やきもち 6 

 深く口づけている間に、ウソップの腰が、いつのまにか小さく動き出している。
 それに気付いたゾロは、ウソップの唇を強めに吸って、キスを終わりにした。いくらでもキスをしていたい気持ちもあるけれど、ウソップの秘肉に包み込まれた自身が気持ちよすきて、忍耐が持ちそうにない。
 互いの唇の間を、太い唾液の糸が伝う。
 ウソップの口元は、もう完全にべとべとだ。目には涙が一杯、快感に焦点を失った目を、必死にゾロに向けてくるのがいじらしくてたまらない。
 愛しさと快楽が入り交じって、ゾロの背筋をぞくぞくと駆け抜ける。
「愛してる、ウソップ。」
 いとしくて、可愛くて、素直な気持ちがゾロの口からこぼれ落ちた。
 そしてそのまま、色々な衝動に身を任せて、ウソップを突き上げようとしたのだが。
「……っ、……っっ!」
 一際大きい震えがウソップの全身を走ったかと思った途端、急激にゾロを包み込んだ秘肉が収縮し、離しかけた体の間に熱い飛沫が飛び散った。
「くう…っ。」
 驚きもあったが、ゾロは瞬間、自身を襲ったきつい快感に耐えるだけで必死だった。
 ゾロのものを絡め取るように秘肉が収縮し、何度も細かく打ち震えては快感を煽る。
「ああ…っ、は……ぁ。」
 がくがくと震えていたウソップからがっくりと力が抜け、どうやら全部放ち終えたようだ。
 相当に焦らしたからか長く射精が続いて、ウソップの全身の緊張が解けるまで、随分長いことかかった。
 ゾロもようやく、食い縛っていた歯を解いて、深く息を吐く。
 しかし深呼吸して自分を落ち着かせている間にも、ウソップの体は快楽の余韻に突然びくつき、秘奥も不規則に収縮をくり返すのだからたまったものではない。
 ゾロが我慢しきれずに体を揺らすと、ウソップは高い声をあげて背をのけぞらせた。
「や…あ、あぁ…んっ。」
 達したばかりで敏感になっているのだろう中を、ゾロはできる限りゆっくりと動く。
「あうっ、…ひ、あ、ゾロっ、んあぁっ。」
 感じてはいるが、それと同じくらい辛そうにしているウソップの背を少し持ち上げ、ゾロはぎゅうっと抱きしめた。
「わりい、止まんねえ…。」
 ゾロはウソップの頭を撫でて謝りつつも、腰の動きを止めない。というか、もう止められない。
「や、あ…っ、ああっ、く…っんん。」
 ウソップはゾロの押し入る動き、引き抜く動きに合わせて、絶え間なく切ない声をあげた。
 快感が止まらないらしく、ウソップは涙をぼろぼろと零しながら、忙しなく腰を揺らしている。
 いっそ先刻ウソップと一緒にいっといた方が、辛くなくしてやれただろうかとも思いつつ、やはり自分のタイミングで達した方が気持ちいいので仕方がない。
 もう一度ウソップがそこまで高まるまでは待てそうになかったので、ゾロはこのまま、自分の絶頂を目指すことにした。
「ウソップ、こっち向け。」
 ゾロはウソップを抱きしめ、あえぎ続ける唇をキスで塞いだ。
 激しく全身が震え、力の入らないらしい腕でゾロの胸を押し返そうとしてくるが、手首を取って自分の背へと回させる。
 口内でウソップの舌が逃げ回るが、腰を突き上げて動きの鈍ったところを、絡め取って吸い上げる。
「んっ。んー、んんっ。」
 重なった唇の奥で何やらウソップがわめいているが、首を振って逃げようとするのも何もかも封じ込み、好きなように唇を奪った。
 口づけながらの交合は、とてもとても気持ちがいい。
 ゾロはウソップの唇と舌を貪りつつ、熱くとろけるようなウソップの奥深くを、存分に突いて擦りあげる。
「……ふ…、ああ…っ。」  
 ゾロは寸前に口を離し、快楽にぐちゃぐちゃになっているウソップの顔を見ながら、心地よい絶頂をたっぷりと放った。
「……はぁ……。」
 大きく息を吐き、ウソップの胸に体重をかけすぎないようにしながら身を預ける。
 ウソップもはあはあと荒い呼吸をしながら、ゆったりとゾロの頭を撫でてくれた。
