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今日もマイメロちゃんとロビンは、ゾロの側で遊んでいます。 ゾロは甲板の隅に座って壁によっかかり、その様子を何となく眺めていました。 鍛錬の終わったゾロはお昼寝がしたかったのですが、しかしそろそろおやつの時間なので、それを食べてから寝ようと、がんばって起きていたのです。 ここちよいお天気の日でしたが、少々冷たい風が吹いてきました。グランドラインの気候は、とっても変わりやすいのです。 「……っくしゅん。」 マイメロちゃんが、可愛くくしゃみをします。 「あら大変。寒くなってきたわね。」 ロビンは慌てて、マイメロちゃんをゾロの腹巻の中に押し込みました。 「……おい。」 「だってマイメロが寒がっているんですもの。」 思わず抗議するゾロに、ロビンは真剣に答えます。 「はー、ゾロくんの腹巻の中ってあったかーい。」 そしてマイメロちゃんはふんわりほこほこ。訓練後で入浴後の、ちょっとおねむなゾロの腹巻の中は、とっても暖かかったのです。 「……っくしゅん。」 けれど今度は、ロビンがくしゃみをしました。 ゾロの腹巻から顔を出したマイメロちゃんは、まじまじとロビンを見つめました。 「ロビンちゃん、おなか寒そう。マイメロがあっためてあげる!」 そう、今日のロビンの格好は、丈の短い、おなかやおへそが出てしまう服装だったのです。 ゾロの腹巻の中から飛び出したマイメロちゃんは、ロビンのおなかにむぎゅとしがみつきました。 「マイメロ…!」 優しい優しいマイメロちゃんの心遣いに、ロビンは感動の面持ちです。 「ありがとう、マイメロ。とっても暖かいわ。」 「ロビンちゃん、風邪ひかないでね。」 「ええ、マイメロが暖めてくれたから大丈夫よ。」 にっこり微笑み合うマイメロちゃんとロビンです。 けれどマイメロちゃんは、たいへんなことに気が付いてしまいました。 「ああっ、ロビンちゃんの背中が寒いままだわ!」 そうです。マイメロちゃんの大きさでは、ロビンのおなかは暖められても、背中の方まで一度には届きません。 マイメロちゃんはゾロを振り向いて云いました。 「ゾロくんゾロくん、ロビンちゃんの背中にくっついて、あっためてあげて。おねがいv」 「…………………………。」 ハートを飛ばしてお願いされても困ります。ゾロは汗をだらだら流して、硬直してしまいました。 「ええと……、じゃあ、お願いするわね。」 ロビンは小首を傾げてちょっと考えると、おなかにマイメロちゃんを張りつかせたままゾロのところに行き、膝の上に勝手に座りました。 「…………おい。」 「だって、マイメロがそう云うんですもの。暖めてくれなくちゃ困るわ。」 ロビンは遠慮なくゾロに寄りかかります。 そうすると、背中がゾロにくっついて暖かいのです。 ロビンの方がゾロより背が高いので、そんなことをされたら前が見れません。 とは云っても、ゾロがまた、ウソップとナミが近づいてきているのに気がつかなかったのは、前が見えなかったからだけではないのですが、そこは追及しないであげるのが武士の情けです。 「あああっ!!ちょっとゾロ、私のロビンに何してやがんのよ!」 「ゾロ、また……。」 なので、いつものようにナミに怒鳴られ、ウソップに悲しいお顔をされてしまうことなるのでした。 ちなみに、ナミとウソップは二人で仲良く室内で遊んでいたのですが、優秀な航海士さんが気温の変化に気付いたので、確認のために甲板に出てきたのでした。 「あのねー、寒くなってきたから、マイメロがロビンちゃんのおなかをあっためてあげて、ゾロくんがお背中をあっためてあげてたの!」 「暖かいわよ。」 マイメロちゃんがにこにこ、ロビンちゃんもにこにこ。二人をおひざに乗せたゾロは、汗がだらだらです。 「そうなの。でも、ロビンは私があっためてあげるからいいのよ。」 ナミはそう云うなり、ロビンの手を取って思い切り自分に引き寄せました。 「きゃっ。」 「やーん。」 ロビンはゾロのおひざからナミの腕の中へ。勢いあまってナミも座り込んでしまいましたが、それより先に、ナミはロビンのおなかからマイメロちゃんをはがして、ウソップにぽいと投げました。 「ウソップ、パス。」 「えっ、うわっ。」 ウソップは慌ててマイメロちゃんを抱きかかえます。 「大丈夫か、マイメロ。」 「うん。あら、ウソップくんも肩が寒そうね。マイメロがあっためてあげる!」 