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戯れ少年1
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歴史あるものには意味不明な慣習がつきものだ。
湯気の立ち込める洞窟風呂から普通の露天風呂にもどってくると、
そこにまだいた人物に眉が露骨に寄ったのがわかった。
「長風呂だな」
嫌味混じりに百瀬が言うと、視線すら向けずに同級生である重坂が答えた。
「お前ほどではない。どうだった?」
問われ、少し距離をあけて隣にいくと、背を向ける形で岩にしなだれ
出てきたばかりの洞窟を見る。
「サウナみたいで気持ちが良かった。視界はゼロだったけどな」
「そういえばサウナ好きらしいな。オッサンか」
「生憎とお前ほど老け込んじゃいねぇよ」
最近同い年にはみえないほどに大人びた顔つきになった重坂にぞんざいに
返すと苦笑が漏れる。
百瀬がサウナ好きなどということを知っているのは一人だけだ。
高校二年の二月なんていう微妙な時期に行われる合宿にその一人は来ていない。
人前では眠れない警戒心の強い臆病な香芝は今頃百瀬の家を散らかし放題に
しているか、ご主人様のところへ行っているだろう。
宿泊が伴うイベントの度に虚弱な体質へと変わってしまう香芝がいないために
この合宿はなかなかに暇だった。
任意参加の勉強会というクソ真面目な合宿はそもそも出席率が悪い。
百瀬も出席する気など全くなかったのだ。
成績は上がりも落ちもしていないし、今のまま維持していれば志望大学には
合格できるだろう。これ以上勉強をしたらそれこそ暇なときに勉強で潰すことすら
苦痛になりかねない。
それなのになんの間違いか、重坂に行くのかと問われ、なんとなく行くと
答えてしまっていた。
あとからきいたが重坂はとりまとめの役割を負わされているらしく、
強制参加だったらしい。
正体を知られていない重坂の人望はそれなりに厚い。
しかし、とっつきにくいことは事実のようで周囲に人がいることは少ない。
今も自由時間だというのに重坂が風呂に入るといった瞬間に、
風呂場から人が消えた。
同じく一定の距離を置かれていることの多い百瀬もいたからという理由も
あるのだろうが、そこは気づかなかったことにしておく。

   

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