2008.06.26.

女教師・千尋
03



■ ノーパン・ノーブラ出勤1

 次の日。
 通勤途上の満員電車の中で、彼女の尻をさする掌があった。
 当初は自然な感じであったが、途中から、彼女がもっとも気づかれたくないことに気づいたらしく、さわり方が次第に露骨になる。
 千尋が唇をかんで耐えていると、その無骨な手は、さらに、スカートの裾を割り、少しづつ秘所に近づいてきた。
 ああ、さわられる……羞恥心に、頭の中が真っ白になる。
 何より恥ずかしかったのは、そこがひどく潤っていることを、彼女自身が自覚しているためだった。脅迫者の命令により、彼女は下着をつけていない。その怪しい快感により、電車に乗る前からすでに、太ももまで滴るほどに、彼女は濡れそぼっていた。

 昨夜のことである。
 彼女自身のオナニー動画が削除されてから、彼女はしばらく放心状態であった。
 動画が削除されたことの安心感がもっとも大きかったが、様々な感情が入り乱れていたようである。
 いまだに相手の素性はおろか、名前すらわからない不安、今後の脅迫へのおそれ、……その複雑な感情の中には、画像が削除されたことに対する、残念さすら混じっていることに彼女は気づいていたかどうか。
 何分くらい経過しただろうか。
 再度携帯電話が鳴った。子犬のワルツの軽快なリズムが、妙に癪に障る。
 一瞬の躊躇いの後に、彼女は通話ボタンを押した。
「綺麗な色ですね」
 男は言った。相変わらず、笑みを……嘲笑を含んだ、穏やかな声。
「それに、すごく濡れていましたね。すてきでしたよ」
 必ずしも揶揄だけではなさそうな口調である。
 千尋は、一瞬の躊躇の後、返事をした。
「あなたは誰? ……と聞いても、返事はしてくれなさそうね。せめて、目的だけでも教えてくださらないかしら?」
 相手は、一瞬絶句した。
 くすり、と笑う気配がある。
「おやおや、単身米国に渡り、ストリッパーをするくらいですから、気がお強いのですかね。それにしても直接的な質問ですね。僕が素直に答えるとでもお考えですか?」
「脅迫しても無駄よ。私は貧乏だもの。お金なんか払えないわ。それに、ずるずると脅迫されるくらいだったら、さっさと学校をやめてもう一度外国にでも行くわ」
 今更であったが、彼女は強気に出た。出るふりをするしかなかった。
「脅迫なんて、考えたこともありませんよ。あなたが駅前のハンバーガー屋でオナニーで行った時には、いいものを見せてもらえて嬉しかったですけどね。まさか、本当に、あそこまでやってくれるとは思っていませんでした。ぶるんぶるん揺れるおっぱいも素敵でしたよ。それに、スカートをまくっていただいたときには、さわる前から『相当に』濡れていましたね」
 相当に、のところにアクセント於いて男は言った。口調は丁寧で穏やかだが、若々しい声である。30歳には行っていないのではないかと思われた。
 相変わらず穏やかな口調を崩さず、彼は言葉を継いだ。
「確かに、あなたは外国向きの方かもしれませんね。タフで、開放的で、精神力もお強そうだ。しかし、ご両親や妹さんはどうでしょうね」
 千尋は絶句する。
「お父さんは公立高校の教頭先生……、ええと、春から校長先生の昇進されたんでしたっけ。娘の本気オナニー画像が公開されたら、さぞかし愉快なことになりそうですね。大人になった子供が、他人には迷惑をかけていないことをしているだけだから、問題ない……といえるでしょうかね? それに、妹の小百合さんも、あなたと同じ学校でしょう? おなじ『さゆり』でも、真性露出狂のストリッパーのSayuriさん程には、妹さんは強くないかもしれませんね」
 男は、鼻で笑った。
「ま、しかし覚悟が決まっているようですね。話すだけ無駄のようですから切りますよ……」
「待って!」
 千尋は相手の言葉を遮った。
「お願い! 家族には迷惑をかけないで!」
「ご家族に迷惑をかけるのはあなた、でしょう? 千尋さん。留学中に、学業を疎かにして全裸をさらしてアルバイトをしていたのも、ノーブラの胸を揺らしながらジョギングをしていたのも、駅前の人通りが多いところでオナニーをしていたのも、僕じゃありませんよ。僕に対して生意気な口をきいたらどうなるか、覚悟してください」
 相手はわずかに穏やかさを欠いた声で言った。千尋の反撃が、気にくわなかったのかもしれない。
 そして、彼女が答える間もなく、電話が切れた。
 発信音を聞きながら、彼女は呆然としていた。
 彼女の留学に反対する母の泣き顔、それを説得するのに必死になってくれた妹の顔、父の昇進に喜ぶ家族の顔、……脳裏を次々と去来する、家族の記憶。
「どうしよう……」
 彼女はその場にくずおれた。そこに、再度軽快なコール音が鳴る。
「そうそう、名前を名乗っていませんでしたね。僕の名前は、タカシです」
「タカシ……さん、お願いです、家族だけは巻き込まないでください」
「いいじゃないですか、外国に行くんでしょう? 後は野となれ山となれ、ですよ。あなたは強い。賢明で、精神的にもタフで、しかも美人だ。ついでに露出狂の淫乱ときている。どこでだって生きていけますよ。でも……」
「でも?」
「あなたのようにしっかりした方がすがるようにしゃべる言い方は、少し気に入りました。どうです、少し僕と賭をしませんか? 昨日も動画を約束通り5分で消去しましたが、僕は約束は守りますよ」
「賭?」千尋の声が懸念を含んでうわずる。
 タカシと名乗った男は、説明を始めた……。

