2005.03.27.

診察室
01
ドロップアウター



■ プロローグ

 あれは、私が新任の看護士として、ある小児科病院に勤め始めて間もない頃のことです。
 その病院は、女性の医師が一人、私も含めて看護士が四人と、比較的小さな病院でした。
 小児科病院ですから、もちろん子供の患者さんがたくさん来ます。その病院には妙な診察の形式があって、子供の患者さんに対しては、診察を受ける前に服を脱いでもらっていました。男の子はもちろん、女の子もです。
 その病院は、診察室は三つに仕切られていて、入って正面が処置室、右側が点滴や気分の悪い患者さんを休ませる畳の間、先生が診察をするのは左側となっていて、その三つはドアから入って手前側にある通路で一つにつながっています。子供の患者さんが来た場合には、その通路のところで上着を脱いでもらっていました。
 野田さんという28歳の先輩看護士が言うには、その方がおとなしくしてくれるそうなのです。確かに、病院で子供に騒がれるのは困ります。でも、ちょっと寒そうだし、特に女の子だと恥ずかしいだろうし、少しかわいそうだなって思っていました。
 ですが、新任看護士の身では先輩に意見することなんてできませんから、一応は方針に従っていました。


 そんなある日、高校一年生になる女の子がやって来ました。その病院は、大きくてもだいたい小学校中学年までの患者さんが多く、小学校を卒業した子が来るのは本当に珍しいことでした。
 その女の子は島本玲さんといって、さっぱりしたショートヘアがよく似合うかわいい子でした。細身で、背も少し低く150センチくらい、学校ではおとなしい子なんだろうなっていう印象でした。
 玲さんは、高校に入学した辺りから、ひどい体調不良に悩まされるようになったというのです。頭痛や吐き気、体のだるさが頻繁に起こり、授業を受けるのが辛いこともあったそうです。
 本人は、生理痛かもしれないけれど、今までこんなにひどかったことはないし、よく分からないというふうに話していました。
 玲さんの話し方は、意外とはきはきしていて大人びていました。おとなしいけど、しっかりした子なんだなっていう印象でした。ただ、生理のことを話すのはちょっと恥ずかしそうで、その辺はやっぱり思春期の女の子だなと思いました。


 玲さんの受付をすませた後、私は先輩の野田さんに玲さんのことを説明しました。大抵は、私は野田さんを通じて先生に患者さんの具合を伝えることになっていました。
 すると、野田さんは信じられないことを言いました。高校生の玲さんにも、中に入ったら服を脱ぐように指示をしなさいと私に言ったのです。しかも、症状から考えて、全身の診察が必要になるだろうから、手間がかからないように、靴下も、下着も、パンツ以外は全部脱がせるようにというのです。
 幼い子供ならともかく、高校生の玲にそれをさせるのは、あまりにもひどいことじゃないかって私は思いました。
 しかもこの病院は、患者さんは二人ずつ中に入ってもらい、一人は通路のところで待ってもらうという形式を取っていました。つまり、玲さんは裸を他の患者さんにも見られてしまうことになるのです。
 私は思わず、もう少し何とかなりませんかと意見してしまいました。
 でも、患者の羞恥心までいちいち考えていたら診察なんかできないと一蹴されてしまいました。これ以上先輩にたてつくことなんかできません。
 私には結局、野田さんの指示を呑むことしかできませんでした。



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