アオイ空ふたりミサキにたたずんで
田蛇bTack:作

■ 3

「ねぇ、まだ処女でしょ? 12歳だもんね。中1だもんね。でも、美咲ちゃんおとなっぽいなぁ…」

霧也はおしゃべりだ。おしゃべりな人間がこんなにもいやだと思うことって、この先あまりないんだと思う。
だけどこのとき私は、パパにオナニーがバレていたことがショック過ぎて、霧也の話なんて聞いていなかった。

だから、気づいた時には大股開かれていたわけだ。

「ごめんね。許してね。」

血走った目で霧也は私の目を見る。いよいよその時がやってきたのだ。

意識を遠くのほうに飛ばせることができたら、どんなにラクだろう。
だけど現実は神経が股間に集まってしまう。
生あたたかい肉棒が自分の股間に刺さっていくのがわかる。

膣が押し広げられるという表現よりも、焼き切られるという表現のほうがこの痛みには妥当かもしれない。膣の上の壁と一緒に、腸がびっしり詰まっているおなかもぐぐっと持ち上げられているようなこの感覚。

痛いのに、歯をくいしばることしかできなかった。涙も流すことはできなかった。もしも自分が性病を持っていたら、全力で感染させてやりたいと思った。

恨むことで、自分を支えていた。

「う……! はぁ……」

霧也が果てた。思ったよりも早かったのが救いだった。
膣の中が生ぬるい液体で汚れた。シーツにはピンク色のシミ。

「はじめてだったんだよ、僕。ありがとう…」

犯したくせに、霧也は平然とそんなことを柔らかな表情をして言ってきた。
髪の毛をいたわるようになでてくる手を、今すぐに切り落としてやりたいとまで思った。けれど、そんなことできない。

広い家のかわいい部屋。
私はここで、父に縛られていなければ、生きていけない存在。
…そんなもんなんだ。諦めた。…ほんとうに諦めた。

けれど、蒼依を好きな気持ちには何ら変わりはなかった。
むしろ、霧也とのこの一件によって、ますます好きになったかもしれない。



朝を迎えて、部屋の重い鍵が開いた。
飼われたイヌにも散歩の時間ぐらいあるものだ。私は学校に行くことが許可された。

紅色を基調としたセーラー服。
リボンはギンガムチェック。正直すごくかわいい制服だと思う。きっとこんな汚れた身でまとった生徒なんて、私ぐらいなのかと…。
――なんて考えるうちに、学校なんてどころじゃなかった。

あの霧也…何者? 尾行してやる…。
私は学校に行ったフリをして、居間の会話を聞いていた。

「どうだったか? 霧也君。」
「とてもいいですね。先生のおっしゃる通り、成熟した体の持ち主ですね」
「そうかそうか。まだ胸はないがな。」
「今度今回のレポートを提出しにまた伺いますんで」

「あぁ。いつでも来なさい。教授にもよろしくな。」
「きっと祖父も喜びますよ。」
「なにせ、投薬から二年、こんな成果がでるとはな。ははは!」

投薬? レポート??
なんのことだろう。だが、話を聞くうちに全てがわかってしまったのだ。

要するに、私は二年前、10歳の頃になんらかの薬を実験的に打ち込まれたらしい。
それの効き目がだいたい2年後といわれていたわけだ。
…私はパパの実験台だった。

お母さんも実はパパに何らかの薬で殺されてしまったんじゃないか!?
妙な不安が頭をよぎる。全身が一瞬にしてしびれた。

許せない…!
でも、所詮は私はパパに飼われている身。運命から逃げるなんてそんなことできるわけないのだとわかっている。
人間、誰しも使命を持っているというが、私はパパが開発している媚薬みたいなものの実験台になるのが使命なんだろう。

だけど、だからといって蒼依を諦めようとは思わない。
私に使命があるように、パパにだって、私に裏切られるという運命があるのだ。絶対に見返してやる。
「レズに育ってしまったのは、この薬の失敗だ」
…近々そんな言葉を吐いて、せいぜい嘆くがいい。

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