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今日はいいお天気ですが、ちょっぴり肌寒いです。 「ゾロくーん。こんなところで寝てたら、風邪ひいちゃうよぉー?」 それなのに、甲板の端でゾロがお昼寝をしているものですから、心優しいマイメロちゃんは、心配になって声をかけました。 「あー、だいじょぶだいじょぶ。ゾロは真冬でも風邪なんてひかねーから。」 そんなマイメロちゃんに、近くでウソップ工場支店を開いていたウソップが教えてあげます。 「ま、伊達に鍛えてるんじゃねーってことよ。」 「へー、ゾロくんすごぉーい。」 「馬鹿は風邪をひかないとも云うがな。」 「ありゃま。」 そういうウソップの方も、素肌にオーバーオールの微妙に寒そうな格好ではあるのですが。 「マイメロこそ、寒いんじゃねーのか?風邪ひく前にあったかくしてろよな。」 「はーい。ありがと、ウソップくん。」」 ウソップの優しい言葉に、マイメロちゃんは元気よくお返事しました。 そしてマイメロちゃんは、寝ているゾロの脚に乗り、腹巻に手をかけ…………腹巻の中にちょこんと潜り込んだのでありました。 ゾロの緑の腹巻の色と、マイメロちゃんの頭巾の可愛いピンクが、意外とよく調和します。ピンクのお花に緑の葉っぱの色と思えばそれは確かにそうなのですが。 腹巻から頭と腕だけ出した状態で、マイメロちゃんは、にっこりと笑いました。 「わーい、あったかーい。」 えへーと笑う表情はとってもとっても可愛くて、ウソップもうっかり、一緒ににっこりしてしまいましたが。 何だかものすごく色々と、間違っているような気がしなくもなかったのでございます。
その後マイメロちゃんは、すっかりゾロの腹巻が気に入ったらしく、良くその中に潜り込んで一緒にお昼寝をしていました。 ゾロの方も、マイメロちゃんがそこに入ってくることは全く気にならないらしく、それどころかむしろ心地良さそうに寝ています。きっと、マイメロちゃんの暖かさがお気に入りなのでしょう。 先日、海が荒れた時などは、自分から揺れる船の上でふらつくマイメロちゃんを拾い上げて、腹巻の中に保護をしていたくらいでした。 元々小さいものには優しいゾロですし、マイメロちゃんも、ゾロを怖がることなく最初からよく懐いていました。それに、可愛い可愛いマイメロちゃんのことを、サニー号の誰もが大好きです。 なので、サンジが麗しのレディと密着しているゾロを怒ったり、ロビンがうらやましがって私も腹巻をしようかしらと呟いていたくらいで、微笑ましく見守られていました。 あ、いえ、もう一人、ちょっとおもしろくなさそうな人がいました。 チョッパーです。 彼もゾロによく懐いていて、時々はゾロのお膝で一緒にお昼寝などを楽しんでいたのですが、膝よりもっと密着の深い腹巻の中をマイメロちゃんに占領されて、ゾロを取られたようでちょっぴり淋しく思っていたのです。 もちろんチョッパーも、自分より小さなマイメロちゃんが仲間になって、初めてのお兄さん気分を味わったりもしてはいたのですが。 それはそれ、これはこれ。ちょっぴりつまらないような気分があったりなかったりしていたのです。 「あ、チョッパーくん、今日は寒いねぇ。」 近くを通りがかったチョッパーに、マイメロちゃんが気付いてぶんぶんと手を振りました。 今はまだ入っただけで、眠ってはいなかったのです。 「あ、ああ、そうだな。マイメロも体調には気を付けて――……」 「チョッパーくんも、一緒に入ろ?」 医者らしいことを云おうとしたチョッパーに、マイメロちゃんはにっこり笑って、ゾロの腹巻を引っ張りました。 「とってもあったかいよぉ。はい、マイメロ、詰めてあげるね。」 マイメロちゃんはよいしょよいしょと、ゾロの腹巻の中で片側に寄ります。 「チョッパーくんはマイメロより大きいのよね。これで入れるかなあ?」 マイメロちゃんの笑顔は可愛くて純粋で。 チョッパーがふと我に返った時、彼もマイメロちゃんと一緒に、ゾロの腹巻の中に収まっていました。 