「弟子ですっきり!?」
おねがいマイメロディすっきり + カノンちゃん
注)このお話は、日記に載せた後、手直しして同人誌「メロディマーク」にも掲載しています。この後の話と繋がってるような繋がってないような。
それは、風がとても強い日のことでした。
カノンちゃんは風に乱される髪の毛を押さえながら、双児宮へ帰ってきました。
「やーーーん。」
上空から、可愛らしい声が聞こえました。
何かと思って空を仰げば、壊れた小さな傘が飛んでいくのが見えます。
いえ、傘だけではなく、ピンクと白の何やらもふもふしたものも一緒です。
カノンちゃんはぴょーんとジャンプをすると、その飛行物体を捕まえました。
「え、え、え、何これっ。」
それは、ピンクの頭巾を被った可愛いうさぎのぬいぐるみさんでした。
けれどただのぬいぐるみさんではないことは明白です。
ピンクの頭巾のうさぎさんは、白目をむいてぷるぷるし、半分意識を飛ばした様子で、言葉にならないへにょーとした感じの声をあげているのです。
よく判りませんが、とにかく生きているらしい、不思議な可愛いぬいぐるみさん。
カノンちゃんは大慌てで双児宮の中に駆け込み、ぬいぐるみさんの介抱をするのでした。
「こんにちは。わたしはマイメロディです。マイメロって呼んでね。」
すぐに意識を回復したぬいぐるみさんは、カノンちゃんを見ると、可愛い笑顔で御挨拶をしてくれました。
「こんにちは、俺はカノンです。どうぞよろしく。」
カノンちゃんも笑顔でマイメロちゃんに答えます。
そんなカノンちゃんを、マイメロちゃんはちょっと不思議そうに見つめました。
「カノンさんは、マイメロが喋ってても驚かないの?」
「俺、不思議なことには慣れてるから。」
にっこり笑うカノンちゃんに、マイメロちゃんもにっこりと笑い返します。
「それに、マイメロちゃん、とっても可愛いんだもん。お話できて、俺嬉しい。」
「やーん。」
マイメロちゃんは照れた様子で可愛く笑いました。
「マイメロも、カノンさんとお話できて嬉しいな。」
「わーい。」
カノンちゃんも照れながら、満面の笑顔です。
可愛いのが2人仲良く、ほんわかした状況ではありますが、お互いに色々と聞きたいこともたくさんでした。
「ここはどこ?」
「ギリシャの聖域だよ。」
「マイメロ、ギリシャってわからないー……。」
マイメロちゃんの長いお耳がぺたんと垂れてしまうのを見て、カノンちゃんは慌てます。
「マイメロちゃんちがどこだか知らないけど、俺が絶対送ってあげるから!」
光速で移動できるカノンちゃんにとって、場所さえ判れば移動は一瞬です。
「マイメロね、黒音符を見つけて追いかけようとしたら、強い風さんが吹いて、飛ばされちゃったの……。」
日本の夢ヶ丘からギリシャの聖域まで、どうやったら飛んでこれるのかという話はこの際無視です。
「黒音符って何?」
「それはねー。」
黒音符とは、ダーちゃんことダークの精の残りかすです。黒音符に取り付かれた人はぷんぷんになってしまいます。
それをすっきり♪ させるのが、今回のマイメロちゃんのお仕事です。
すっきりした人はきらきら玉を出してくれます。それをたくさん集めてティアラを一杯にすると、マイメロちゃんはマリーランドのプリンセスになれるのでした。
「へー、マイメロちゃん、すごーい。がんばってな。」
「うん、マイメロがんばる。」
カノンちゃんの賞賛に、マイメロちゃんもマイメロちゃんなりに多分力強く答えましたが、でも、たくさんお話したので、ちょっと疲れてしまった様子です。
「紅茶が飲みたいなー。」
ため息のように呟いたマイメロちゃんの言葉を、カノンちゃんは敏感に聞き取りました。
「マイメロちゃん、紅茶飲めるのか?っていうか、食事できるんだ!すぐ入れてくるからちょっと待ってて!」
「はーい。」
カノンちゃんは大急ぎで、台所にダッシュしました。
「はー、紅茶がおいしーv」
満足そうなマイメロちゃんに、カノンちゃんは嬉しくてたまりません。
「俺の彼氏が紅茶好きでさ、おいしい入れ方教えてもらったんだ。」
「そう。素敵な彼氏さんね。」
「うん!すっげー素敵!」
大好きなラダさんを可愛いマイメロちゃんに褒めてもらって、カノンちゃんはますますにこにこでした。
「このクッキーも、とってもおいしー。」
「それは俺の兄貴の彼氏が作ったの。」
そんなふうに、カノンちゃんとマイメロちゃんは、しばらく和やかにお茶と会話を楽しんでいたのですが。
「……っくしゅん。」
突然気温が下がってきて、マイメロちゃんがくしゃみをしました。
「な、何だ、寒いな。」
カノンちゃんも、半そでのスニオン服から出ている自分の腕を擦ります。
ふと見れば、ドアの下の隙間から、白っぽい煙のような凍気が入ってくるのが見えました。
凍気と云えば、水瓶座のカミュです。
そして、聖域の小宇宙を探ってみれば、なにやらあやしい気配がぷんぷんとしていました。
「マイメロちゃん、何か変だから、俺ちょっと様子見てくる。」
「やーん、マイメロも行くー。」
カノンちゃんは一人で行こうとしましたが、マイメロちゃんにねだられて、一瞬迷った後そのもふもふの体を抱き上げました。
