なんと毎朝同じ駅から同じ方向の電車に乗車していたことがわかった。
 時間を決め、「明日赤いイルカのネクタイ締めていくから。」とメールすると、美奈からは、「あはははっ赤いイルカですか? 変なの〜 それじゃあ私はイルカのちょっと大きめのぬいぐるみを鞄に付けていきますね。」と返事が来た。
 僕は夜、眠れなかった。
 それは、朝同じ駅から電車に乗る女の子がいるのだが、その子は本当に小倉結衣子そっくりで、ちょっとだけほっぺたがふっくらとしていて、くりくりっとした目が可愛い色白の女の子なのだ。
 ただ胸がかなり大きく、いつも紺色のブレザーをぐっと押し上げ、そのブレザーの胸元が広がっているほどなのだ。
 いつも、ついついその大きな胸に目がいってしまいがちで、時々目があったりしていた。すごくかわいい子だけに「胸を見ていたことがばれたかもしれない」と毎回すごくどきどきして、「しまったなぁ」と思うのだけど、しばらくすれば再びその巨大なふくらみに目が吸い寄せられていた。
(もしかしたらその子かもしれない…う〜〜ん……時々胸を見てたことばれているだろうなぁ……そうだったら……嫌われるかなぁ………)
 そんなことを考えていた。


 悪いことはする物じゃないですね。
 ばっちりその子が「美奈」ちゃんだった。
 ホームで電車を待っていると、その子がきょろきょろしていたかと思うと、こっちに真っ直ぐに軽く走ってきた。
「セフさんですか?」
 下からきょとんとした目で見上げ尋ねられた。
「美奈ちゃん?」
「セフさんだぁ〜♪」
 朝っぱらから電車のホームで抱きつかれてしまった。
(うわっでっでかい……固い……)
 ブレザー越しに固く大きな胸のふくらみだけが感じられた。
 抱きつかれてというよりは、胸をぎゅっと押し付けられたという感じだ。
 同時に、僕の方にたくさんのきつい視線が矢のように飛んできて、突き刺さるのを感じた。
(うっ……おっさんにとびきり可愛い女子高生が抱きついていたら、それこそ変な世界だ……というか……)
 そうなのだ、彼女は周囲からの、特に男性の視線を否応なく引きつけてしまうほどかわいい存在なのだ。
 さらに胸も大きいので、興味本位の視線もたくさん彼女に注がれているのが、いつも電車の中でもあからさまにわかる。
 駅の構内で、また、電車内で、彼女に言い寄った男性はたくさんいたが、そのことごとくがやんわりと、しかし確実にシャットアウトされてきたのを見てきている。
 いつかは電車内が空いているにも関わらず、彼女に近づき彼女に痴漢行為をしようとした男性が、複数の男性に押さえ込まれているのを見たことがある。

(無数の敵を作ってしまったなぁ……)
 なんて事を考え、抱きしめたい気持ちを押さえ、美奈ちゃんの肩を外側からやんわりと押さえて、ゆっくり引き離し、右手を差し出し握手をした。
「ああっ……ごめんなさい……うれしくてつい……」
 少し小声でうつむくようにして、ソプラノだが暖かく澄んだ耳に心地よい声で美奈ちゃんが言った。
 美奈ちゃんは色白なので赤面しているのがすぐにわかる。
 今もほっぺたが赤く染まっている。
 実は僕のほうも相当興奮していて、かなりどきどきしていたりする。
 美奈ちゃんがうつむいてた顔を上げて照れたようににっこりしてくれた。
 その漆黒の髪は、耳元は肩に掛かるくらいだけど背中は腰より少し上まで伸ばしてあり斜めに切ってある。髪の量を多く見せないように中をすいてあるのかしっかりした黒い髪なのに軽く見える。
 アイドルでも十分通用しそうな顔は、化粧ッ気もなく眉もいじっていないのに、すごく整っていて、思春期独特の輝き以上のオーラが出ているとしか思えないほどにとてもまぶしい。
「会ってみておじさんで幻滅したんじゃないかな?」
 おそるおそる聞いた。
「全然!! 優しそうな人で思ったとおり。でも、今まで見てたでしょ。胸。恥ずかしいんだよ。」
 後半部分は、かなり小声で伸び上がるようにして、僕の耳元でその鈴を転がすような可愛い声で言ってくれた。
「そりゃあ、かわいくて、大きければ、目が行ってしまうよ。これでも我慢してたんだから。」
 僕も小声で返す。
 美奈ちゃんはくすくす笑っている。
 あの憧れの子とこんな間近で話をしていることに興奮し、体の平衡感覚がおかしくて足が地についていないように感じている。

