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火照り病2
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真っ先に回線が伝えたのは、周りに人がいるのだろうというざわつく音。
そして愛しい恋人のそっけない、だがそれが格好よすぎる低い声。
「なんだ」
そんな短い音声だけでもどきどきと胸が高鳴っている。
こんな自分は病気なのかもしれないと、現在進行形で病を患っていることを
すっかり忘れ、その声に聞きほれる。
うっとりとしている間に、どうやら時間は経過していたらしい。
「どうした。話せないほど具合が悪いのか」
(あ、俺喋るの忘れてた…!)
怪訝そうな声にハッと我に返り、慌てて何かを話そうとして呼吸は縺れ、
無様に咳き込んだ。
「げほげほ……俊明さぁーん………俺……俺………もう……」
声が聞けたことが嬉しくて、だからこそ心細さを痛感して、おまけに身体が
欲求不満で辛すぎて思わず泣き言をもらすように縋りつく。
声が聞けたことで加速した淫靡な欲求が手の動きまでをも速めていく。
手のひらはもう汗ではないものでしとどに濡れている。辛い。辛すぎる。
「静貴?大丈夫か?」
流石の薄情さながらも、放っておかれて淫らな身体に苦しむ恋人を心配する慈悲の
心くらいは持ち合わせているのか、神近は心配そうだ。
その嬉しさがじわりと胸を満たしていく。同時に、下肢に巡る血流も満ちていく。
手のひらの中でもうこれ以上はないと思っていたペニスがまた膨らんだ。
苦しくて熱っぽい吐息が漏れた。
「俊明さん……俺……もう駄目………」
「しず…」
「もうセックスしたいぃぃぃ」
「……………」
「……俊明さん?聞いてるか?俺、もう無理ぃ。やりたいやりたい。
今すぐにでも欲しい!」
「お前は………本当に……」
眩暈を起こしていそうなそんな声すら格好いい。
眩暈を起こすほど心配してくれているのだろうかと嬉しくてぐりっと指先で
先端を刺激する。
「んぅ……あ………気持ちいい……」
「お前は何をしている。大人しく寝ていろといっただろう」
「きいたぁ。うつしたくないから来なくてもいいって俺も言ったぁ。だけど、
電話もくれないなんて……俊明さんのばかぁ!!」
「………どういう状態かはわかった。すぐに人をやる。入院しろ」
「ひど!俺元気なのに。主に下半身が…」
「そこは静めておけ。余計なことはせずに寝ていろ。すぐに迎えを送る。
まさかそこまでとは……」
「そこまでやりたいんだよ!だから他の人間なんて嫌だ!」
「……………」
深く深い沈黙。そして重苦しい溜息。
見捨てられたようで香芝は電話機をきっと睨みつけた。
「お願いだから……セックスが駄目なら一人でやるからぁ
……だからせめて聞いてて。もう寂しいの嫌だ……」
思えば大病はおろか滅多に風邪すらひかない香芝だ。
だが、一度病気になってしまうと重く症状が出てしまうことが常だった。
だから、いつもは心配した友人が手厚く看病をしてくれていたのだ。
それ以前の香芝は、ずっと独りだった。
早くに親を亡くし、施設では自ら看病を拒絶し、引き取られた家では
関わられることすら論外だった。
病の時に傍に誰もいない寂しさは思った以上に病気で弱らされた精神を蝕んだ。
「あんまり放っておくと俺もう裕也の家の子になるからな!」
「断られるのがオチだ。やめておけ。……わかった。聞いていてあげるから
好きにしなさい。ただし、終わったら入院だ」
「入院でも入獄でもなんでもいいよ……。本当にしてもいい?本当に?」
「くどい。さっさと終わらせて寝ろ」
「怒らない?」
「今更だ。それに、誤算をしていたのはこちらだ。いいからしなさい」
「ん。ありがとう、俊明さん。大好きだ」
ほわっとした気持ちでにへらっと笑った香芝に、電話回線越しの恋人は何故か
黙ってしまった。
そして移動でもしているのか微かな物音がして、やがて背後がやけに静かになった。
「さぁ、静貴。お前の可愛い声を聞かせてごらん」
うっとりするほど尾てい骨に響く声だけで喘いでしまう。
いつもとは違う背筋がくすぐったくなるような声音に力の抜けかけていた手に
力が篭った。
「なんでそんなに優しいんだよ……。惚れ直したらどうしてくれる…」
「何度でも惚れればいいだろう。何か困ることでもあるのか?」
「ん、ぁ……ない、けどさぁ………でも、心臓に悪い……」
いつもは鬼畜そのもので香芝を弄ぶくせに、甘く責めることもできるなんて
何度恋に落ちなければならないのか。
そんなことは幸せだが苦しすぎる。身がもたない。
そんなことをされると欲しがる心が止まらない。
「あぁ……ん……もっと………声、きかせて……」
