マイメロちゃんがサニー号にいたら 1 

 今日もサウザンドサニー号は、どんぶらこと海を進んでいます。
「おーい、何か桃色のものが飛んでくるぞー。」
 展望台でトレーニングがてら見張りをしていたゾロが、拡声器で呼びかけました。
 甲板にいた皆が空を見ると、確かに、何か飛んできます。
「おー、何だあれー。ゴムゴムのー。」
 ルフィはわくわくと腕を回し、ゴムの腕を思いっきり伸ばして、そのピンクの物体を捕まえました。
「やーーーーーーーーーーーーん。」
 腕を元に戻したルフィのつかんでいるものを、ナミがひょいと覗きこみました。
「えー、何よこれ、……ぬいぐるみ?と、傘?」
「おー、うさぎだー!なあサンジ、うさぎの丸焼き食いてー。」
 ナミは首を傾げ、ルフィは目をきらきらさせます。
「だから、ぬいぐるみだってば――。」
「やーんやーん。マイメロ食べられちゃうー、やーん。」
 ぬいぐるみを食べるなと、ナミが怒ろうとした瞬間、ルフィの手の中のぬいぐるみが、じたばたと体を動かし、可愛らしい声を出しました。
「あら、生きてるのね。」
 ロビンはいつも冷静ですが、ウソップやチョッパーは、ぬいぐるみが喋ったー、と、大騒ぎで周囲を駆けずり回りました。
 ゾロも見張り台からおりてきましたが、どんなにあやしい存在でも、相手が小さなぬいぐるみでは剣を向けることもためらわれ、眉をひそめて見つめています。
 騒ぎを聞きつけて、フランキーとブルックも様子を見に来ました。
「ヨホホ、こんにちは、可愛いお嬢さん。」
 ブルックがひょいとシルクハットを外して挨拶すると、ぬいぐるみもぴょこんと頭を下げました。
「こんにちは、わたしはマイメロです。」
「これは御丁寧に、私は死んで骨だけブルックです。よろしければぜひパンツを見せていただけませんか?」
「やーん、マイメロ、パンツはいてなーい。」
「セクハラはよさんか!」
 ガイコツとぬいぐるみの非常に可愛らしい光景でしたが、ナミのゲンコツがブルックの頭に落ちました。
「あなた、何?マイメロって云うの?悪魔の実の能力者?」
「うん、マイメロだよ。悪魔の実ってなぁに?」
 しゃべって動くぬいぐるみ、マイメロちゃんは、悪魔の実の能力者ではありません。
 ぬいぐるみの国、マリーランドからやってきた、可愛い可愛いうさぎさんです。
 マイメロちゃんは軽いので、強風に飛ばされて、海まで来てしまったのです。
「じゃあお前、生きてるのか。すげーなー。」
 ルフィは珍しい生き物に、お目目がきらきらです。
「マイメロ、お前、俺達の仲間になれ!」
「はーい。」
 ルフィの誘いに、マイメロちゃんはおててをあげて、元気にお返事しました。
 さあこれで、マイメロちゃんも、海賊の仲間入りです。
「…………いいのかな、あれ。」
「まあいいんじゃないのか、害もなさそうだし。」
「可愛いお仲間が増えてうれしいわ。」
 などと。
 楽しそうなルフィとマイメロちゃんの姿に、他の皆はこそこそと話していましたが、実際とても可愛いので、反対の声は特にありません。
「おーい、おめーら、何騒いでんだ?」
 そこに、今まで料理で手の離せなかったサンジが、やっと甲板に出てきました。
「おうサンジ、新しい仲間のマイメロだ。」
「マイメロでーす、よろしくー。」
 ルフィはマイメロちゃんを手のひらに乗せて、サンジに見せます。 
 サンジはまじまじとマイメロちゃんを見て、それから、その目が突然、ハートマークになりました。
「これはこれはお美しいレディだ。可愛いなあ、マイメロさん。まるでこの世に舞い降りた、ピンクの天使のようだ。」
 サンジはメロメロと、マイメロちゃんを口説き始めます。
「きゃっ、お上手ね。」
 マイメロちゃんはうふふと笑って、その笑顔の可愛さに、またサンジがひとしきり騒ぎます。
「サンジって、本当に女なら何でもいいんだな……。」
 ウソップがそれを見て小さく呟きましたが、隣にいたロビンが、あら、とその発言を咎めました。
「だって彼女、本当に可愛いわ。私、仲良くなれるかしら……。」
「ああ、大丈夫さ。ほら、サンジに独占させとかないで、行ってこい、ロビン。」
 ロビンが可愛い物好きなことを知っているウソップは、もじもじしている彼女の背中を押してあげました。
「にしししし。」
 にぎやかなクルー達と、新しい仲間に、ルフィはとても満足そうです。
 こうして、麦わら海賊団に、可愛い可愛いマイメロちゃんが、加わったのでございます。 
  
2008/05/13 






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