 優しい手付きが気持ちよくて、ゾロはウソップの肩に頬を擦りつけて甘える。
 ウソップはしばらくゾロの髪を撫でていたが、キスをしたくなって顔を寄せると、ぷくんと頬が膨らんだ。
 あ、可愛いと一瞬和んだゾロは、いや違うまたこれは何か拗ねていると思い直し、でもとりあえずは、膨れた頬に軽く唇をふれさせてからのことにした。
 けれどそれが逆によかったらしく、ウソップはゾロの肩の後ろあたりを、指先で模様でも描くかのようになぞり始めた。
 どうやら何か、話でもしたい雰囲気のようだ。
 ウソップは体を熱くさせてきているし、ゾロだってすぐにでも二回戦に突入できる状態ではあるのだが、こうして他の誰ともしないくらいに密着しあいながら、ウソップと甘やかな話をするのだってゾロは好きだ。
 ウソップが可愛くて、機嫌の良いままなら、何でも好きだというのが正直なところだが。
「ゾロ、……おれ、一応、判ってはいるつもりなんだけど……。」
「ん?」
 ぽつりとウソップが呟いた言葉は、主語がないので判りにくい。
 思わず聞き返すと、ウソップは幾分下がり気味になっているような長い鼻の先を、ゾロの頬につんと当ててきた。
「だから……、ゾロが、おれのこと、好きだっての……。」
「好きだぞ。」
 それは事実なので、きっぱりと云う。
「その、おれも、ゾロのこと好きだし……。」
「ああ、おれも好きだ。」
「でも、おれ、ゾロにふさわしくないんじゃないかって、時々不安になるんだ……。」
 しかしウソップがそんなことを云い出すので、ゾロはむっとした。
「ふさわしいとかふさわしくないってどんなんだよ。おれがお前を好きで、お前もおれを好きで、船長の許しも得ている。他に何の問題がある。」
 なので少し強い口調でそう云うと、ウソップは目をまん丸にし、苦笑した。
「……ゾロは単純でいいなあ…。」
「単純な話だろうが。おれはウソップが好きで、心底惚れてる。……まだ、伝わってねえか?」
「いいいいい、いやもういいです、充分に感じ取りました!」
 ウソップが大慌てで叫んだが、ゾロの方は、焦らし始める前に云ったことを半分忘れていたりした。
「だから、その……、色々、判ってんだけど……、なんて云うか、えーと、おれ……、やきもち焼きで、ごめん。」
 言葉を探しながらも、ウソップはとても素直に、ゾロに謝った。
 そういう率直な態度にはゾロも弱い。
「ああ、何だ、その、おれには本当にお前だけだから、疑われると悲しいから、程々に、な?」
 なのでゾロも、一生懸命言葉を探して答える。
 ウソップはじっとゾロの目を見て、それからこくんとうなずいた。
 ゾロはほっとした気持ちで、甘えて体を押しつけてくるウソップを抱きしめる。
 密着の深まる体に、行為の続きへの期待が体の奥からこみあげてくるけれども。
「さっき……。」
 微かな声でウソップが呟いたので、まだ何かあるのかと、仕方なく耳を傾けた。
「ゾロ、さっき、愛してる、って云ってくれたの……、すごく嬉しかった。」
「そうか?」
「うん。」
 好きだとは随分頻繁に告げている筈なのだが、その間に大きな違いがあるのだろうかと思わないこともない。表現する言葉は違っても、ゾロの胸の中いっぱいにあるウソップへの気持ちはいつも一つだ。ゾロはいつだって完全に、ウソップに惚れきっている。
「なら、もっと云う。」
 けれどウソップが喜ぶのなら、ゾロはその言葉を使うことに躊躇いはない。ウソップを好きで、愛しているのはゾロの真実なのだから、本当のことを二人きりの時に云うのに、何の問題もありはしない。
 もちろん人前でならば多少の照れはありはするが、コックが女達に云うような軽々しい口説き文句ではなく、生涯の相手と胸に定めた男へささやく愛情なのだから、恥じることなど何一つないのだ。
  
2009/06/19 





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