片手でぐしゅぐしゅと音を立てて下肢を激しく擦りながら、Tシャツの中に
手を差し入れてしこった乳首をくりくりと指で弄る。
痺れるような快感にまた先端から蜜が染みる。
奥まった場所で淫らな穴がはしたなく疼いた。
「聞きたいのではなくて聞いていて欲しいんだろう?今どこを弄っている?」
「あ……いやらしく勃起してるところと乳首を……」
「ちゃんと言いなさい。静貴はいい子だから言えるだろう?聞かせてごらん、
お前の恥ずかしい姿を」
「ん、ぅ……ペニスと…乳首を……」
「静貴」
言葉足らずな報告に諭すように名前を呼ばれる。
とくんと胸がときめく。どきどきと響く心臓が愛しさを叫ぶ。
何もかもを捧げたいと思った瞬間に、言葉は溢れていた。
「あ、ぁ……ぐちゅぐちゅに濡れたペニスを扱いて……乳首抓って……
気持ちよくなってる…。もう身体がおかしくなりそう。後ろも……おっきいの
欲しくて疼いてるアナルに触りたい……。太いの、いれてほしい……。お願い……」
思い出される神近の凶悪なほど逞しい肉塊。
それを散々舐めて口で飲み干して、そしてまた大きくなったモノで奥深くまで
貫かれたい。内臓をぐっちゃぐちゃにされるまで揺さぶられたい。
「欲しい……俊明さんが欲しい………でもうつしたくないぃ…」
「いい子だから泣くな」
言われて初めて嗚咽を漏らしている自分に気づいた。
姿など見えない携帯電話を見つめながら、それでもその温もりを思い出す。
いつの間にこんなに弱くなったのか。
もう神近がいなければ一秒だって生きていられない。
「愛してる……愛してるよ。俺の全部をあげても足らないほど……愛してるんだ」
「知っている。だから全てを奪ってやる。安心して眠りにつくといい」
それは今の話なのか、それとも確実に未来に果たされるだろう約束の時のことを
指しているのか。
いずれにしろ嬉しいことには変わりなく香芝は衝動に貫かれるように手を速める。
乳首に爪を食い込ませ、痛みに全身がぐっしょりと汗に濡れる。
霞む視界に気が遠くなりそうだ。
「静貴。指だけならいれてもいい。自分でいれていじってごらん」
「ん……はい………ご主人様……俊明さん……」
許された悦びに手を伸ばす。
仰向けになり膝を立て、乳首を弄っていた手をそっと後ろに伸ばす。
そこはもう淫らに息づき、悦楽を欲しがって汗と先走りに濡れていた。
ゆっくりと指を挿入していくと小さな痛みを感じた。
それでも我慢できずに指を根元まで入れると身悶えながら出し入れを繰り返しながら
浅い場所にあるしこりをぐりぐりと擦る。
「は、ぁ…ぅ……すごい……中、熱い……ひくひくしてる…」
うねる肉壁に感嘆が漏れる。こんなみっともない身体をいつも知られて
抱かれているのかと思うと我慢できないほどの性感の炎が身を焼いた。
「俊明さん……俊明さん……もう駄目……達く……出るぅ……」
禁欲に加えて優しい神近に限界が近づく。
震える指で裏筋を押さえながら何度も性器を扱きあげ、前立腺を内側から擦る。
開きっぱなしの口から唾液が伝い、内腿がぴくぴくと痙攣する。
もう駄目だときつく目を閉じた瞬間、くくっと惚れ惚れするような残酷な笑みが
鼓膜を震わせた。
そして下される、酷薄な命令。
「静貴、お預けだ」
「え……?」
もう今まさに絶頂に達するという瞬間に、命じられることになれすぎた身体が
とっさに動きを止める。
脊髄だけの反射で性器からも後ろからも指が離れ、次の瞬間襲った急激な
乾きと疼きに悲鳴のような嬌声が零れ落ちた。
「ひ、っ……ぁ……嫌だ……こんな……」
ぞわぞわと脈打つような快感が出口を求めて身体の中を暴れて荒らして巡る。
放り出された性器はぴくぴくと揺れては泣くように透明の粘液を滲ませる。
布団で肌が擦れただけでも達してしまいそうなほど身体が敏感になっていた。
それなのに、許してもらえない。
「俊明さん……どうして………」
絶望的な問いかけに返ってきたのは、思いもよらない甘い甘い責め苦。
「そんな可愛い姿はとっておけ。治ったら満足するまで食ってやる。
……お前の可愛い姿は全て俺のものだろう?」
だから見えない場所で達くことは許さないなんて言うから、胸に刺さったままの
甘ったるい毒の針が抜けない。
じくじくと鼓動を刻むように疼く恋心のせいで、寂しいなんてすっかり忘れていた。
「田辺が向かっているから大人しく眠りなさい」
その声を最後に記憶は途切れる。
焦らされた身体は辛いが、それでもとても幸福だった。


その後田辺の手によって無事救助された香芝は、
長引いた入院生活を終えたその日から丸二日、
神近の家で飼い殺しにされたわけだが、それはまた別の話だ。


   

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