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とある島でのことです。 買い物に出ていたロビンが船へ帰って来たのを、ゾロは見つけました。 その手には、大きな紙袋を抱えています。 「おかえり、ロビン。」 「ただいまゾロ、あのね、あなたにお土産があるのよ。」 声をかけたゾロに、ロビンは目をきらきらさせながら寄ってきました。 何だかとっても嫌な予感がします。 「はい、これあげるわ。」 ゾロの両肩に咲いた腕が、ロビンの本当の腕が袋から出した何かを受け取ります。 ロビンの肩にも腕が咲き、ゾロの頭とロビンの頭、両方にピンク色の何かをはめました。 「私達、おそろいね。」 にっこり笑うロビンの頭には、ピンクのうさぎの耳のカチューシャ。 自分では見えませんが、ゾロの頭にも同じものがありました。 頭を動かすと、頭上で何かが揺れているのが判ります。 「………………おい。」 「ふふふ、似合うわ、ゾロ。マイメロは帰っているかしら。マイメロ、マイメロ、いる?」 「あー、ロビンちゃん、おかえりなさいー。」 ロビンが船中に目を咲かせようとするより早く、マイメロちゃんがロビンをお出迎えにきました。 「見てマイメロ、どうかしら。」 「わあ、ロビンちゃん可愛いー。あ、ゾロくんもだー。すっごぉーい。」 ロビンの頭、それからゾロの頭で揺れているうさぎの耳を見て、マイメロちゃんはにっこり。 「ふふ、ありがと、マイメロ。たまたま見かけて、どうしても欲しくなって買ってしまったの。」 「素敵よ、ロビンちゃん。マイメロとおそろいね。」 「……………………おい。」 ゾロが低くうなりましたが、マイメロちゃんもロビンも、全然聞いてなどいません。 ロビンがマイメロちゃんを大好きなのは、ゾロも嫌というほど知っています。だから別に、彼女がうさぎの耳のカチューシャをつけて、マイメロちゃんとおそろいを楽しむのは、それはそれで構いません。実際に似合っているし可愛いです。それに、満面の笑顔をロビンが浮かべているのは、とてもいいことです。 でも。 どうしてそれにおれを巻き込むんだよ!!! ――――と、ゾロはとっても頭を抱え込みたい気分でしたが、本当に頭を抱えると、うさぎの耳のカチューシャにふれてしまうので、腕を伸ばしたくない気分でした。 「たっだいまー、皆、もう帰ってる?」 「ナミ、荷物受け取れよ、両手いっぱいで船に上がれねえよ!」 そこに、ナミとウソップが帰って来ました。 途中で一緒になったのか、ナミの荷物をウソップが大量に持たされてよろめいています。 ウソップが困っているようなので、ゾロは急いで荷物を受け取りに行ってあげました。 「わあ、何それロビン、可愛いー!」 「ゾロ、何だよその頭!」 ナミとウソップは、恋人の頭で揺れているピンクの耳を見つけて、大きな声をあげました。 そして、それぞれの言葉が聞こえて、ナミはゾロの、ウソップはロビンの頭も見ます。 「ちょっとお、ゾロあんた、何でロビンとおそろいしてんのよ!!」 ナミはぶるぶると震えながら、怒鳴り声をあげました。 「ゾロ……。」 ウソップは目にいっぱい涙を浮かべて、ゾロから目を反らします。 「お、おれ、男部屋行ってるから……。」 「こら待て誤解するな、おれは好きでこんなもんつけてんじゃねえ!」 ゾロは逃げようとするウソップを慌てて抱きしめました。 「えー、でもゾロくん、とっても似合ってるわ。お耳、すてきよ。」 そんなゾロに、マイメロちゃんはにこにこしながら云います。どうやら今日は、空気が読めなかったみたいです。 「ゾロはやっぱり、おれよりロビンやマイメロの方がいいんだーっ。」 「てめえが一番いいに決まってんだろうが、こら!」 わーんと泣きだすウソップを、ゾロは必死になって宥めるのでした。
「ナミ、ねえ、似合う? お店で見かけて可愛くて買っちゃったの。マイメロの耳とよく似てるでしょう。」 一方ロビンは、とっても御機嫌でナミに耳の自慢をしています。ナミが怒っているのはいつものことなので、全然ロビンは気にしていませんでした。 「ロビン、あんたね………………まあいいわ。」 そしてナミも、ロビンのマイペースとマイメロちゃん大好きぶりはいつものことと、諦めて大きなため息をつきました。 それにどうしてゾロが巻き込まれているのかという問題がありますが、多分ロビンにとってのゾロは、マイメロちゃんファンクラブの同志的存在と、勝手に認識しているのでしょう。困ったものです。 「で、ロビン。私の分の耳はないの?」 ナミがそう聞いてあげると、ロビンの笑顔はますますきらきらになります。 こんなに幸せそうなロビンの笑顔を、いつまでも守りたいとナミは思うのです。たとえそれが、どんなすっとこどっこいな幸せであってもです。 「ナミには違うのがあるの。来て!」 ロビンは嬉しそうにナミをひっぱり、女部屋に向かいました。 「これを着て欲しいの。ナミならサイズ合うと思うわ。私に着れるサイズはさすがに見つからなくて。」 そんなことを云いながら、ナミの体にロビンの腕が盛大に咲き、いそいそと服を脱がせ始めました。 「え、ちょっとロビン、……まあいいけど……。」 何を着せられるのかと戸惑いつつ、無数の腕に操られるようにして、ナミは素直に着替えをしました。 ロビンがナミにと望んだ服は、……ピンクのバニーガール衣装でした。 それは確かに、ロビンは細いけど背が高いので、服の丈が足りないことはよくあります。こういうレオタードのような衣装は、確かにロビンに合うサイズを探すのはたいへんでしょう。 「ナミ、とっても素敵。良く似合うわ。可愛い。」 ロビンはうっとりとナミを眺め、それから、自分の頭につけていたうさぎの耳のカチューシャを外して、ナミの頭につけました。 仕方がないのでナミがポーズを取ってあげると、ロビンは一歩下がってまじまじとナミを眺めてから、ほう、と幸せそうなため息をつきます。 「とても可愛いわ、ナミ。良く似合うわ。素敵な私のうさぎさん……。」 ロビンはとても嬉しそうに、ナミに抱きついてきました。 ナミもロビンを抱きしめ返し、笑い混じりにその耳許にささやきます。 「ねえ、ロビン。うさぎは年中発情期なのよ。知ってる?」 ナミとしては、セクハラじみたいたずらのつもりでした。 けれども。 「知ってるわ、……ナミ。」 ロビンがナミの目をのぞき込んで、甘く低く、ささやいたのです。 ごくん、と、ナミは喉を鳴らしました。 ロビンの目はきらきらしたままですけれども、それは、うさぎの耳のカチューシャが嬉しいからだけではなく、いつの間にか艶めかしく瞳を潤ませていたことに、ナミはやっと気付きました。 さあ、据膳はありがたくいただきましょう。 ナミはうさぎの耳をたゆんたゆんと揺らしながら、ロビンを押し倒したのであります。 うさぎの恰好のままのナミにあれこれされながら、ロビンは可愛らしい声をあげて、ずっとはしゃいでいました。
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2009/05/09 |
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