マイメロちゃんが女神だったら 3 

 マイメロちゃんをだっこして、カノンちゃんは12宮を登っていきます。
 まずは最初の白羊宮でムウ様に、その次の金牛宮ではアルデバランさんに会いました。
 一見ではサガちゃんと見間違えるようですが、服装や雰囲気や、何より小宇宙が微妙に違うことに気付いて、2人とも驚きの表情を浮かべます。
「サガの弟のカノンです。マイメロちゃんのお世話係として、働かせていただくことになりました。」
 年は若くても、ムウ様もアルデバランさんも、立派な黄金聖闘士です。
 マイメロちゃんに許されたカノンちゃんは、今までのわだかまりも遥か遠くにまで投げ去り、素直な気持ちで御挨拶することができました。
「そうですか……。」
「はい、がんばりますのでどうぞよろしくお願いします。」
 呆然としている少年たちに丁寧に御挨拶しながら、どんどん階段を上って行くカノンちゃんとマイメロちゃん。
 さて、最大の難関は、双児宮です。
「女神っ!……カノン。お前……っ。」
「やっほー、サガー。あのねー、マイメロねー、カノンさんのこと雇ったのー。」
 怒りの形相でカノンちゃんをにらみつけたサガちゃんに、マイメロちゃんはきゃはv と可愛く笑って、お手手を振りました。
 一瞬ひるんだサガちゃんに、カノンちゃんはぺこんと頭を下げます。
「今日からマイメロちゃんのお世話係として使っていただくことになった。……今までごめんなさい、サガ。俺、サガの影とかじゃなくて、俺は俺として、これから一生懸命マイメロちゃんのために働くよ。だからサガも、俺のこと、嫌わないで……、見守って欲しい。」
「カノン……。」
「よしよし。」
 サガちゃんはカノンちゃんの素直な声に絶句し、マイメロちゃんはそんなカノンちゃんを、いいこいいこと撫でてあげました。
 それからマイメロちゃんは、大切なことを思い出して、たっぷりと綿の詰まったおててをサガちゃんに向けます。
「兄弟げんかは、めーっ。なんだよ。」
「……はい。女神。」
 サガちゃんはマイメロちゃんのぷくぷくのおててを取り、完璧な作法でもって、ふんわりとキスをしました。
「申し訳ございません、女神……。それから、ありがとうございます。カノン共々、全力であなたにお仕えさせていただきます。」
 マイメロちゃんの雄大な小宇宙にふれ、カノンちゃんが改心したことは、サガちゃんにも伝わりました。
 そうして、カノンこそを双子座にと願っていたサガちゃんには多少複雑な面もなくはありませんでしたが、こうして女神自らが、カノンちゃんを12宮へと連れてきてくれたのです。
「サガも、カノンさんも、仲良くしてね。そしたらマイメロ、いつでも2人にタルト焼いてあげるからね。」
 マイメロちゃんは、サガちゃんの言葉ににっこりして、サガちゃんに取られたままのおててをぶんぶんと振りました。
 美しく強き我らが女神・マイメロちゃん。
 今こそが、サガちゃんの心の中で形を作り出していた、黒い心のもう一人の自分が、跡形もなく溶かし崩された瞬間でもありました。
 小さくピンクでぷくぷくの生きて動くうさぎのぬいぐるみ。
 けれどマイメロちゃんは、紛う事なきこの世に降り立った女神、聖域と聖闘士の頂点に立ち、この世を平和に導く御方であると、サガちゃんは実感したのでございました。
「カノン!」
 サガちゃんは、感激のままにカノンちゃんに抱きつきます。
「……サガ、……ごめん……。」
 カノンちゃんはびっくりしましたが、そのままサガちゃんを抱きしめ返し、ぽろぽろと涙を流しました。
 もちろんサガちゃんだって、目と同じ幅の涙を流しています。
 ようやく心を通じ合わせることのできた双子は、まだ幼く無邪気だった頃以上に、強い力と思いを込めて、ひしと抱き合ったのでありました。

「むぎゅー……。」
「うわああっ、女神、申し訳ございませんっ!」
「マイメロちゃんっ、ごめん、大丈夫っ!?」
 そして、2人の間に挟まれたマイメロちゃんは、すっかりつぶされてしまっていました。
 うろたえながらも、2人であわあわとマイメロちゃんの綿の位置を直します。
 これが記念すべき、仲直りをした双子の初の共同作業となったのでした。
  
2008/02/09 






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