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「お願いがあるの。」 ロビンにものすごく思いつめた表情で迫られて、ゾロはとてもびっくりしました。 「こんなこと……、頼んでいいのか判らないのだけれど、でも、どうしても……。迷惑だと思うのだけれど、私……。」 「何だよ、構わねえから云えよ。」 もごもご云ってるロビンを、ゾロは促しました。 今までなら何でも自分で解決しようとして、人に頼ろうとはしなかったロビン。そのロビンがこうして願い事をしようとしてくるのはいい進歩です。 ゾロは自分にできる限りのことなら、何だってしてあげようと思いました。 「あのね、あなたの腹巻を、貸して欲しいの……。」 「………………はぁ?」 思い切ったように告白された言葉に、ゾロは目が点になります。 「一番古いのでいいの、少しの間だけ貸して欲しいの。もし譲ってもらえるようなら、いくらでも払うし、何でもお礼はするわ。……駄目かしら。」 ゾロのびっくりを誤解したロビンは一生懸命に云い添えて、それから、しゅんとなってしまいました。 「……いや、欲しいならやるけど……、どうしたんだ。腹でも冷やしたか。女の……いや、何でもねえ。」 何でロビンが腹巻を欲しいのか。その理由をゾロはない頭で考えて、それからついうっかり、ナミやサンジがいたらセクハラだと大騒ぎされそうなことを考えてしまい、慌てて口をつぐみました。 ロビンは全く気にした様子もなく、首を振ります。 そうして、ロビンは頬を赤く染めながら、ゾロに秘密を打ち明けました。 「違うの。……マイメロが、あなたの腹巻をとても好きみたいだから……。」 ええ、まあ、確かに。マイメロちゃんはゾロの腹巻の中がお気に入りで良く入ってくるし、ゾロもあったかいのでマイメロが暇そうにしているのを見ると腹巻に突っ込んでいます。 どうやらロビンは、それがとても羨ましいようなのでした。 「…………………………ちょっと待ってろ。」 以前よりも随分と明るくなったロビン、その思考はまだ随分暗黒系ですが、それでも少しは良い方向に進んでいる…………のでしょうか? ゾロは男部屋に戻ると、自分の少ない荷物の中から予備の腹巻を取り出し、その中からきちんと洗ってある、なるべく綺麗っぽい1枚を選びました。 そして戻る途中で、ロビンが用があるからとマイメロを拾い、彼女のところへ戻ったのでありました。 「ほら。」 ゾロはまず、腹巻をロビンに投げ渡しました。 「ありがとう!」 とても嬉しそうにロビンは笑うと、腹巻を頭から被りました。 いきなりかよとびっくりしているゾロの前で、よいしょよいしょと体を通して、ロビンは腹巻を装着しました。 「ロビンちゃん、腹巻するの?とっても可愛いわ。」 「あ、あら、……ありがとう、マイメロ。」 それを見ていたマイメロちゃんは、にっこり笑って、ロビンの腹巻姿を褒めます。 「だったら……、あの、マイメロ……、ここに、来てくれるかしら?」 ロビンは照れてもじもじしながらも、思い切ったように、腹巻をひっぱりました。 おなかと腹巻の間の空間を、マイメロちゃんはきょとんと見てから、にっこりと笑います。 「うん!」 そしてマイメロちゃんは、いそいそとロビンのしている腹巻の中に入っていったのですが。 「あう。」 何ということでしょう。 マイメロちゃんの後頭部を、ロビンの大きな胸がむぎゅと押すものですから、マイメロちゃんは首を直角に折ることになってしまいました。 「やーん、ロビンちゃん、首痛いー。」 マイメロちゃんは腹巻の中でぐりっと向きを変え、ロビンの方に向き直りました。 「むぎゅー。」 何ということでしょう。 マイメロちゃんのお顔はロビンの大きな胸に埋まってしまい、窒息寸前です。 「ぷはー。」 もがもがするマイメロちゃんを、ロビンは慌てて引っぱり出しました。 