マイメロちゃんがサニー号にいたら 3 

「マイメロは何が得意なんだ?」
 船長さんの質問に、マイメロちゃんは元気よく答えました。
「マイメロは、家事ができるよ。お料理もお掃除もお洗濯もお裁縫もできるから、何でも云ってね。」
 そう、マイメロちゃんは、とっても家庭的な女の子。
 とても小さな体ですが、立派に家事をこなします。
「そっか。じゃあ、マイメロはうちの家政婦だな。」
 早速マイメロちゃんにも、職業名が付きました。
 ただし。
「でもな、うちはサンジがコックだからよ。マイメロは料理以外のところを頼むな。」
「はーい。でも、サンジくんのお手伝いもできるから、いつでも云ってね。」
 そんな優しいマイメロちゃんに、サンジくんはめろめろしていたりもしましたが。
 とりあえず、船の家政婦として働くことになったマイメロちゃん。
「お掃除するよー。どいてー。」
 とか、
「お洗濯するよー。洗うもの出してー。」
 などと、ぱたぱた走り回る小さな姿に、皆は顔をほころばせておりました。
「ナミちゃん、ボタンが取れそうになってる。マイメロがつけてあげるよー。」
「ありがと、マイメロ。ふふ、かわいー。」
 可愛い可愛いマイメロちゃんが、ナミもとっても大好きです。
「マイメロは働き者ね。でも、一人でがんばりすぎないでね。うちの男共、いくらでも好きなだけこき使っていいのよ?」
「大丈夫だよー。皆、優しいから、マイメロのお手伝い、たくさんしてくれるの。」
 そう、小さな体でがんばるマイメロちゃんを見て、誰もが放ってはおけません。
 各自それぞれにマイメロちゃんのお手伝いをしていたので、最近はすっかり、船内もぴかぴかで、男共もマメに服を洗うようになったりしていて、ナミはとても満足しています。
 それに、時々マイメロちゃんが台所を借りて作る料理やケーキが、サンジの作るものとはまた別においしく味わい深く、マイメロちゃんの存在は、だいぶ人数の増えてきた麦わら海賊団に、癒しを添えていたのでした。

 そんなある日のことです。
 夕食の後、一騒ぎ終わった後の食卓で、ルフィがマイメロちゃんに云いました。
「マイメロのメシ、サンジのメシの次だけど、なかなかうめーな。」
 今夜はマイメロちゃんも、サンジと一緒に夕御飯を作ったのです。
「レディの料理に失礼なことを云うな。」
 サンジがむっとして顔をしかめましたが、マイメロちゃんは気にしていません。
 サンジくんはプロのコックさんだし、ルフィはあの早食いの中でも、ちゃんとサンジとマイメロちゃんの味の違いを判って、味わって食べているのですから。
「ルフィくんは、サンジくんの御飯がとっても大好きなのね。」
 にっこり、と笑うマイメロちゃんに、ルフィはおう、と答えます。
「サンジの飯は世界一だぜ!」
「……馬鹿、当然だ。」
 屈託のないマイメロちゃんとルフィの笑顔に、サンジは赤くなった顔を隠すようにそっぽを向きました。
 マイメロちゃんに便乗して、他の皆も口々にサンジの料理を褒めるので、照れた彼は恥ずかしまぎれにルフィを蹴りあげて、洗い場に行ってしまいます。
「やーん、大丈夫ー?」
 床に転がったルフィに、マイメロちゃんは慌てて駆けつけました。
「おう、平気だ。それよりマイメロ。」
「なあにー?」
 突然真剣になったルフィに、マイメロちゃんは首を傾けます。
「あのな、明日の朝メシ、お前一人で作れるか。」
「うん、大丈夫だよ。」
 声を低めてささやくルフィに、マイメロちゃんはこくんとうなずきました。
 ルフィ以上に細かいことは気にしないマイメロちゃんなので、どうして、と聞くこともありませんでしたが、それが返っていいのか悪いのか、ルフィは自主的に云い訳をします。
「あのな、明日はサンジに、朝寝坊させてやりたいんだ。あいつはコックだし、どんな時でも一番に起きるけど、たまにはゆっくり寝かせててやりたくてさ。」
「うん、いいよー。ルフィくんは優しいのね。」
 朝寝坊をさせたい、と。
 言葉の裏を読まないマイメロちゃんは、ルフィの言葉を額面通りに受け取り、にっこりと笑いました。
「マイメロにまかせて!」
「おう、頼んだぞ、マイメロ!」
 マイメロちゃんはぽふんと自分の胸を叩き、ルフィも満面の笑みになりました。
 しかし。
 どうしてルフィがサンジを朝寝坊させたいのか。
 というより、もっと単純に、朝サンジが起きれなくなるようなことをするんじゃないのか。
 何故ルフィがマイメロちゃんにそんなことを頼むのかを、他のメンバーはとても良く理解していましたが。
 それをマイメロちゃんに伝えられる人は誰もいなくて、苦笑したり真っ赤になって逃げ出したりと、それぞれの反応を示していました。
 そして、よりにもよって本人であるサンジが、洗い物の音がうるさく聞こえていなかったのでございます。
 もしルフィのお願いがサンジの耳に届いていたら、見事な足技の数々が見られていたことでしょう。


 その晩ルフィは、翌日サンジが起きれなくなるようなことを、たっぷりと存分に思いっきり致しました。
「マイメロが仲間になってくれて良かったなあ。サンジ、これからも時々は、朝飯をマイメロに頼んで、思いっきりやろうな!」
 そして翌朝、満ち足りた笑顔のルフィの言葉を、完全に腰の抜けたサンジは、蹴飛ばすどころか起き上がることもできずに、ぷるぷると震えて聞くしかなかったのでありました。
 
 マイメロちゃんの作った朝ごはんも、とってもおいしかったですv
  
2008/05/13 






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