 二駅目で美奈ちゃんの友人が二人乗ってくる。
 二人とも美奈ちゃん程ではないが、それでもかなり可愛くて、胸もけっこう大きい。
 巨乳は、巨乳を呼ぶのかもしれない。
 二人の友人は、早紀ちゃんと姫奈ちゃん。
 やっぱり女子高生3人集まるとかしましい。
 たじたじとなってしまう。
「結婚してるんですか?」
「厳しいこと聞くね〜まだなんだよ〜」
「彼女いるんですか?」
「いないよ〜友達ばっかり。」(セフレだらけだから、うそは言ってないぞ。)
「え〜美奈ちゃんを彼女にしたらいいよ。」
「きゃぁぁぁぁ早紀ちゃんたら!!」
 ずばずばと僕の全身に周囲から鋭い悪意の視線が突き刺さるのを感じる。
 そりゃあ中年男性に、電車内のアイドルが好意的にしゃべりかけているのだ。
 嫉妬に狂った奴から、背中からナイフを突き刺されかねない。
「いい男さんじゃない。」
 姫奈ちゃんまでからかっている。
 美奈ちゃんは真っ赤っかになって恥ずかしがって、なぜか僕のお尻をバシンと叩いた。
「いてて! 何するんだよ!!」
「もう!」
 もう一回叩かれる。なんで僕が叩かれなきゃならないんだ? うれしいけど。
「そういう趣味はないぞ。」
「そうじゃない趣味はあるんだ。」
 にやにやと早紀ちゃんがつっこみを入れる。
「そうじゃない趣味ってなに?」
 姫奈ちゃんがきょとんとした表情でスーツの腕を引っ張っている。
「あのなぁ、小学生がお父さんの手を引っ張っているんじゃないんだから、勘弁してくれよ〜。」
「ナワ・ムチ・ローソクの世界とか。あっバラ族? バラ族? そうだバラ族だ!!」
 早紀ちゃんは突っ走っている。
 早紀ちゃんも姫奈ちゃんも電車内にファンが多くいる。
 電車内はし〜んとして、3人の楽しそうな会話だけが響いているかのようだ。
 ううっ電車内の男性をすべて敵にまわしてしまったなぁ………
 そんなことにお構いなく、3人はどんどん僕に絡んでくる。
 今時の女子高生は……頭が痛くなってきた。
 でも、美奈ちゃんと二人のときのさっきまでのどきどきとした緊張感は治まってくれていた。
「やっぱり……胸が大きい人が好き?」
 控えめな声で手を口の前で合わせて唐突に美奈ちゃんが聞いてきた。
「あたり〜♪」
「お? もしかして私たちストライクゾーン?」
 目を輝かせて早紀ちゃん……
「はいストライクゾーンです!」
 開き直って言い返す。
「一人1万で3万!! どう?」
「早紀ちゃん!!」
「ぐええ〜えぇ〜ぇぇ〜」
 姫奈ちゃんが早紀ちゃんの首を絞めて左右に揺すっている。
「それじゃあまた明日ね〜♪」
「痴漢すんじゃないぞ〜♪」
「また明日♪」
 彼女たちが通う進学校の最寄り駅で彼女たちは、赤いチェックのミニスカートをふわりと翻してあわただしく降りていった。
 もうすぐ季節は夏。
 扉の向こうに、白い雲を所々にくっきりと浮かべた高い青空が見えていた。
 電車内に取り残された僕は、しんとした悪意の満ちた空間に取り残され、なぜか背中に冷や汗が幾筋も伝い落ちた。

 日々が過ぎ、彼女たちの毒舌やら癒しやらを受けながら楽しい通勤、彼女たちが降りた後は冷たく鋭い視線にさらされる日々をすごしていたのだが、いつのまにか、僕が単なる友達以上の関係になっていないことを感じ取っているのか、親子がじゃれあっているかのようにしか捉えられなくなってきたのか、または、僕が鈍感になったのか、悪意に満ちた嫉妬の視線を感じることが減っていった。
 時々、背中にガムテープでいたずらされたり、ガムをくっつけられたりといった嫌がらせはよくあることとなってはいたが、あれだけかわいい女の子たちと楽しそうにしていれば、そうしたくなる気持ちも分からないでもない。
 あえてされるがままにしていたら、嫌がらせも少しずつ減っていった。
 そのうちに彼女たちは試験期間に入って、2本程早い電車で通学するようになって会うことが減った。
 そして試験明けのある日、メールが入った。
「今度の土曜日、早紀ちゃんと姫奈ちゃんとお泊まり会するので、昼間だけでもお茶しに来ませんか?」
 僕はすぐにOKの返事を返した。



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