カノンちゃんとマイメロちゃんとウソップとサガちゃん 2 | |
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海底神殿は不思議なところ。 カノンちゃんは不思議なひと。 マイメロちゃんは不思議なぬいぐるみです。 おまえの世界を探すから、と、カノンちゃんが何かやっている間に、マイメロちゃんが海界を案内してくれました。 海の底にあるというこの場所は、天まで届く8本の柱が聳え立ち、海の空の中へと消えています。 とても綺麗なところですが、ウソップはサニーが恋しくてなりません。 ウソップは、カノンちゃんとマイメロちゃん相手に、自分の世界と、麦わら一味の話をたくさんします。 カノンちゃんもマイメロちゃんも、ウソップのお話を、ルフィやチョッパーにも負けないくらいお目目をきらきらさせて聞いてくれました。 「ウソップはすごいんだな!」 「ウソップくんすごぉーい。」 なので麦わら一味冒険譚も、キャプテンウソップ冒険譚も、どんどん話が膨らむというものです。 そんなふうに楽しく数日を過ごしましたが。
「……ウソップおまえ、どこから来たんだよほんとに……。」 カノンちゃんはものすごく一生懸命ウソップの世界を探していたのですが、なかなかそれらしいところにさえぶつからなくて、ぐったりしていました。 異空間を扱えるカノンちゃんではありますが、ウソップの世界は本当にここから遠いところにあるようです。きっとお互いの世界は、積み重なったパラレルワールドの、あっちの方とこっちの方にあるに違いありませんでした。 「……おれ、帰れないのか?」 弱音を吐くカノンちゃんに、ウソップも不安になってしまいます。 「いや。絶対探す。何としても探す。海界に来ちまった奴らの責任は、全部俺にあるからな。」 カノンちゃんはウソップのくせ毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら云いました。 「カノンさん! がんばってウソップくんのお船を探してね。おねがいv」 マイメロちゃんも、おつかれの様子のカノンちゃんをはげまそうと、可愛らしくおねがいします。 「ありがとうマイメロちゃん、俺がんばる!」 カノンちゃんはマイメロちゃんを抱っこしてほっぺにひとしきりすりすりすると、意を決して、聖域に連絡をとりました。 「助っ人頼んだから。迎えに行ってくる。」 そう云って出かけていったカノンちゃんが連れてきたのは、カノンちゃんと瓜二つの男の人でした。 「わーい、サガさんだーv」 「こんにちは、マイメロさん。……と……、タツノオトシゴさんかな?」 「違うわ!!」 カノンちゃん一人でもものすごいのに、サガちゃんと二人並ばれたら、もう目がくらみそうなほどです。 けれどもサガちゃんがカノンちゃんと同じようなことを云うものですから、ウソップは思わず突っ込まずにはいられませんでした。 「こいつ、サガ。」 「双子の兄です。」 カノンちゃんとサガちゃんはにっこり。 「見れば判ります……。」 てゆーか、ここまで瓜二つの双子を見るのはウソップも初めてです。 呆然とするような容姿に、そこだけは僅かに印象の違う空の色の瞳、並んで立っている髪先が混じり合い、どこからどこまでがどちらの髪なのか、判らない程に入り混じっていました。 サガちゃんはウソップを、興味深そうに見つめます。 何だかウソップは、顔が赤くなってしまいました。 「とても素敵な鼻だね。さわらせておくれ。」 サガちゃんはウソップの鼻を人差し指で押し下げ、ぱっと離して、びよんびよん揺れるのに楽しそうにしています。 「……あのー、楽しいですかー。」 「とても楽しいよ。」 サガちゃんの笑顔は、光が零れているかのようです。 カノンちゃんやマイメロちゃんの、心底楽しそうな無邪気な笑顔とはまた違う、深々と楽しんでいる御満悦の微笑みです。 今度は上に押し上げてびよんびよん。もちろん左右にもびよんびよん。 