2005.05.07.

過ちの代償
01
アサト



■ 過ちの代償

 たった一度の過ち。そのせいで、人生が狂ってしまうなんて他人事だと思っていた。あの時までは……

 有名なSF映画の、悪役のテーマ曲が携帯から流れ始めた。亜矢はその音に身体を強張らせた。だが、着信音は数秒で止まった。亜矢は震える手で携帯を開くと、さっき届いたばかりのメールを開封した。

『今から行く。』

 たった一言。その一言が亜矢を恐怖と絶望の底へ叩き落した。自らを抱きしめるかのように腕を抱き、亜矢はその場に座り込んでしまった。

 どうか、あいつがここへ来る途中、事故に遭いますように。

 他人の不幸を願うのはいけないこと。幼い頃、色々な人にそう教わったが、願わずにはいられなかった。それほど亜矢は、その男がこの部屋に来ることを恐れていた。
 亜矢には2年間付き合っている恋人がいた。だが、半年ほど前大喧嘩をしてしまい、破局の危機に陥っていた。その時、亜矢はこの男と出会ってしまったのだ。たった一度、慰めあうだけの関係……そうなるはずだったのに。

 玄関のチャイムの音で、亜矢は泣きたい気持ちになった。だが、そんな表情をしていれば、もっとひどい目に遭う。亜矢は笑顔を取り繕ってドアを開けた。
「よぉ」
「いらっしゃい。拓海さん」
 目の前には、がっしりとした体格の、背の高い男が立っていた。見た目には好青年といった感じで、彼を知っている多くの人間もそう思っている。だが、亜矢だけは彼の本性を知っていた。
 拓海は優しく亜矢を抱きしめながら、後ろ手でドアを閉め、鍵をかけた。大嫌いな煙草の匂いに包まれているにもかかわらず、亜矢は笑顔を崩さなかった。
「亜矢、シャンプー変えた?」
 身長差で、ちょうど亜矢の頭が拓海の鼻のあたりに来る。亜矢は笑顔を引きつらせた。
「変えてないけど、昨日、友達のうちに泊まったから……」
「ふぅん……? 彼氏のうちじゃなくて?」
 少しトーンを抑えたその声に、亜矢の表情がこわばった。おそるおそる顔を上げると、そこには好青年の顔はなかった。ただ、冷酷な独裁者の顔がそこにあった。
「どうなんだ? 亜矢。」
「……彼氏のうちに……泊まった……」
「そう。最初から素直にそういえばいいのに、どうして嘘なんかつくんだ?」
「それは……っ……」
「そんなに、罰を受けたいのか?」
 違う、と否定する暇も与えず、拓海は亜矢をキッチンのシンクに押さえつけた。暴れる亜矢の両手首を後ろで交差させると、片手で掴んで振りほどけないようにする。
「嫌ッ!! やめてっ!!」
 悲鳴を上げながら暴れる亜矢のズボンとショーツを一気に引き摺り下ろすと、茂みの奥の秘裂を指でなぞった。
「まだ、濡れてないな……」
 片手で器用に花弁を開き、きつく締まったその奥に、無理矢理指を入れる。
「嫌ッ……痛い……!!」
「おとなしくしろ。」
 暴れる亜矢を押さえつけ、少し乱暴に耳朶に噛み付くと、拓海は耳の裏から首筋へと舌を這わせた。
「ふっ……ぁ……いや……やだぁ……っ……」
 亜矢はなおも抵抗を続けているが、身体の力が抜けてきたためか、身を捩って自ら快楽を求めているようにも見える。頬を紅潮させ、いやいやと頭を振るその姿は悩ましかった。
「身体は、正直だぞ……?」
 拓海が指を動かす度に、ぐちゃぐちゃという卑猥な音が立てられる。亜矢は嫌いな男相手にまで反応してしまう自分の身体を恨めしく思った。
「もう、やめて……っ……!」
 涙を流しながら懇願する亜矢に、拓海はにっと笑うと、亜矢の蜜壺から指を引き抜いた。そして、愛液にまみれてぬらぬらと輝いている太い指を、亜矢の顔の前に持ってきた。鼻をつく自らの牝の匂いに、亜矢は吐き気すら覚えた。
「ほら、こんなになってるのに、やめていいのか?」
「やめて、いい……」
 途切れ途切れにそう言って、亜矢は拓海の指から目を背けた。その瞬間、拘束されていた両手も自由になった。亜矢は安堵のため息をついて、脱がされた下着とズボンを身につけようとした。
 だが、拓海は亜矢の腰を掴むと、自らの方へ引き寄せると、いきり立った怒張を根元まで一気に差し込んだ。
「きゃあああああああっ!!!!!」
 亜矢は悲鳴を上げて身体を強張らせた。だが、痛みよりも快感の方が勝っていた。その証拠に、滴り落ちそうなほどに愛液が溢れ出していた。
「俺は、途中でやめられるほど人格できてないんだよ……」
拓海が激しく腰を打ちつける度に、シンクの角に肋骨が当たって軋んだ。
「やっ、いや……痛い……ッ!! あぁんっ!!」
甲高い、悲鳴にも似た声が上がるが、その中に甘い響きが交じっていることを拓海は聞き逃さなかった。ぎりぎりまで引き抜いてから、一気に貫く。ずん、ずんと突き上げられる鈍い衝撃に、亜矢は涙を流しながらも、身体がそれを欲していることに気づいていた。そして、絶頂が近いことにも……
「あっ、くぅ……んんっ……だめぇぇええええっ!!!!」
「っ……!!!」
 亜矢は白くて細い指をシンクの角に立てて、大きく背を仰け反らせた。その身体は電流が流れているかのようにがくがくと痙攣を続けた。亜矢は快感に耐え切れずに潮を吹き、キッチンの床を濡らした。拓海はそんな亜矢を見て満足げに微笑むと、亜矢の中に精液を流し込んだ。
「あ、あぁ……そんな……」
 じゅぽ、と音を立てて、少しだけ柔らかくなったペニスが引き抜かれると同時に、拓海の放った精液がどろりと流れ出した。精液と自らの潮の混じった液体に濡れた床に、亜矢は力なく座り込んだ。
「立てないほどに感じたか?」
 耳元で囁かれた言葉が、とても遠く聞こえた。亜矢は呆然としたままぴくりとも動かなかった。
 あの一言さえ言っていなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。亜矢は薄れていく意識の中で、そう思った。

