マイメロちゃんが女神だったら 7 

 いよいよハーデスとの戦いが迫りました。
 アイオロス教皇さんが、前教皇シオンさんに伝えられた、女神の聖衣とその蘇らせ方。
 今こそそれを、マイメロ女神様にお伝えする時がきたのです。
 アイオロスさんとマイメロちゃんは、女神の像のところまできました。
 少し離れたところでは、裁縫セットを持ったカノンちゃんが、ひっそりと控えています。
「さあ女神、この女神像に、あなたの血をお垂らしください。そうすれば、像と化していた女神の聖衣が、元の姿に蘇るのです。」
「はーい。」
 マイメロちゃんはおててを上げて、元気よくお返事しました。
 そして、ピンクの頭巾の中から、大きな黄金の短剣を取り出します。
 短剣とはいってもとても重くて、マイメロちゃんは短剣を持ったまま、ぱったり倒れてしまいました。
「あれれ……。」
「お手をお貸ししましょう、女神。」
 アイオロスさんは、慌ててマイメロちゃんを抱き起こし、その後ろに膝をついて支えます。
「では……、失礼します。」
 アイオロスさんは、短剣の切っ先を、マイメロちゃんの白い腕に当てました。
「はーい。」
 マイメロちゃんは女神ですから、ちゃんと覚悟をしています。
 むしろ、離れて見ているカノンちゃんの方が泣き出しそうになっていましたが、邪魔はしてはいけないのだと、一生懸命我慢していました。
 アイオロスさんの手も、ちょっと震えていましたが、けれど彼は教皇です。
 マイメロちゃんとアイオロスさんは、協力しあうようにして、マイメロちゃんの腕を切り裂きました。

 しかし。

「やーん、マイメロ、ぬいぐるみだから、血が出なーい!」

 何ということでしょう。
 そう、今代の女神、マイメロちゃんは、かわいいかわいいうさぎさんのぬいぐるみさんなのです。
 さわり心地のいい布の中にたっぷりと詰まっているのは、真っ白な綿なのです。
「しまったああぁぁぁ!!」
 アイオロスさんは、頭を抱えて、大きな声をあげました。


 仕方がないので、黄金聖闘士全員を集めて緊急会議です。
 黄金聖衣をつけた12人が集まって金きら眩しいその近くでは、目に涙をいっぱい浮かべたカノンちゃんが、ちくちくと一生懸命にマイメロちゃんの腕を縫い合わせていました。
「痛くない?マイメロちゃん、痛い?」
「よーしよーし。マイメロは丈夫だから大丈夫だよー。」
 さすがはマイメロちゃん、とっても気丈な女神は、むしろカノンちゃんを優しく慰めているほどでした。
「他にも、縫い目の弱くなってるところとかないですか。綿は足りてますか。これから、マイメロちゃん、危険な目に合うかもしれないから……、今のうちに。」
 カノンちゃんも一生懸命涙を拭いながら、マイメロちゃんの状態のチェックをしています。
 マイメロちゃんのお世話係として、精一杯のことをしようとしているのです。

 その間にも黄金聖闘士達の会議は進み、自分達全員の血と小宇宙でどうにかしてみせようと、それぞれに自分の手首を切り、女神像の足元に血を振りかけていました。
 そして、星座順に並んで女神像を囲み、一致団結して、黄金の小宇宙を最大限に高めました。
 その小宇宙に反応して、女神像が輝き始めますが、けれどまだ足りないようです。
「あ、マイメロちゃん!」
 マイメロちゃんはカノンちゃんの腕から飛び降りて、ぽてぽてと駆けだしました。
 そして、シュラさんにわっせわっせとよじ登ると、彼の頭の上に立って、一緒に小宇宙を燃やし始めました。
 マイメロちゃんは山羊座なのです。
 マイメロちゃんは小宇宙を燃やしながら振り返ると、カノンちゃんを手招きました。
「おまえも来い!」
 それに気付いたアイオロスさんが、カノンちゃんを呼びます。
「え、で、でも俺…っ。」
「カノン、おいで!」
 戸惑うカノンちゃんを、サガちゃんも呼びます。
 他の黄金聖闘士の皆も、カノンちゃんの方を見て、それぞれにうなずいてくれました。
 皆、カノンちゃんを、もう一人の双子座の聖闘士として、認めてくれていたのです。
 カノンちゃんは泣きそうになりましたが、今はそれどころではないと、急いでサガちゃん目がけて駆け寄りました。
「おまえも、血を。」
「うん!」
 カノンちゃんは急いで女神像に血をかけ、サガちゃんのところに戻ります。
「生身じゃ危ないから、私の後ろに。」
「判った。」
 カノンちゃんはサガちゃんの背中にしがみつき、2人の小宇宙がひとつになって輝くように、そしてマイメロちゃんのことを思いながら、一生懸命に小宇宙を燃やしました。

 天高く燃えあがった黄金の小宇宙は、一つになって女神像に降り注ぎます。

「わーい。」
 眩い光があたりを満たした次の瞬間、マイメロちゃんは、とっても可愛い女神の聖衣に、身を包んでいました。
「やったー!」
「良かった……。」
 喜んでガッツポーズを取る者、気が抜けて膝をつく者と反応はそれぞれでしたが、誰も表情は喜びに輝いています。
「やーん、ニケも盾も重たくて、マイメロ持てなーい。」
 そしてマイメロちゃんはまた、ニケと盾を持ったまま、ひっくり返っていたのでした。
「大丈夫ですか、マイメロ女神様。」
「これは私達がお持ちしましょう。」
 そう云って、アイオロスがニケを、サガが盾を手に取ります。
「ありがとー。」
 マイメロちゃんはよっこいしょと立ち上がると、改めて皆に向き直りました。
「じゃあ、冥界行くよー。皆、マイメロと一緒に、地上の愛と平和のために闘ってね。おねがいv」
 
 こうして、女神の聖衣に身を包んだマイメロちゃんを先頭に、聖戦の火蓋が切られたのでした。
   
2008/02/29 






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