「はふー。ロビンちゃんのおっぱい大きすぎて、腹巻はいれないー。」 大きな胸に押しつぶされて、マイメロちゃんは少々ぐったりです。 ロビンはそんなマイメロちゃんの姿に、とても悲しそうな顔になりました。 「ご、ごめんなさい、マイメロ。……私もあなたを腹巻に入れて歩いてみたかったの。でも、こんな胸……、ただ大きいばかりで邪魔なだけなのに。」 すっかり落ち込んでしまったロビンちゃんを、心優しいマイメロちゃんは、窒息しかけたことも忘れて一生懸命はげましました。 「そんなことないわ。ロビンちゃんのおっぱいはとても大きくて気持ちいいわ。」 「……本当?」 「うん。とってもふかふかで、まふまふしてて素敵よ。」 「マイメロは、私のおっぱい、好き?」 「うん、マイメロ、ロビンちゃんのおっぱい大好き。」 マイメロちゃんとロビンはとても嬉しそうに話していましたが、側で聞いていたゾロは、何だか鼻血でも吹きそうな心境でした。 可愛い可愛いマイメロちゃんと、大人の女性の魅力のロビンが、やたらとおっぱいおっぱい連呼しているのです。 男の恋人がいるゾロではありますが、何だか微妙な気分になってきてしまうのは仕方がありません。 「あのね、小さいおっぱいはちっぱいって云うの。ロビンちゃんのは大きいおっぱいだから、おおっぱいって呼んだらいいんじゃないかしら。」 「うふふ、マイメロったら。」 マイメロちゃんにおっぱいをぱふぱふされて、ロビンはとっても嬉しそうです。 腹巻にマイメロちゃんを入れることのできなかった悲しみも、どうやらなくなったらしいです。 「そうだわ。マイメロ、とってもいいこと思いついちゃった。」 「あら、なあに?」 突然表情を輝かせたマイメロちゃんに、ロビンもつられてわくわくです。 「マイメロ、ロビンちゃんのここに入る!」 マイメロちゃんは、ロビンの服の胸のところをむぎゅと引っ張ると、布と、胸の狭間のところに、正面からうまくすっぽりと入りこみました。 今日のロビンの服は、革製ではなく、やわらかい布のワンピースだったので、マイメロちゃんはいい感じにそこに収まることができたのです。 「わーい、ここ、気持ちいいー。」 「私もとっても気持ちいいわ。マイメロはとてもふわふわね。」 「ロビンちゃんはふかふかよー。」 マイメロちゃんとロビンは、顔を合わせてにっこりしました。 ちなみに、ロビンはノーブラ派です。 マイメロちゃんが入った分、襟ぐりが更に広がり、今にも乳首さんが転がり出しそうなことにはなっていましたが、ロビンからはマイメロちゃんの体が邪魔で自分のおっぱいなど見えていませんでした。 それに何より、マイメロちゃんが胸のところに入ってくれたことが嬉しくて、そんなことはどうでも良かったのです。 腹巻に入れるより、胸に入ってくれた方が、マイメロちゃんとの距離も近くて、ロビンはとても幸せでした。 なので、ゾロが一生懸命顔を背けていることには、ロビンは全く気付かなかったのでございます。 そして、ロビンはそのまま、麦わら一味の皆にマイメロちゃんと一緒の姿を見てもらいに行きました。 うっかり腹巻をしたままだったとかいうのはまだしも、今にもおっぱいが零れ落ちそうになっていることに、クルーの皆を激しくうろたえさせまくったのですが。 天然ボケのロビンは、皆が皆、マイメロちゃんとの密着ぶりを羨ましがっているのだと信じて疑わなかったのであります。 後でナミに知られてこっぴどく怒られてしまいましたが、ロビンは全く懲りていなかったので、これからも頻繁に、ナミの目を盗むことになったのでした。
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2008/10/15 |
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