マイメロちゃんがサニー号にいたら 19 

 マイメロちゃんはとっても家庭的な女の子。
 なのでもちろん、手芸だって得意です。
 ちょっぴり寒い冬島海域。マイメロちゃんはせっせと編み物をしていました。
 何を作っているのかという質問には、可愛い可愛い「ひ・み・つv」のお答え。
 真っ白な毛糸と濃いめのピンク毛糸の二色、マイメロちゃんカラーの編み物がしあがるのを、皆は横目でちらちらと見ていました。
「ゾロくんゾロくん、マイメロ、ゾロくんのために腹巻編んだの。あげるね。」
 にっこり笑って、その作品を差し出されたのは、ゾロでした。
「ゾロくんはいつも腹巻の中にマイメロを入れてあったかくしてくれるから、マイメロもゾロくんをあったかくしてあげたかったの。」
 うふふと照れるマイメロちゃんは、今日もとっても可愛いです。
 白地に小さいピンクのハートマークがたくさん並んだ腹巻も、とてもとても暖かそうです。
「……マイメロさーん……、何でこんなマリモにばっかり……。」
 端の方で、サンジがハンカチを噛み締め、よよよと泣き崩れて拗ねていました。
「あー、いや、その、えーと……。」
 しかしその、可愛い可愛い腹巻に、ゾロは冷や汗だらだらです。
「つまりだな、あー、そのー、……おれの腹巻はだな、剣帯も兼ねてるんで、そういうやわな腹巻はだな、えーと。」
「こらクソマリモてめえ、マイメロさんの優しい御心を受け取れねえってのかよ!」
 うろたえているゾロにサンジが因縁をつけてきたので、二人はどたばたと喧嘩をはじめました。いつものことです。
「ねえ、マイメロ……。その、あのね、その。」
 ロビンはもじもじしながら、マイメロちゃんをつつきました。
「なあに、ロビンちゃん。」
「あの、その、えーと、私……。」
「うん、なあに。」
 ロビンが自分にも何か編んで欲しいと、そう云いたがっているのは誰にだって判ります。
 でもマイメロちゃんには空気が読めません。
 なのでマイメロちゃんはにこにこのんびりと、ロビンが最後まで云うのを待っていました。
 マイメロちゃんはとってもおっとりした女の子。そのくらいの時間を待つのは、何でもありません。
「だからね、つまり、あの。」
「はぁい。」
 しかしいつになっても進まない会話に、側にいたウソップの方が根負けしてしまいました。
 結果的にまたウソップが拗ねることになりそうではありますが、それでも、一生懸命なロビンを放っておくことなどウソップにできる筈がないのです。
「あのなマイメロ、ロビンもマイメロに、何か編んで欲しいらしいぜ。な、そうだよな、ロビン。」
「え、ええ、……そうなの。だめかしら……。」
 ウソップの口出しに、ロビンはぽうっと頬を染め、うつむきました。
「なーんだ。」
 マイメロちゃんはにっこりと笑います。
「ゾロくんのの次は、ロビンちゃんのを編む予定だったのよ。だからちょっとだけ待っててね。おねがいv」
「ありがとうマイメロ!」
 ロビンは感動して、マイメロちゃんをむぎゅーと抱き締めました。
 そしてそのまま、幸せいっぱいの笑顔をウソップに向けて、ウソップにもお礼を云ってくれました。
 なのでウソップは、今回はがんばってやきもちを妬かないようにしよう、と、一生懸命心の中で思っていたのですが。
 明後日。
 ロビンは真っ先に、マイメロちゃんが編んでくれたものをウソップに見せに来てくれました。
 それはやっぱり、白地にピンクのハート模様の腹巻でした。
「どうかしら、ウソップ。似合う?」
「そ、そうだな、可愛いぜ。」
「ありがとう!」
 何故か服の上に腹巻を装着したロビンは、ウソップに褒められてうきうきにこにこです。
「あー、でも、何で服の上に腹巻つけてんだ……?」
 もしかしてロビンの育ってきた文化には腹巻というものが存在せず、いつでも腹巻着用のゾロの姿を見て、腹巻は服の上に着るものだと思ってしまったのでは……と、ウソップは一瞬心の底から心配になりましたが。
「だって、服の下に着たら、皆に見てもらえないじゃない。せっかくマイメロが、私のために編んでくれたのに!」
「そ、そうですか……。」
 なのでウソップはそれ以上何も云えませんでした。
 そしてその日、誰にどう強要されたのかはあえて聞かないことにしましたが、ゾロはいつもの腹巻の上に、更にマイメロちゃんの腹巻をつけていました。
 やはりゾロは何があろうと、腹巻は服の上に装着する派らしいです。一度着けてしまったら、もう柄も気にならなくなったらしく、いつも通りの堂々とした腹巻剣士でありました。
「ねえウソップ、これって、やきもち妬くとこ……?」
「頼む、おれに聞くな……。」
 そうして、ウソップはナミと一緒に、頭を抱えることになりました。
 ゾロとロビンのペアルック。しかしそれがハート模様の腹巻、しかも服の上に着用とあっては、むしろ見てみないふりをしたい気分です。

 けれどこの時、二人はまだ知りませんでした。
 マイメロちゃんがクルーの全員分の腹巻を、せっせと編んでいたことを。
 なのでこの冬島海域も、皆、暖かく過ごせることでしょう。
 
2009/11/09 






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