何か身体が温かい。自分の体温とは別の温かさを身体に感じて、夕歩は薄く目を開けた。 「あ……」 すぐ目の前に順の頭があって、どきりとする。 順の頭のすぐ向こうには壁。順は相変わらずベッドのへりに抱きつくようにして眠っていて、夕歩はその順の背中に抱きつくような格好になっていた。 どれくらいの時間、こんな体勢で眠っていたんだろう。頬にかかる順の髪がサラサラとして心地良く、かすかに甘い香りが鼻腔をくすぐる。 夕歩はそこで、胸の鼓動が早くなり始めているのに気がついた。その胸を順の背中にぴったりと押し付ける格好になっていることにも気がついて、今度は頬が熱くなる。 「……バカみたい」 小さくつぶやいてから、順の身体からそっと離れた。 なるべく滑らかな動作を心がける。こういうのは変に気配を変えないのが肝要だけれど……。 夕歩はベッドの縁を静かにまたいで床に降り立った。よかった、順は起きない。 眠っている順の背中を見つめていたら、頬の熱さを改めて認識してしまってまたどきりとする。ルームメイトの増田はまだ帰ってきていないようだ。 (顔でも洗ってこよう) 夕歩は無理やりに順の背中から視線を外した。 それにしても順はいつ起きるんだろう。洗面所から戻ってきたら、今度は叩き起こしてやろうか。 寝ぼけながら起き上がる順の顔を想像しながら、夕歩は静かに部屋を出た。 (「sleeping two」 完) |
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