 次の日。学校に行く前に、携帯にメールがあった。
『今日も一日、下着を着けてはいけません』
 従わない場合にどうなるかは一切記載が無かったが、昨日説明され、合意した「賭」の内容を考えると、従う以外の選択肢はない。そうでなくても、彼女には抵抗するすべはほとんど無かった。
 躊躇のあげく、彼女は上下の下着を脱いだ。パンティストッキングをどうしようか考え、素肌の上から着用したところに、追加でメールがあり、それも禁じられ、ワンピースの下に何も着用しないで学校に行く羽目となった。せめて、カーディガンを羽織る。
 道を歩く途中も、すれ違う男がタカシではないかと、気が気ではなかった。また、彼女の胸はどうしても揺れ、上着でも隠しきれなかった。男たちのぶしつけな視線、女たちのさげすみの視線が薄手のワンピースを通して素肌に突き刺さってくるような感じがした。
 満員電車の中でも、タカシがさわってくるのではないかと警戒していた。
 最初は、さわって来る瞬間に、顔を確認してやるつもりだったが、いつしか、彼女の体は理性を裏切って怪しい快感に興奮していた。彼女は、自分が感じていることを認めざるを得なかった。膝近くまで滴ってきた愛液を感じていては、もはや自分を騙すことは出来なかった。尻をなでさする掌は、彼女が下着を着けていないことに気づくと、俄然大胆になった。スカートがまくり上げられ、直接尻を両手で触られる。
 かろうじて、自分を痴漢する男を確認した。40代と思われる、風采が上がらない男だ。年齢から、タカシとはとても思えなかった。思えば、こんな格好で満員電車に乗っていれば、痴漢されない方が不思議というものだった。
 男は、千尋の顔を見て、明らかに喜んでいた。こんな若い美人が、下着をつけず、秘所を濡れそぼらせて電車に乗っているのだ。足を開くように彼はささやき、彼女は抵抗できない。膣を犯す指が、2本から3本に増え、彼女は自らの肩に顔を押しつけるようにして声を殺した。そのとき電車が停車し、人波に紛れてホームに逃れることが出来なかったら、どうなったのだろうか……千尋は、あと数駅を乗るのが耐えられず、タクシーを拾った。
 タクシーの中で、千尋は荒い息を整えた。尻の部分が、愛液にぬれて気持ち悪かった。ワンピースにシミを作るわけにはいかないため、彼女はスカートをまくり、尻を直接シートに乗せた。運転手が、千尋の表情を伺っている。いぶかしんでいる気配が濃厚であった。
 彼女は、勤務先から500mほど離れた場所でタクシーを捨てた。
 降りるとき、そっと確認すると、彼女が分泌した黄色い粘液が白いレースのシートカバーを汚しており、彼女は赤面した。
 一日はまだ始まったばかりだった。



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