ウソップに撫で撫でされたマイメロちゃんは、素肌にオーバーオールなどという格好のウソップも、寒そうだなあと気がつきました。 マイメロちゃんはとっても心優しい女の子です。よじよじとウソップの肩によじ登り、ぺったりくっついてあげました。 「ちょっ、や、ナミ、待って…っ。」 「いいのよーロビン、寒いんでしょ、いくらでも熱くしてあげるわよー。」 その間に、ナミはいつのまにかロビンの背後を取って、おなかに両腕をしっかりと回して抱きしめていました。 抱きしめるついでに、ナミの指はわさわさと動いて、ロビンのおなかを撫でています。真っ赤になったロビンはじたばたしていましたが、余程焦っているのか、腕を咲かせてナミを引きはがす余裕さえないようでした。 「や…っ、あん、ナミっ、…きゃあっ。」 「いいのよー、遠慮しないでね、ロビン。」 ナミはとても楽しそうに、ロビンを暖めています。 ゾロとウソップは真っ赤になって顔を反らしました。 「あーいいなあ、楽しそう、くすぐりっこ。マイメロもウソップくんくすぐっちゃおうかなー。」 そしてマイメロちゃんは、ナミとロビンのどたばたをそう解釈して、ウソップの首をこちょこちょとしました。 「わはは、こらマイメロ、くすぐんなって。」 たちまちにウソップが笑い出します。 すると、今まで真っ赤になっていたゾロが、慌ててウソップに駆け寄り、肩に張り付いているマイメロちゃんを引きはがしました。 「おいマイメロ、ウソップをあっためるのはおれの役目だから、お前はしなくていい。判ったな。」 「えー。そうなの?」 「そうなんだ。」 マイメロちゃんをつかんだ腕を伸ばしながら、ゾロはもう一方の腕で、ぎゅうとウソップを抱き寄せました。 「わっ、ゾ、ゾロっ!?」 「冷やすとよくねえからな。」 ゾロはちゅうと、マイメロちゃんにくすぐられていたウソップのうなじあたりに吸いつきました。 「やーっ、ちょっと待てゾロ、…あ、あ、あ……、ゾロっ!」 ごそごそといじくられて、ウソップもじたばたし始めます。肩や腕を撫でさするだけではなく、ゾロの手はオーパーオールの胸あての隙間からも中に入ってきて、肌を暖めようとするのですからウソップは大騒ぎ。 ロビンとウソップはじたばた、ナミとゾロはにこにこ。マイメロちゃんもよく判らないながらに、皆仲良しねとにこにこしていましたが。 「ヨホホー、みなさんお揃いで、何をしてるんですかあー。」 そこにブルックがやってきました。 「わーい、ブルックさんー。あのね、ちょっと寒くなってきたから、あっためあってたのー。」 ゾロにつかまれたままのマイメロちゃんは、嬉しげにそう説明しました。 ブルックは眼球のない目で、絡み合うナミとロビン、ゾロとウソップの姿をまじまじと眺めます。 「おい、ブルック。パス。」 今度はゾロが、マイメロちゃんをブルックに投げました。 「ヨホ。」 「わーい。」 ナイスキャッチです。 「ブルックさんは寒くなぁい?」 「そうですねー、寒さが骨身に染みます。骨だけにー。」 マイメロちゃんに尋ねられ、ブルックはいつものように、スカルジョークを披露しようとしましたが。 「ああっ、ほんとだ。ブルックさんもおなか出てるから寒いのね。マイメロがあっためてあげる。」 マイメロちゃんは、ブルックのおなか、と云っていいのかどうか判りませんが、スカーフの下、むき出しになっている骨のおなかの空間のところに、もぞもぞと入りこみました。 「どーお、ブルックさん、あったかい?」 「はいー、五臓六腑に染み渡る暖かさですー。って、私、内臓もないんですけどー。ヨホホー。」 ブルックはくるくる回ると、そっと、マイメロちゃんを撫でました。 「本当に暖かいです。マイメロさんの優しい心が伝わってきますよ。」 「それはマイメロが、ブルックさんのこと大好きだからだよ。」 「私もマイメロさんが大好きですよ。」 そんなことを云い合いながら、ブルックはマイメロちゃんをおなかに入れたまま、船内へ戻って行きました。マイメロちゃんが何も判っていなくても、ここにいるのは教育上良くないと思ったのでしょう。 けれど、観客のいなくなったナミとゾロは、もう好き放題です。 サンジがおやつができたと呼びにくるまで、二人は全力で、ロビンとウソップを暖めていました。
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2009/10/06 |
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