「わーぁ、チョッパーくんもふもふー。きもちいいー。」 マイメロちゃんは嬉しそうに、チョッパーの毛皮に顔を埋めたりしてきます。 「はー、マイメロ、きもちよくて眠くなっちゃったー……。」 ひとしきりチョッパーの毛並みにすりすりしたマイメロちゃんは、紅茶を飲んだ時のような幸せそうなため息をついて、そのままくーと寝入ってしまいました。 「……そーだな、気持ちいーなあ……。」 そんなマイメロちゃんの寝顔と、チョッパーの頭の後ろから聞こえてくるゾロの寝息。 風は少し冷たかったけれど、隣のマイメロちゃんも、ゾロの腹巻の中もとてもとても暖かくて。 チョッパーも2人につられるように、心地よい眠りの中に落ちていったのでありました。
「……何だこりゃ。」 そろそろ夕飯が近いので、ゾロを起こしにきたウソップは、困惑して呟きました。 ゾロの腹巻の中に、マイメロちゃんとチョッパーが入って、すやすやと寝ています。 マイメロちゃんが良くそこに入っているのは知っていましたが、こんな時間まで寝ていたことは今までなく。 そして更にチョッパーまで入っていることに、ウソップはびっくりしていたのです。 「あー、おい、助けろ、ウソップ。」 どうやらゾロは少し前から起きていたようで、そして、腹巻の中で眠りこんでいるマイメロちゃんとチョッパーを起こすに起こせなくて、困っていたようでした。 ゾロは顔は怖いけど、根はとても優しいのです。 ウソップはゾロのとなりにしゃがみこみ、ちょいと腹巻を引っ張りました。 「伸びるぞ。」 「いや、まあ……たぶん平気だろう。」 苦笑するゾロの腹巻を、更にウソップは引っ張っています。 「何だ。お前も入りたいのか?」 「えええっ、な、何で俺様がそんなところにっ。」 真っ赤になってウソップはうろたえ、それを見たゾロは、本人的には嬉しそうに、傍目から見たら凶悪に微笑みました。 「今更遠慮するな。来い。」 「いやいやいや遠慮しますって。それに絶対伸びる、っつーか、2人で入ったらまず苦しいから!」 「なら、今晩、つけさせてやる。それでいいだろう。」 「……良くねーよ!」 それがゾロなりの、今夜のお誘いだということが、ウソップには判っています。 うろたえるウソップを見てゾロは笑いだし、ウソップはゾロにあれこれ云い返して。 それで、ゾロの笑いの為の腹筋の振動と、ウソップが出してしまった大声のせいで、マイメロちゃんとチョッパーは目をさましました。 「あれー、もう夜ー?」 「あー、すごく良く寝たなー……。」 もぞもぞと目をこすったマイメロちゃんとチョッパーは、あたりが暗くなってきていることにびっくりです。 「ゾロくんの腹巻の中はいつもとってもきもちいいけど、今日はチョッパーくんも一緒だったから、もっと気持ち良くて寝過ぎちゃったみたい……。」 「ああ、俺も、とっても気持ち良かった。また一緒に昼寝しような、マイメロ。」 「うん!」 マイメロちゃんとチョッパーは、まだゾロの腹巻の中に入ったまま目を見交わし、にっこりと笑いました。 この場合、ゾロの意見は無視なのでしょうか。 いえ、ゾロの方も、今日はいつにも増しておなかが暖かく、ぐっすり寝ていたことは確かなのですが。 「さあ、そろそろ夕飯だぜ。手ぇ洗ってこい。」 ウソップがそう云った時、ちょうど、サンジが夕飯だと皆を呼ぶ声が聞こえてきました。 「早く行こう、マイメロ。」 「やーん、チョッパーくん、待ってえぇー。」 チョッパーとマイメロちゃんは、ゾロの腹巻の中から飛び出し、仲良く手をつないで走って行きます。 「俺達も早く行こうぜ、ゾロ。」 立てよと差し出すウソップの手をゾロは握って。 そのまま、前を行く2人のように、仲良く手をつないでダイニングに向かったのでした。
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2008/05/13 |
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