■ 01
「ふぅ………」
とある高校の応接室。
そこで一人の少女がため息をつく。
彼女は今日からこの学校に転校してきた二年生の少女だ。
かなりの美少女だ。ふっくらとした頬にくりっとした瞳。
肩より少し下辺りまで伸ばしたさらりとした茶色がかった髪。
「暑い……」
少女のつぶやき。
それもそのはず、今は夏休みも近い真夏。
それなのに彼女は真冬に着る分厚いコートを着込んでいる。
顔や首が汗に濡れている。
「やだなぁ……やっぱり……」
少女が言い、下を向いてコートのファスナーを降ろす。
見えるはずの自分の足元は、ありえないほどに押し上げられた自分の制服の白いシャツに邪魔され、全く見えなかった。
「やだぁ……」
再び少女が呟き、コートのファスナーを上げる。
もうすぐ担任の先生が教室に案内しに来るころだ。
小川桜怜(おがわ おうれい)が周りの女子と自分の違いに気づいたのは小学三年生のころだった。
そのころから桜怜は顔には自信を持っていた。クラスの誰よりも可愛かったと思う。
しかし、まだ幼児体系の周りと違い、桜怜のバストは大きくなりはじめていた。
周りより太っていたわけでも、背が高いわけでもない。
胸を除いては平均的な体系だった。
桜怜も、少し発育がいいだけ、と気に留めなかった。だが、
小学六年生になったころ、12歳にして桜怜はFカップのおっぱいを手に入れた。
思春期の桜怜にはたまらなく恥ずかしかった。性に興味を持ち始めた男子からは常に視線を浴び、発育が普通な周りの女子からも好奇心の的にされる。
外を出歩けば幼い美少女の顔とおっぱいに世の男性の視線を集める。
桜怜は同じ年頃の男子と一緒にいることにたまらない羞恥を感じていた。
そして桜怜はようやく小学校を卒業し、少し離れた女子高付属の中学に進学した。
もう周りは同姓だけだ。その巨乳に注目を浴びるのは変わらないが、男子に見られる羞恥に比べれば問題ない。
桜怜はようやく安心して学校生活を始めることができた。
しかし中学在学中にも、おっぱいの発育は続いた。中三になった時、桜怜はHカップだった。
そして中学を卒業した桜怜は、そのまま付属の高校に進学した。
これからも同姓としか関わらなくていい生活が続く、と思っていた。
しかし桜怜が高校二年生、17歳になった夏、父親の都合により急に転校することが決まった。
転校しても女子高じゃないとイヤだ……桜怜は願っていた。
しかし、現実に決まった桜怜の転校先はそれとかけ離れた所だった。
「大丈夫かなぁ……わたし……」
また桜怜は呟き、視線を落とす。
制服とコートに包まれてなお、その大きさを周りに知らしめる桜怜のおっぱい。
98cm、Jカップ。
巨乳、なんて大きさではない。
肉付きはいいものの全く太っていない桜怜の体系にはあまりにもアンバランスだった。
胸にバスケットボールを二つ入れていると言っても不自然ではなかった。
「いやだなぁ……脱ぎたくない……」
呟き、コートを抱きしめる。
こんな真夏にコートを着ているのは明らかに服装違反。
先生が来れば脱げと言われるに決まっている。
夏の服装は半そでの白シャツにスカートと決まっているのだ。
今朝、制服を着た自分の姿を鏡で見た桜怜は、
「きゃ!」
と叫んでうずくまってしまった。
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