「わー、マイメロちゃんって気持ちいいー。」
思わずお顔を擦り付けてしまうと、マイメロちゃんもカノンちゃんと一緒に笑ってくれましたが、しかし和んでいる場合ではありません。
カノンちゃんはマイメロちゃんを抱っこして双児宮を出ました。そして階段を登っていこうとして、何の気なしに12宮を見上げますと。
「…………………………。」
「わー。」
巨大化したカミュが、口から凍気を吐いて暴れていたのでした。
「弟子に会いたいぞー、ぷんぷーんー!!」
カミュが怒鳴るたびに凍気が巻き散らかされ、12宮の建物がどんどん凍り付いていっています。
「あの人に、黒音符が取り付いちゃったみたい……。」
あらら、と、マイメロちゃんが呟きました。
そう、風に飛ばされてきたのは、マイメロちゃんだけではなかったのでした。
日本の夢ヶ丘からギリシャの聖域まで、どうやったら飛んでこれるのかは以下略。
「と、とりあえず、宝瓶宮まで行こう!」
カノンちゃんはマイメロちゃんを抱っこしたまま、急いで階段を駆け上っていきました。
光速を出さないのは、マイメロちゃんを気遣ったのもありますが、階段がすっかり凍り付いていて、ずっこけた時が怖かったからです。
「カミュー、カミューっ!」
「頼む、落ち着いてくれ、カミュ!!」
たどりついた宝瓶宮では、カミュの親友であるミロと、カミュの恋人であるシュラが、髪やら腕やらを霜で真っ白にしながらも、必死に呼びかけていました。
「もう一週間も弟子に会っていないのだ、ぷんぷーんー!!」
しかし巨大化したカミュは、すっかりぷんぷんに取り付かれていて、二人の叫びを全く聞いてはおりません。
カノンちゃんは、自分の出番だと張り切りました。
「マイメロちゃん、何とかしよう!」
「はーい。」
マイメロちゃんは、カノンちゃんの腕から飛び降りると、ピンクの頭巾の中からハイパーメロディタクトとメロディクレヨンを取り出しました。
そして、カノンちゃんの似顔絵を描いたカードをハイパーメロディタクトに差し込みます。
「メロディーマーク!」
マイメロちゃんは、可愛いお耳をたゆんたゆんさせながら、タクトで空中に模様を描きます。
「ばっちり にっこり すっきりー!」
カノンちゃんの姿が一瞬消えて、すぐに戻ってきました。
その額には、マイメロちゃんが飛ばしたピンクのハートが描かれたシールが、誇らしく張り付いていたのでした。
そう、今回は、カノンちゃんがお助けキャラなのです。
「カノンさん、おねがいv」
マイメロちゃんはすかさず、パワーアップのおねがいをしました。
マイメロちゃんの回りに飛び交うピンクのハートと、何より可愛いその笑顔と仕草に、カノンちゃんのほっぺがぽわんと染まります。
「よっしゃあ、やるぜ!」
女神の力とはまた違う、不思議なパワーに満たされたカノンちゃんは、最大限に小宇宙を高め、大きな大きな三角形を空中に作り出しました。
「超特大ゴールデントライアングルスペシャル!!!」
いつの間にか必殺技をバージョンアップさせたカノンちゃんは、気合満点、その三角形の中に両腕を突っ込みます。
「うぉりゃあああ!」
そして、異空間の中から腕を引っ張り出すと、その両手には、キグナス氷河ちゃんと、クラーケンのアイザック君が、ひっつかまれておりました。
「ここ……どこだ?」
「え、カノン!? あれは……カミュか!?」
氷河ちゃんもアイザック君も、何が起きたのか判らず、びっくり仰天しています。
「カミュ、弟子だぞー!!」
カノンちゃんが大きな声で叫んだ言葉に、カミュさんが反応します。
「弟子はどこだー、ぷんぷーん!!」
「せーのっと!」
そしてカノンちゃんは、両手につかんだ氷河ちゃんとアイザック君を、カミュさんに向かって思いっきり投げつけました。
「我が弟子!」
カミュさんは、二人をキャッチして、思い切り抱きしめました。
「我が師!?」
「カミュ!?」
ますます目をまんまるくしている弟子2人ではありましたが、いとしい弟子に会えたカミュさんは、ぷんぷんが解消された模様です。
「すっきり〜♪」
すっきりしたカミュさんから魔法が解け、凍りついた12宮が元の姿に戻りました。
「氷河、アイザック! 我が愛しの弟子達よ!!」
「カミュ!」
「我が師!」
シベリア師弟3人は、涙を流しながらむぎゅむぎゅと抱き合っています。
驚いていた弟子達も、今は師との再会に、素直に感動することにしたようです。
疲れきって、ぐったりと膝をついてしまった、シュラとミロにはお気の毒様でした。
「きらきら玉だー。」
「へー、綺麗だな。」
カミュの体から出てきた、浄化された黒音符は、美しく輝くきらきら玉となってマイメロちゃんのメロディボックスの中に入り、プリンセスのティアラの飾りのひとつとなりました。
「ありがとー、カノンさん。」
「ううん、俺も、マイメロちゃんの役に立てて嬉しい。」
お礼を云うマイメロちゃんに、カノンちゃんはふるふると首を振ります。
そして、カノンちゃんはマイメロちゃんを抱き上げ、2人揃って声をあげて笑ったのでした。
上手じゃなくてごめんなさい♪
だけど読んで〜♪ (←待て)
2007 6/16