「一回っきりって約束だったけど、寂しくなったらまた呼んでもいいですか?」
「もちろん。じゃあ、こっちも寂しくなったら会いにいっていい?」
 恋人よりも経験豊富な拓海に、すっかり酔わされていたのだろう。亜矢は迷わず首を縦に振った。それが、優しい青年を演じているとは気づかずに……
「その時は、たっぷり可愛がってあげるよ……」

「亜矢……起きて。」
 拓海は亜矢の細くてしなやかな髪を優しく撫でた。涙のあとが残る寝顔を見つめてから、その頬に優しく唇を落とした。
「……俺は、亜矢の事が大好きなんだよ。だから……」
 まだ目覚める気配の無い亜矢を、拓海はベッドに縛りつけ始めた。
「だから、別れかけてた恋人のことしか見てない君を、めちゃくちゃにしてやりたくなるんだ……」
 両腕を高く上げられ、両足を開かされた状態で縛り付けられた、まだ眠っている亜矢を見下ろして、拓海は少し哀しそうに微笑んだ。
「う……ん?」
 か細い声で呻きながら、亜矢はゆっくりと目を開けた。そして、自分の置かれている状況に気付いて青ざめた。
「やっと目を覚ました……さぁ、続きをしようか……」
バイブとローターを手にして微笑んでいる拓海に、亜矢は再び気絶してしまいたくなった。

<終>



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