雨宿り
横尾茂明:作
■ 雨宿り9
二人は気が狂ったように幾度も繋がり、気の遠くなるほどの快感に酔い痴れた…。
一郎はへとへとになり…いつしか眠り込んでしまった。
ふと気付くと暖かい手ぬぐいで体を拭かれていた…。
「あっごめん…寝てしまったんだね」
「起きないで…そのまま寝てて下さい、すぐに終わりますから」
淑子は一郎の脚を開き肛門から睾丸…そして陰茎に付着している血糊を拭き取っていく
、そして亀頭だけは口に頬張ってクチュクチュ音をさせて舐めていく。
「はい…綺麗になりました」
全裸で横に正座する淑子は優しく微笑む。
「私待ってます…だから絶対生きて帰って下さいね坊ちゃん」
「うん…」
一郎は起きあがり淑子の手を握った、そして優しく口づけると乳房を握り…
「絶対に帰ってくる! 帰って来るとも」と微笑んだ。
雨はもう上がっていた、一郎は門の引き戸を開けながら涙ぐむ淑子に…兵役につく前にもう一度逢おうと約し、淑子が見送る中…何度も振り返っては手を振った。
雨の神宮外苑で出陣学徒壮行会に出た後…仲間とともに酒に酔いしれた。
学友の榊原は女を知らずして死ぬのかと…いつまでも愚痴をこぼしていた、一郎はこの時…淑子の体を知ったことに正直優越感を感じていた。
淑子と会う約束の朝…乃木坂の叔父の死去が知らされた。
一郎は下男に淑子の家に今日は逢えぬと知らせを走らせ、自分は乃木坂に向かった。
通夜と葬儀でどたばたし、淑子に逢えぬまま一週間が過ぎた。
焦りの中…軍よりとうとう出頭命令が一郎に来た。
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