雨宿り
横尾茂明:作
■ 黍稈細工3
生まれて初めて見る女性器…それはふっくらとし柔らかそうな恥丘の膨らみに艶めかしい折込みが一筋有った…
一郎は慌てて目をそらす…何か見てはいけないものを見てしまった気がして…体が硬直し…すぐには動けなかった。
二人はその姿勢のまま暫く佇む…一郎はもう一度少女の性器を見る…その密やかに息づく股間はこの刹那…どんな素敵な玩具でさえも色褪せるほどの魔力を湛えていると感じられた。
一郎は後ろめたさを隠すかのように何食わぬ顔で少女の脚からパンツを抜き出し、蛇口の前でパンツをもみ洗いし始める…心臓は千切れるほど脈を打っていた。
少女は頬を赤らめ…しゃがんで洗う光景を見つめる…重苦しい沈黙の時間が流れる…。
(あぁー女の子だったこと…忘れてた…でも女の子のあそこってあんなかたちなんだ…)
洗いながら正面に座る少女の股間を何度も盗み見る…柔らかそうな切れ込みの中がどんなふうになっているのか見てみたい欲求に視界が霞んでくる…。
少女は一郎の視線が痛いほど自分の股間に注がれているのが分かる…。
今まで感じたことのない奇妙な感情…イヤな感情じゃなく痺れるように気持ちのいい恥ずかしさ…少女は初めて女の性感をこの時経験した。
一郎は洗い終わり、灯籠横の南天の枝にパンツを広げて置いた。
「さー服はもうかわいたかな…」声が奇妙にうわずってるのが分かる…。
「まだ少し湿っているけど…我慢してね! さー手を上に上げて」
一郎はワンピースを少女の頭からすっぽりと通す。
「どう…気持ち悪い?」
「…う…ううん…」
少女の顔はまだ赤い…一郎はドキドキした、不覚にも相手が少女であることを自失したことの後ろめたさと、また…見てはならない神聖なものを見てしまったという罪悪感に狼狽は隠せなかった。
一郎は照れ隠しのぎくしゃくとした言葉を出してはみたが…少女のはにかんだ視線には耐えられず…しかたなくしゃがんで蛇口をゆっくり閉める。
一郎は思い直したように立ち上がる…。
「さーパンツが乾くまで僕の部屋で遊ぼうよ、えーと…黍稈細工やるかい?」
「えっ黍稈有るの? …わー淑子やりたーい!」
少女はもう先ほどの恥じらいを忘れ…はしゃぎ始めた…。
一郎はホットすると共に経験のない暗い澱が心によどむ感覚に違和感を感じた…。
庭を抜け濡れ縁から上がり台所に行き、女中さんに紅茶とお菓子を部屋に持ってきてと言い部屋に向かおうとしたとき…。
「お母さん! 今から黍稈細工するんだよ」と淑子が女中に得意げに告げる。
「あらまー…坊ちゃんご迷惑でしょ、淑ちゃん駄目じゃない! 一人で遊びなさいってあれほど言ったでしょう!」
「おばさんいいんです、少しの間だけですから」
「そーですか…すみません、淑ちゃん少しだけよ! 分かった」
「はーい」
部屋で黍稈が入った箱を取り出す、蓋を開けると色とりどりの黍稈と五色に染められた竹籤が整然と並んでいる。
少女は一瞬目を丸くし…飛びつくように箱の中をのぞき込む…。
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