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邪恋1
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「……お早いお帰りで」
「いたのか」
深夜3時。
暖色のライトだけ灯る寝室に、およそ時間に似合わない応酬が散る。
仕事を終えた神近を出迎えたのは、暗い闇の中でさえ鈍く光を宿す金髪の男だった。
音すら見つけられない夜の帳の中で、日本人にはあり得ない碧眼が挑戦的に
細められる。
さして背が高いわけでもない、儚げな繊細さが印象的な美男子だ。
外国の血のみで形成された肌は陶器のように造り物めいて白い。
彫りが深いわけではないのにはっきりとした目鼻立ちは、
いつも柔らかく危うげな表情を作っていた。
造形は似ていないが、どことなくその雰囲気は香芝のそれと似ている。
当然だ。
それは模した結果なのだ。
同化を望むように同一でありたがる、不毛な努力。
そして、そんな多大なる影響を与えている香芝といえば、すやすやとベッドの上で
寝息を立てていた。艶かしい素肌を掛け布団からところどころ晒しながら、
声に気づくこともなく寝入っていた。
ベッドサイドのテーブルにはミネラルウォーターのペットボトルと処方薬の袋が
置かれている。
大方、眠剤かなにかだろう。
最近眠りの浅い香芝はそういったものに頼ることが多い。
それでも眠れないのだと言うことも多いが、今日は薬がよく効いているらしい。
ベッドの端に座っている金髪碧眼の青年をみれば、その手はしっかりと香芝の手を
握っていた。
感じた不快さを煽るように青年が微笑む。
肩の下まで伸びた長ったらしい髪がさらりと揺れた。
「いますよ。ようやくシズにも時間ができたんだから、できる限りそばにいたい。
寝る時も、お風呂に入る時も、食事の時も。ずっと一緒にいたい。
好きな人と一緒にいたいと思うのは自然な感情でしょう?」
「風呂にまで一緒に入るのか?」
そんなことは香芝からも聞いていない。
どこか勝ち誇ったように澄んだ色をした瞳が笑む。
「勿論。あなたの代わりに僕が隅々までちゃんと洗ってあげていますよ」
どこか挑戦的に輝く瞳がちらりと見上げてくる。
同時に、指先が香芝の指に絡み、爪から指の付け根までをくすぐるようになぞった。
眠っている香芝から吐息のような声が漏れ、くすりとその青年、ノアがほくそ笑んだ。
「シズの身体はどこも綺麗で感じやすい。可愛くて淫らで……泣かせたくなる。
無意識に誘うように色気を撒き散らされると踏み躙りたくなる。……なりませんか?」
「なったとして、実際にやりたいか?」
質問には答えず、問いかけで返すと食えない男はふふっと笑った。
「それもあなたの代わりにしていいなら、どれだけでもしたい。あなたさえいなければ、
僕にもまだ望みがあったかもしれないのに……シズってば、あなたに
ベタ惚れなんだもの。僕なんて警戒心を抱かないほどに相手にされない。
おかげさまであんなところもこんなところもじゃれている振りをして触り放題だけど」
「触るな」
「やだな。吉野親和会の幹部ともあろうお方がヤキモチ?
シズが知ったら泣いて喜びそう」
楽しげに笑みを浮かべたノアは絡めた香芝の指にそっと口づける。
それだけでは満たされないというかのように指先に歯を立てるとぴくんと
香芝の手が動いた。
ノアの言う通り敏感な身体だ。
薬に落とされている最中でさえ、快楽に溶けたがる滑らかな肢体。
その反応のほとんどは神近が仕込んだものだ。
ノアを無視して香芝の髪を撫でると、触れた肌はいつもより僅かにだけ体温が
高くなっていた。
天性の淫乱さはあれど、今はもうすっかりと神近の色に染まった。
それがわかるのだろう。
ノアが腕をなぞるようにして布団の中に手を忍ばせながら、ふんと鼻を鳴らした。

   

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