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「おい、ロビン。」 ロビンがマイメロちゃんと遊んでいると、そこにゾロが来ました。 「なあに、ゾロ。」 「わーいゾロくんー。」 歓迎する2人ですが、ゾロはロビンにお話があるのです。 「なあ、女が爪を擦ってる奴って、爪切りについてるのよりつるつるになるのか?」 質問の内容にロビンはきょとんとしつつも、答えました。 「なるわよ。」 「だったら貸してくれ。」 「……つるつるにしたいの?」 「ああ。」 「どうして?」 「昨夜、爪が伸びてて痛えって、ウソップに怒られたから。」 「…………判ったわ。待ってて。」 ゾロがとても正直に答えるので、ロビンは急いで爪磨きセットを取ってきてあげました。 「座って、ゾロ。やってあげるわ。」 「マイメロもお手伝いするー。」 「いや、おれは自分で……。」 「こういうの、ナミちゃんと兼用なんだもの。折られたりしたら困るわ。」 ロビンの言葉にゾロは黙り、芝生の上に座りました。そもそもロビンに話を持ちかけたのも、ナミに云ったらレンタル料を取られるのが確実だからなのです。 ロビンはゾロの手をとり、何本かある爪磨きの、一番荒いやすり地のものから爪を磨き始めました。 どうやら普通に切るところまではしてきたようで、すっきりと短くなっています。 「表面はいいんでしょ。切り口だけつるつるにしてあげるわね。」 「ん。頼んだ。」 「いいなあ、ロビンちゃん、マイメロもやりたいー。」 そんな2人を見ていたマイメロちゃんが、自分もしたいとおねだりしてきます。 「ふふ、ゾロってば、マイメロに爪を磨いてもらえるなんて幸せ者ね。」 そんな可愛いマイメロちゃんに、ロビンはにこにこしながら、二番目の爪磨きを渡しました。 「じゃあこれ、マイメロは次のをお願い。こっちの手が終わったら代わるから、ちょっと待ってね。」 ロビンはゾロの片手の5本の指を済ませると、その手をマイメロに渡し、反対側の手に移りました。 「わーい。じゃあ、マイメロもしてあげるね。」 「ああ、頼む。」 ゾロはすっかり大人しく、されるがままです。 マイメロちゃんは時々、爪を通り越して指までごしごししていましたが、ゾロの手はとても頑丈なので全く問題ないでしょう。 ゾロの爪を一生懸命磨きながら、マイメロちゃんはゾロに聞きました。 「ゾロくん、ウソップくんをひっかいちゃったの? 喧嘩は、めっ。だよ。」 「喧嘩じゃねえよ。……仲良くしてたんだよ。」 「仲良くしてたのにひっかいちゃうの?」 「仲良くしてたからひっかいたんだよ。」 「……マイメロ、わかんなーい。」 ゾロの云っている言葉の意味が、マイメロちゃんには理解できません。 「爪切るのを忘れてたのはおれのミスだ。これからはひっかかないように気をつける。」 「うん。ならいいわ。気をつけてあげてね。」 「おう。」 ゾロが云っているのはいかがわしいことなので、止めるべきかどうか迷っていたロビンでしたが、なんだか2人ともとっても可愛かったので、途中からくすくす笑いだしてしまいました。 「ロビンちゃん、どうしたの?」 「何でもないのよ。でも粘膜をひっかかれると痛いのは本当だから、よく気をつけてあげてね。」 「判ってるよ。」 ロビンにまで云われたので、ゾロはちょっとだけ膨れてしまいましたが。 「ゾロくんの爪は、マイメロとロビンちゃんでつるつるにしてあげるから大丈夫よ。これからは、伸びたらいつでも云ってね。」 マイメロちゃんがにっこり笑って、優しくそう云ってくれましたので。 「おう、頼む。」 これでもうウソップに痛い思いをさせなくてすむなと、ゾロはありがたく、マイメロちゃんにお願いしたのでありました。
「……ゾロったら、全く、何様のつもりなのかしらね。私のロビンに手を取られてにやにやしてるなんて、許せないわ。」 「うう……。」 「ああもう、泣くなら後にしてよね、歪むでしょ!」 上の甲板からは、ナミとウソップが、じゃれあうゾロとロビンとマイメロちゃんを、しっかり目撃していました。 ナミの手は、ウソップの手の中にあります。 いつものようにナミは怒っていて、ウソップも泣きそうになっています。 そして、何が歪むのかと云えば、ナミはウソップにネイルアートをしてもらっているところだったのでした。 前々からマニキュアをウソップに塗ってもらうことはよくあったのですが、船大工役が終了したウソップには暇が増えていたので、たっぷりと時間をかけた凝った模様を作ってもらえるようになったのです。 ちなみに、ロビンが持っていった爪磨きセットは、少し前まではナミが使っていたりしました。 「泣いてねえよ。……ここ、どうする。この石か、こっちか。」 ウソップは拗ねてはいるようでしたが、ナミの爪に集中して、ゾロのことを忘れようとしているようです。 「どっちもいいな。んー……ウソップのセンスに任せる。」 ナミはウソップに顔を寄せ、少し考えましたが、お任せにしました。ウソップはいつも、ナミを素敵にしてくれるので、直接ほめるのは照れくさくてできないけれど、任せてしまうことに不安はありません。 「そうか? んじゃ、こっちにすっかな。今日のナミの服によく似合う。」 ウソップは細かい作業をちまちまと続けました。 顔のぶつかるような、と云うより、先にウソップの鼻がぶつかりそうな近距離で、ナミはウソップとこそこそとお話するのが好きです。 今日は、ちょっとばかり内緒に近いことを相談したいので、余計にひそひそ。 「ねえウソップ、あんた今度、ネイルチップの作り方覚えない?」 「あー、つけ爪? いいけど何で? 最近ナミ、あんまり爪伸ばさなくなってきてるよな。まあ、短くてもおれ様の天才的テクニックなら、可愛くでも格好よくでも仕上げてやるけどな!」 「うん、判ってる。でももっと短くしたいのよ。」 「何で。」 「ロビンとえっちする時に、爪長いと大事なとこひっかいちゃったりするじゃない。ロビンは水分多いから、よく手が滑るし。」 「………………。」 ナミの発言に、ウソップはぼんっと赤くなりました。 できれば突っ伏したいところでしたが、ちまちまとストーンを貼り付けているところだったので、全身を強ばらせることで何とか耐えます。 「おまえ、おまえな、そういうことをさらっと……!」 女の子の口からのえっちな発言、更に、ちょうど昨晩、ゾロの爪が伸びていて痛いと文句を云ったばかりのウソップとしては、もう真っ赤になって羞恥する以外にありません。 そう、思わず拗ねてしまいこそはしたものの、芝生甲板でロビンとマイメロちゃんに挟まれているゾロが、自分のために爪を整えてもらっているのであろうことだって、ウソップには本当は判っているのです。 「女の子はデリケートなのよ。ロビンの為に爪を短くしたいけど、でも、おしゃれだってしたいの。だから、次の島で材料買いに行くからつきあって。」 男の体だって、それなりに部分的にでもデリケートなんだぜと。ウソップはそう思いましたが、恥ずかしくて口には出せませんでした。 「……判ったよ。」 なので真っ赤になったままのウソップは、それだけをお返事したのであります。
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2009/08/04 |
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