サガちゃんの笑みは一層深くなりました。 その笑顔の理由が、ウソップの長い鼻を揺らして楽しんでいる、というのは、果てしなく微妙な気持ちではありますが。 けれどもサガちゃんの微笑みは本当に芸術品のように美しく、ウソップは何だか声が出せません。 カノンちゃんとサガちゃん、どこからどうみても毛一筋ほども変わらないように見えるのに、カノンちゃんと一緒ならばともかく、何故かサガちゃん単品には突っ込めない雰囲気でした。 ウソップの鼻にふれる白い指先までが美しく整い、息を飲むような迫力です。 「サガ、そいつの鼻揺らし終わったら、頼むな。」 「はーい。もう少し堪能させてね。」 「おう、ごゆっくり。」 「じゃあマイメロ、その間に紅茶入れてくるねー。」 「あ、お手伝いするよ、マイメロちゃん。」 サガちゃんカノンちゃんマイメロちゃん、3人揃って、恐ろしいほどのマイペース集団です。 しかし間近にあるサガちゃんの美貌には、ウソップの唇もどうしても固まりがちで。 飽きずにウソップの鼻を揺らして弾いて楽しむサガちゃんが満足するまで、カノンちゃんとマイメロちゃんは、ほっこりとティータイムを楽しんでいました。
ウソップの右にいるのがカノンちゃん、左にいるのがサガちゃん。……だったような気がします。 海水を浅く引き込んである場所に浸からされ、ウソップは手を合わせたサガちゃんとカノンちゃんの間にちょこんと座らされていました。 海水は冷たくないし、ウソップだって海の男ですからそれはまあいいのですけれども。 向かい合ったてのひらとてのひらをくっつけ、両手を握り合ったカノンちゃんとサガちゃんは、ウソップの故郷探しに一生懸命でした。 カノンちゃんは精一杯異空間に小宇宙を伸ばし、サガちゃんはカノンちゃんに小宇宙を流し込んで力を分けながら、精神を繋ぎ止める命綱のような役割もしています。 3人で海水に浸かっているのも、海闘士であるカノンちゃんの小宇宙を最大限に利用するために他なりません。 けれどもそんな、精神世界的な作業はウソップには理解できませんので、どっちを向いてもおんなじ綺麗な顔があるというこの状況に、ひたすらどきどきしていました。 「君は、自分の世界のことを考えていなさい。それが少しは私達の手伝いになるからね。」 そう云ったのは、多分サガちゃんの方でしょう。 「カノンさんがんばれー。サガさんもがんばれー。」 マイメロちゃんはそんな二人を可愛く応援です。 サガちゃんにはともかく、カノンちゃんにとっては、可愛いマイメロちゃんの可愛い応援は、ものすごくパワーアップになりました。 「ごはんできたよーぉ。」 マイメロちゃんは御飯作りでも、カノンちゃんとサガちゃんをサポートです。 おいしいおいしいマイメロちゃんの御飯は、疲れたカノンちゃんのこともとても元気にしてくれます。 サガちゃんもマイメロちゃんの御飯はお気に入り。 ウソップもマイメロちゃんの御飯をとてもおいしいと思いましたが、でもそろそろ、サンジの御飯が恋しくてたまらなくなっていました。
それからまた2日ほど。 「見つけた!」 突然カノンちゃんが叫びました。 ようやく、ウソップの世界を見つけたのです。 こういう時のサガちゃんとカノンちゃんの間に言葉は必要ありません。 「シードラゴン!」 カノンちゃんは自らの鱗衣を呼び、サガちゃんは繋げた空間を固定して開きました。 「元気でね。」 海龍の鱗衣を装着したカノンちゃんがウソップをマントに包み込み、意識を失わせる寸前、サガちゃんがそう声をかけました。 サガちゃんはウソップの鼻がとてもお気に入りだったのでした。 「飛ぶぞ!」 「気をつけて。いってらっしゃい。」 開けた空間に飛び込むカノンちゃんを、サガちゃんは手を振って見送りました。
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2010/02/19 |
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