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ハロウィンです。 聖域ですが、ハロウィンはします。 だって、女神であるマイメロちゃんの「ハロウィンがしたいの。おねがいv」というお言葉に、逆らえる聖闘士など存在しません。 聖闘士から雑兵に至るまで、一気にハロウィンの準備に突入です。 もちろんカノンちゃんも全力で乗り気です。カノンちゃんはちくちくと、マイメロちゃんのハロウィン衣装を縫っていました。 マイメロちゃんはお菓子作りに熱中しています。 サガちゃんやアイオロスさん、その他の黄金聖闘士さん達には大きなオレンジ色のかぼちゃが配られ、皆さんランタン作りに一生懸命。お菓子の準備も欠かせません。 その他の聖闘士達や雑兵達にも、小さめのかぼちゃが配られました。 なので今は聖域のどこに行っても、誰かがかぼちゃを彫っているのです。きっと当日には、様々愉快な顔のかぼちゃランタンが、聖域中に飾られるでしょう。 とても楽しみです。
そして当日。 マイメロちゃんの御衣装は、オレンジのカボチャの帽子に同じくカボチャのぱんつ、こうもりのような黒い大きなマントです。 「いかがですか、マイメロちゃん。」 「ありがとー、カノンさん。とってもかわいー。」 「マイメロちゃんの可愛さにはこの世の何もかないません。」 「やーん、カノンさんたらお上手ね。カノンさんもとっても可愛いわ。」 「えへへ、ありがとうございます。」 カノンちゃんの頭にも、マイメロちゃんと同じオレンジのカボチャの飾りが。髪の毛の横のところをちょっと取って、そこに結びつけてあります。 マイメロちゃんとカノンちゃんがじゃれていると、アイオロスさんとサガちゃんが、準備完了の報告をしにきました。 「おや女神、大変にかわいらしいですね。」 「わあカノン、とっても可愛いー。」 愉快な教皇のアイオロスさんは素直にマイメロちゃんを褒め、サガちゃんは弟一筋でした。 「見て見て、カノンさんとおそろいなの。」 「よくお似合いですよ。」 「いいなー、カノンとお揃い。」 「いやそこは女神とおそろいに羨め。」 そうやって騒ぎながらも、カノンちゃんは事前に予測して、更に小さなかぼちゃをつけたピン留めを、サガちゃんの髪につけてあげました。 「アイオロスには後でな。」 黄金聖闘士のみんなにも、小さなかぼちゃのマスコットのついたキーホルダーをカノンちゃんは用意しています。後でマイメロちゃんのお菓子と一緒に配らせてもらう予定なのです。 「じゃあ、後でな、サガ。」 「いってきまーす。」 カノンちゃんはマイメロちゃんと、マイメロちゃんの作ったお菓子がたっぷりの籠を持ちました。カノンちゃんは女神のお世話係なのですから、当然マイメロちゃんのお伴として、一緒に聖域を回るのです。 まずは12宮を出て、下位の聖闘士や雑兵のところから、お菓子を届けに行きます。 「おまえがいないと淋しいよ、カノン。早く私のところに帰ってきてね。」 「はいはいはいはいはい。」 「お菓子、期待していますよ。」 相変わらず弟べったりなサガちゃんと、にこにこアイオロスさんに見送られ、カノンちゃんとマイメロちゃんは、階段を下りていきました。
カノンちゃんに抱っこされたマイメロちゃんは、まずは12宮から下りて、白銀や青銅の聖闘士さんや、雑兵さん達にお菓子をあげに行きました。 「ト、ト、トリックオアトリート!」 「いたずらしちゃ、やーんv」 手製のかぼちゃランタンを突き出して、一生懸命叫ぶ皆さんに、マイメロちゃんは可愛くはしゃぎながら、一人ずつにお菓子をあげました。 女神様にいたずらかお菓子かと叫んだり、手ずからお菓子を渡されたりと、嬉しさや照れに真っ赤になっている人達もたくさんいて、マイメロちゃんはそのたびに、カノンちゃんと顔を合わせてきゃっきゃと笑っていました。 全員にお菓子を配り終わったら、さあ、12宮突破です。 まずは白羊宮から順番に。目の上に小さい丸い穴が空いているかぼちゃとともに、牡羊座のムウがお出迎えです。 「ムウー、トリックオアトリートー。」 マイメロちゃんはにこにこしながら、ムウにそう云いました。 「トリック。」 「えー。」 「さあどうぞ、悪戯なさってくださいませ。」 「やーん。」 「ムウ……、マイメロちゃんが困ってらっしゃるぞ。」 「ふふふ。冗談ですよ。……さあどうぞ、女神。」 「わーい。」 あんまり冗談には見えませんでしたが、マイメロちゃんは喜んでムウからお菓子を受け取りました。 「女神、トリックオアトリート。」 「じゃあ、トリックv」 「では遠慮なく。」 ムウは恐ろしい手つきで指をわきわきとさせました。 「ぎゃああああ、ちょっと待てちょっと待てムウ!」 むしろカノンちゃんの方がびびりまくりでしたが、マイメロちゃんはひたすら楽しそうにはしゃいでいました。 「どうしたの、カノンさん?」 「い、いえ。それよりほら、マイメロちゃんが一生懸命お作りになったお菓子、ムウにもあげないと可哀想ですよ。」 ムウは一瞬残念そうな顔をしました。どうやら本当に、マイメロちゃんにいたずらしたかった模様です。いえ、聖衣の修復人であるムウは、生きて動くぬいぐるみであるマイメロちゃんの構造に、興味津々なのかもしれません。 「ああ、そうね。あのね、マイメロ、おいしいお菓子作ったの。ムウも食べてね、おねがいv」 けれどマイメロちゃんはもちろん気付く筈もなく、カノンちゃんが持っていた籠の中から、ムウの分のお菓子を取りだしました。 かぼちゃのシフォンと紫いものタルト、それから、各星座のマークの入ったクッキーの詰め合わせです。 「ありがとうございます、マイメロ様。」 ムウはそれをありがたく受け取りました。 「これは俺からです。」 それから、カノンちゃん手製のかぼちゃマスコットも貰います。 「じゃあ、夕御飯は皆で女神神殿でねv」 黄金聖闘士達には、更にディナーのお約束もあります。 マイメロちゃんはぶんぶんとムウにおててを振ると、カノンちゃんに抱っこされたまま、次の金牛宮に向かいました。 こうやってひとりひとりと楽しい会話を交わしてお菓子の交換をしながら、マイメロちゃんは12宮を上っていきます。 個性豊かな黄金の面々も、可愛い可愛いマイメロ女神様との交流が大好きです。いただくお菓子だって、聖域に住む者みんなの、すてきなすてきな大好物です。 聖域のハロウィンは、マイメロちゃんが作る甘いお菓子の香りに包まれているのでした。
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2009/11/03 |
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