「sleeping two」 1



ある日曜の午後、夕歩は自分のベッドの前で眉をひそめて立っていた。

(また人のベッドに入り込んで……)

自分のベッドの中で、何故か順が眠っている。身体は反対側の壁の方を向いて、抱きつくような格好で腕をベッドのへりに絡ませている。
部屋の中にルームメイトの増田の姿は見えない。一人で夕歩の帰りを待つうちに眠り込んでしまったのか。

何をしにここに来たのか、いつから待っていたのかは分からない。とにかく順は眠っている。
その肩が寝息に合わせて規則正しく上下しているのを眺めながら、夕歩はため息をついてまた眉をひそめた。

「……私も寝ようかな」

ベッドの中の順につられたのか、なんだか少し眠くなってきた。順は壁に張り付くようにして寝ているのでベッドのスペースは十分に余っている。

不思議なもので、思案しているとますます眠くなってくる。夕歩はベッドのへりを乗り越え、滑らかな動作で順の隣に滑り込んだ。起こさないようにと動作に変に気を遣ったら、却ってその気配で起こしてしまう。そういうものだ。
それに順が起きないことを夕歩は知っている。起きたら起きたで、それも別に構わない。
静かに横になると、夕歩の小柄な身体は空いたスペースにすっぽりと収まった。

(あったかい)

はじめは順も真ん中でまっすぐ寝ていたのか、シーツがほんのりと温かい。
順の体温。小さい頃から慣れ親しんだ温かさ。

小学生の頃、夕歩が病気で入院してしまうまでは、よく順の家に泊まりに行ってこうして一緒に眠っていた。だけど天地に入ってからは、身体を寄せ合って眠ることもなくなった。
寮生活な上に、部屋にはお互いのルームメイトもいる。そもそも中学生になってまで一緒に寝るなんて、キモいしウザい。
だけど……やっぱりこの温かさは心地良い。



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