淫辱通学
木暮香瑠:作

■ 待ち伏せ、そして恥辱1

 放課後、有紗はいつも使う駅とは反対側の駅に向かって急いでいた。聖愛学園の裏側は、大きな森になっている。森の向こう側にある駅に行こうと、木立の中の道を歩いていた。今日の午後7時から、有紗がファンである「ウインターズ」のお笑いライブに出かけるためだ。ライブ会場には、いつも使ってる路線ではなく、学園を挟んだ反対側に在る駅の路線を使ったほうが早く着くのである。

 ライブには、同級生の何人かに声を掛けてみた。しかし、お嬢様学校で有名な聖愛学園には、お笑いライブに一緒に行ってくれる友人はいなかった。
「ウインターズ、面白いのになぁ……。どうして興味ないんだろ? みんな……」
 一人ブツブツ言いながら、誰一人通っていない道を駅に向かって歩いた。有紗は、痴漢から守った小林美由紀にも声を掛けてみた。有紗は、どうしようか迷っている美由紀に、ウインターズがどんなに面白いか、ライブの様子やライブ会場までの道のりを詳しく話した。結局、お笑いに興味のない美由紀は、有紗の誘いを断った。

 木が鬱蒼と茂っている9月の森の中の道は、まだ4時だというのに暗い。木々が日差を遮り、広い森が静寂に包まれている。森の中の道をちょうど半分ほど進んだとき、有紗の目の前に一人の男が現れた。その男は、有紗の視界を遮るほどの大男だ。2m近い身長と100kgを越えそうな体重の男が、木の陰から現れた。100kgを越えると言っても、ただ太っているわけではない。日に焼けた肌と、肩幅が大きく逆三角形の鍛え上げられた筋肉質の体形をした大男だ。筋肉の鎧を纏ったと言う言葉がピッタリくる。黒いTシャツとレザーパンツ、その色と境目が判らないほど日焼けした肌。細身の両側が吊り上がった形のサングラスで目を隠し、角刈りの髪型。自らの凶暴性を撒き散らしている。華奢な有紗と比べると、ライオンとその前で脅える子猫と言った感じだ。
「なに? 何か用?……」
 有紗は、少し後ずさりしながら言う。男は、後ろを振り返りながら言った。
「こいつか? お前に恥をかかせたってヤツは?」
 大男の影から、もう一人男が現れた。その男は、一週間前、痴漢をしているところを有紗に捕まえられた大学生、権堂康次である。大男は、康次の5歳年上の兄、権堂雄一である。
「こいつだよ、兄貴。この女に恥をかかされたんだ。やっちゃってくれよ!」
「誰なの? あなた達! わたしが何かしたって言うの?」
 有紗は、強気を装い康次を睨みつけながら言う。
「憶えてないのか? 先週の朝、電車の中で……」
「あっ! あの時の痴漢……」
 有紗は、後ろの男があの時の痴漢だと気が付いた。
「間違いないようだな。こんな小娘に恥かかされたのか?」
 雄一の言葉に、康次はバツが悪そうに笑った。

 権堂雄一の腕が有紗に伸ばされる。有紗は、雄一に得体の知れない危険を感じた。とっさに、有紗は蹴りを繰り出した。有紗のスカートが翻り、すらりと伸びた脚はきれいな円弧を描いて高く蹴り出される。白いパンティーが丸見えになるが、それを気にしている余裕は無かった。雄一の見下げるような視線に威圧されていた。有紗の爪先は、雄一の顎にヒットした。バシッと音が森に響いた。しかし、雄一は表情一つ変えない。
「お前、あの高木有紗だな? 中学時代、美少女拳士って言われた……」

 表情を隠すサングラスの裏で、雄一はワクワクと目を輝かせていた。二年前、有紗が雑誌で取り上げられた時、雄一は有紗のかわいさに酔った。端正な顔立ちに、型を決めたときのキリリとした大きな瞳が印象的だった。雑誌の写真の瞳は、雄一を見つめているような錯覚に襲われるほどの力を持っていた。雄一は毎晩のように、有紗の載った雑誌をマスターベーションのおかずにしていた。その有紗が目の前に居る。当時の幼かった少女の面影を残しながらも、大人の女性へと成長しかけていた。スラリとした手足はそのまま、胸やお尻は、当時より遙に膨らんでいる。少女と大人のはざ間の、危うい色気を漂わせ始めている。

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