2004.08.11.

理科室
02
秘月



■ 2

 いっしょに倒れこんで、阿山がわたしをだきよせてそのままあおむけたみたいな構図になった(赤面、あれだけは忘れられない)
 わたしがとっさに流せなかったように、阿山もできなかったようだ。それどころか……身体が反応してしまったようだ。音が鳴るような感じで、ぼごっと阿山の股間がふくらんだ。
「…っ…」
 てんてんのあとに小さいつがつく雰囲気なんて、まさにこんなものだった。思考は真っ白。さっきのほうきうんぬんよりグレードアップだ。
「あのさ……」
 
 阿山が突然いった。手は、わたしの背中に回されている。
「スズキさ……」
 しばらく迷ったようにして、それから思いきったように、
「胸大きいのな」といった。
 胸? 胸のはなし?
「腰細いんだな。ていうか。女だったんだな」
 しばらくして、わたしも勇気を出していった。
「あんたも男だったんだね。はじめて知ったぁ」
 おどけた感じでいったのに、あんまり効果はなかった。ただ、「じゃあ女だと思ってたのか」ときかれただけだった。
「今の……さ」わたしは仕返しがしたくて、口走ってしまった。あいかわらず股間が盛りあがっているのが、足でわかる。固くて、なんだかそれが熱いのだという気がした。
 「勃起っていうんだよね?」

 また、沈黙……。バカらしいことをいってしまった、自分がむかつく。
「うん…」しかも答えんなよ! 素直に答えた阿山も同罪だ。バカ2人組vv吉本にでもはいってしまおうか?
 そんなコト考えてる場合ではない。
「じゃあ、女子にも勃起ってあるし、濡れるんだろ」
 阿山は信じられないことをいった。女子が、勃起? 濡れるってなに? なんとなく想像はできたけど、やっぱりわからないし、そのまえにはずかしい。身体が小刻みに震えてくるのがわかった。
「知らない」
「知らねえの? 女子でもオナニーとかすんだろ。自分のあそこさわっ」
「知らないって! 少なくとも、わたしはそんなことしない」
 こぶしで、阿山の胸を叩いていた。そういえば、まだこの構図のままだ。はなれようかと思ったが、なんだか甘美な気持ちになってできなかった。ただ、震えだけはとまらない。
「濡れるっていうのはつまりさ……」
 阿山はそういうと、急にその原点となった胸をもみだした。わたしの、だ。
 痛い。痛い。そう思って、でもうなったりするのはみっともないのでだまっていた。あえぐ、なんて気持ちにもなれない。ただ、痛い。
「くっ」
 奥歯をかみしめて絶えていると、阿山はくくっと笑った。
「ほら、勃起」
 やさしげに胸をさわると、乳首のくっきりした線をなぞって、つまんだ。
「んっっ」
 だらしない声が出てしまった。

 そういえば、お風呂上がりのときにいやに乳首がつきでているときがあった。
「やめてぇ」
 恥ずかしくて、一瞬舌をかんでやろうかと思ったが、そういうひまもなく阿山はころんとよこになり、気がつくとわたしは阿山のしたじきになっていた。襲ってる、体勢。
「で、濡れてるっていうのがあ……」
 
 阿山の声もどこか高くて、ああ「はじめて」なんだな、と思った。そういう場合ではない。節操(死語)の、ピンチ。
 ハーフパンツに、手がはいる。その下のパンツ(ではなく、ショーツ)にも、手がはいる。
「やめてっ」
 手が動かせず足も動かせない状態。わたしはどこか興奮しながらも、もし万一だれかがきたらというコトを考えて冷静に、静かな心を保とうと決心していた。
 ところで、ショーツと書いた。重大なことを忘れていた、わたしは今生理中だったのだ。
 もう終わりかけ、ナプキンにも茶色っぽい染みが付いてるのみとなったが、今日は万一のことを考えてつけていたのだ。
「これ……?」
 阿山も気づいたらしく、はっと息をのむ雰囲気が伝わってきた。手も、ふっとゆるむ。そこを必死にふりはらって、わたしは阿山の下から上半身だけながれでた。ところが、すぐ後ろは壁だ。
 神様は、わたしにケンカを売っているのだろうか……。そう思ってみたりもした。

「なにか、文句あんの?」
 口をぱくぱくさせている阿山に、わたしは吐き捨てた。
「どいてよ」
 阿山はどかなかった。だが、ごめんと一言つぶやいた。
「どいてって」最後までいわせず、阿山は首筋にくちびるをあてた。それを、ゆっくりと胸元までおろす。わたしはまだTシャツを着ている。ふりほどいて逃げる希望があるわけだ。でも、わたしは動けなかった。
「生理だったっけ? スズキ、もう来てんだ」
「知ったようにいうな、ていうかチビだからとかいうなよ」
「濡れてなかった」
 ぽつんとつぶやいて、阿山はばっとわたしからTシャツを脱がせた。あっというまに、ブラが降りる。ブラまで、まだびしょびしょだった。どれをとって、肌のうえの小さな水の粒をすべて「なめた」。
 思考が停止する。ぽけっとしていると、ハーフパンツまでおろされる。あまりのことに、ふるふると震えていると、阿山はもとのシャイみたいな顔で笑った。
「ダイジョブ。処女は奪わん」
 ダイジョブじゃねー! とつっこむ勇気もなく、わたしは震えていた。ショーツがおろされ、なんだ、血、でてないじゃんという。
「生理、終わってたんだ?」
 すると、いきなり……大切なところに、掌をあてた。秘所って、ここのことだろう。
「やめてぇ」
 今さらやめてなんてねぇだろ、そういうとそっと肛門のあたりまで、手をそわせる。
「おまえ、女には穴が3つあるの、知らねえんじゃねえの?」
 そう笑って、そっと肛門のちかくをつっついて、
「ケツの穴……」
 と言った。本人も、教えてやろうという顔ではなく、やや緊張した顔だった。

 肛門から手を下ろして、ちぢれげのはえたあそこをさわる。わたしがんっと声を出すと、力を抜いたように笑った。股間の勃起が、めだっていた。
「これが、ションベンする穴」
 恥ずかしい。さらに顔を赤らめると、阿山は調子に乗ったようにいった。
「これが……」
 そういって、なんだかなつかしいところにふれた。
「赤んぼが生まれるとこ。セックスに使う穴」
 そういうと、いきなり指をつっこんだ。
「痛いっやめて! やめ……ん」
 指の動きが一段落して、自分が悩ましげな姿勢になっていたことに気づいて、はあと息を吐きだしたわたしに、阿山が笑った。
「ちょっとぬれてきた」
「どうでもいいよ……って、きゃあっ変態!」
 いきなりそこに顔を近づけて、その……「秘所」をぺろんとなめた。
「やああ」
 気がついたら、わたしはあえいでいた。下品なものだ。恥ずかしくて、生理的な涙がうかんでいたはずだ。そんなわたしを見て、阿山はほったらかしのタオルをわたしの肩にかけた。
「挿れていいか?」
 一瞬、は? って感じだった。呆然とするわたしに、阿山は笑う。
「セックスしようかって。なんかおれ、限界かも」
 一瞬、頭がおかしくなったかと思った。わたしも、あっちもだ。



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