アルバイトリンド
一月二十日:作

■ 4

「実は僕、先生とこうして二人きりになりたかった。」
「え? どういうこと? よく分からないわ。」
「いやただ…先生とこうしてただ向き合って話したかったんです。ごめんなさい。」
「困ったな…」

先生は困惑した表情で唇を噛んだ。

「どうしていいか分からないわ。ねぇ土林君、先生どうしたらいいんだろう?」

なんてまったりした質問だろう? 質問したこっちが困ってしまう。

「え? こっちも困っちゃった。」
「え? 困っちゃったの?」
「うん、困っちゃった…」
「ふたりとも困っちゃったね?」
「本当だ。」

思わず笑ってしまった。途端に力が萎えた。ここで終わりだと思った。ところが先生はここが始まりだった。
次の瞬間、先生の真剣な目が視界に入った。真剣? それとも好奇だろうか? でもなんか怯えている様でもある。

「ねぇ土林君?」
「はい。」
「今日はびっくりしたからこれでお終いにするけど、この次場所を変えて考えましょう。」
「え?」

先生はそれだけ言って
「ごめんね、次の講義に行かなきゃならないから。」
と言って足早に教室を出て行った。
それ以来まだ会っていない。

====

「土林君にさ、告白されたような感じなの…」
「え? リンちゃんに? …ですか?」
「うん…あ…あぁ…そこはダメって言ったのにぃ…」
「そう言われるから責めたくなるの…それになんか癪。」
「そんな…あ…」
「先生綺麗よ…」
「ミミちゃんの舌って長いのね…」
「またお豆舐めようか?」
「あ! いや…でも…少ししたらして…ちょっと息したい。」
「先生は好きなの?」
「え? 何を?」
「リンちゃん。」
「分からない。ただ驚いただけ。」
「分からないなんて…ミミを好きなんでしょ?」
「違うわ。ミミは同性。彼は異性だから。」
「先生は異性が怖いって言ったじゃない。だからミミがこうして…」
「あ…まだダメよ…そこはダメだってば!」

====

「リンちゃんは先生と寝たいと思わない?」
また唐突にミミは言う。
「正直言うと…そうだな。」
「だったらこのバイト黙って受けて。」
「なぁミミ。」
「え?」
コーラを飲みかけていたミミは手を止めた。
「ミミもやっぱり先生好きなんじゃないのか?」
「しつこいなぁ。私は悔しいの。」
「何がさ?」
「先生をあんな安っぽい男の子達に渡すくらいならさ、リンちゃんと寝かせたいのよ。リンちゃんもその方がいいでしょ?」
「しかしあんまり話が飛躍してないか? なんか焦ってるみたいに思えるぞ、ミミ。」
「焦って…」
ミミは急に言葉を切って斜め下を見た。瞬きが激しい。
そのままその一点を見つめている。何かをこらえている様な感じがする。
「あ、いやごめん。うん、たしかに先生と寝られたら嬉しい。」
「じゃ…」
ミミは顔を上げた。
「じゃ、私の創作に付き合ってくれる?」
「あぁ、いいよ。なんかよく分からないけど付き合うよ。」

目の前には被せられたハンカチの柄。
ちょっと寒いなぁ…
いつまでこんな格好で仰向けに寝てなきゃなんないんだ?
ちょっと恥ずかしい。素っ裸だもんなぁ…それに手も足もハンカチで縛られてる。
僕のあそこはどっち向いて垂れてるんだろう?
ミミ…なにしてんだよぅ…

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