淫辱通学
木暮香瑠:作

■ 放課後の誘惑1

 有紗は憂鬱な一日を過ごしていた。ヒリヒリする股間が気になる。がに股になっていないかと心配し、いつもより大人しく振る舞い、内股で歩くように気をつけた。ショートカットになった髪は、心細げに揺れている。さらに、その理由を聞かれることは、もっと辛かった。

 クラスでは、ショートカットの髪型に代わった有紗の評判はよかった。有紗が受けた恥辱など知らないクラスメートには、元々活発なイメージのあった有紗にとても合っているように感じた。みんなが誉めてくれる。いくら誉められても、有紗の心が晴れることは無かった。誉められれば誉められるほど、有紗の気持ちは落ち込んでいく。昨日の屈辱が思い出される。有紗は、それを悟られないように勤めて明るく振舞った。

「どうして切ったの? 何かあったの?」
 理由を聞かれるたび、有紗はドキッとした。髪を無理やり切られたことなど知るわけの無いクラスメートの質問に、昨日のことを知られているのではないかと不安がよぎる。
「理由なんてないよ。ちょっとした気分転換……」
 ニコッと微笑みながら答えた。微笑みながらも、引きつった笑顔になっていないか不安になる。

 授業が終わり、下校の時間になった。一刻も早く帰りたかった。少しでも早く、この緊張から逃れたかった。

 正門を出たところで、背中から声を掛けられる。小林美由紀の声だ。
「有紗ちゃん、髪切ったんだ」
「う、うん」
 有紗は、少し俯いて曖昧に答えた。美由紀は、やさしく微笑みながら話し掛けてくる。
「似合ってるよ、ショートカット。すごくかわいい」
「そう? ありがとう」
 美由紀は、それ以上髪については聞かなかった。他愛もない会話をしながら駅まで歩いた。

 駅のホームに二人が並んで立つと、電車を待つ人々の視線を集めた。黒髪を背中の中ほどまで伸ばした美由紀と、ショートヘアの有紗。どちらも甲乙が点けがたい美少女が並んでいる。大人の女らしさを漂わせる美由紀と、中学生にも見える幼さを残した少女……。どちらも聖愛学園の制服に身を包み、各々が違った個性を放ち輝いている。

 電車に乗り込んだ二人に、乗客たちの視線が集まる。
「みんな、有紗ちゃん見てるわよ。かわいいから……」
「そんなことない。美由紀さんを見てるのよ」
 今までも視線を集めていたには違いないが、今までは気にしたことはなかった。今日の有紗は、視線が気になって仕方がなかった。昨日、雄一と康次に辱めを受けた電車とは違う路線である。しかし、目撃したした人が乗っているのではと不安になる。乗客たちの視線が、新たな恥辱を期待しているかのように突き刺さってくる。

 有紗は俯いて視線を床に落とした。
(ああ、そんなに見ないで……。ど、どうして有紗を見るの? どうして……)
 男の中には、露骨な視線を投げかけてくるものもいる。顔を見て、そして視線を落とす。足元から視線を徐々に上げていき、二人のすらりと伸びた足を舐めるように見ていく。そして、視線が止まるのはチェックのスカートに隠された股間だったり、ブラウスのリボンで飾られた胸だったりする。有紗は、身体が熱くなるのを感じた。

 有紗の降りる駅に近づいた時、美由紀が有紗に尋ねた。
「今日、暇?」
「予定は無いけど……」
「よかった! 家に来ない? この前、痴漢から助けてもらったお礼がしたいし……。おいしいケーキも買ってあるのよ」
 有紗たちの乗った電車は、次の駅に向かって走り出した。

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