マイメロちゃんが女神だったら 4 

「誰か、マイメロのお馬さんになって。おねがいv」
 黄金聖闘士を集めたマイメロ女神様は、にっこり笑って『おねがい』のポーズを取りました。
 せっかくのマイメロちゃんのお願いではありますが、皆一瞬、躊躇してしまいます。
「マイメロちゃん、ぜひ俺にお乗りください!」
 そんな中、いち早く飛び出したのは、マイメロちゃんのお世話係のカノンちゃんでした。
 スライディングするような勢いで四つん這いになったカノンちゃんに、黄金聖闘士達は申し訳ないような気分になりながらも、ほっとした空気が流れます。
「わーいわーい、カノンさん、ありがとー。」
 マイメロちゃんは飛び跳ねて喜び、カノンちゃんによじ登り始めました。
 マイメロちゃんの喜びは、カノンちゃんの喜びです。
 手を貸して、マイメロちゃんが背中にお座りしたのを確認すると、カノンちゃんはゆっくり前に進み始めました。
「カノンさん、重くなーい?」
「綿のように軽いですよ。」
 それはそうです、だってマイメロちゃんはぬいぐるみなんですもの。
「きゃっ、お上手ね。」
 マイメロちゃんは、照れたようにはしゃいでいます。
「わーい、カノンさんのおんまさんー。」
「ひひーん。」
 マイメロちゃんがとても喜んでくれているので、カノンちゃんは嬉しくなって、馬の鳴き真似をしてみました。
 背中のマイメロちゃんを落とさないように、ゆっくり1mほど進んだところで、やわらかいおててにぽんぽんと肩を叩かれました。
「もういいよー、ありがと。」
「えっ、これだけですか……?」
「うん、もういいの。」
 カノンちゃんがきょとんとしていると、マイメロちゃんはピンクの頭巾の中に手を突っ込んで、もぞもぞとしています。
「はいっ。」
 そしてマイメロちゃんは、頭巾の中から何かを取りだしました。
 マイメロちゃんの頭巾は不思議な頭巾。何でもそこに入るのです。
「マイメロねーぇ、お馬さんに、にんじんさんをあげてみたかったの。」
 満面の笑みでマイメロちゃんが手にしたものは、薄いオレンジ色をした、にんじん型のにんじんケーキでした。
「この形に焼くの、とっても大変だったの。」
 マイメロちゃんは、にんじん型にんじんケーキの先の方を、まだ四つん這いのままのカノンちゃんの口元に寄せてきます。
「はい、カノンおんまさん、マイメロを乗せてくれてありがとうね。御褒美ににんじんあげるねー。」
 マイメロちゃんがカノンちゃんの背中に乗ったのは、御褒美という設定のためだったようです。
「いただきます。」
 カノンちゃんはぱくんと、そのにんじん型にんじんケーキに食いつきました。
「どーお、おいし?」
「はい、とってもおいしいです!」
 マイメロちゃんもカノンちゃんも、今にも零れ落ちそうな笑顔です。
「じゃあ、もっと食べてね。」
 マイメロちゃんが差し出すにんじんケーキを幸せそうに食べるカノンちゃんに、黄金聖闘士の皆さんは、とてもうらやましそうにしています。
「皆の分も、用意してあるよ。後で一緒にお茶にしようねv」
 マイメロちゃんは、長いお耳をたゆんたゆんさせながら、可愛く笑ったのでした。

 ――でも。
 皆の分は、パウンド型で焼いた普通の形のにんじんケーキ。
 そしてもちろん、マイメロちゃんにあーんで食べさせてもらったのも、カノンちゃんだけなのでありました。
 
2008/02/09 






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