アルバイトリンド
一月二十日:作

■ 6

先生は天然の香りが好き?
どういうことか分からないけど、なんでミミは先生のことをやたら知っているんだ?
しかし新鮮なオスとは…
惨めな格好だ。

「さ、まずは鼻を近づけて…そう、怖がらないの! これは美味しい料理ですよ。」
「…」

また何か近付いて来た。
足からなんかスースーするものが上がって来る。
こそばゆいなぁ。
これは鼻息だ。
ちょっとずつ荒くなって来る。
匂いを嗅いでいるのか。

「剥きたての香りはいかがです? ほらそこに剥いだ皮が畳んであるでしょ? つい10分ほど前に剥ぎましたから、まだ身と皮の間に篭っていた香りが温かさを保っていると思うんです。」
「ム! ーんヴ、ム! ーんヴ…」
「あらあらそんなに焦って嗅ぐことはありませんわ。ほらちゃんと手足を縛ってますから逃げられませんわ。まるで蛹…人間の蛹ね。」

息に声が混ざっているけど、これが八木先生の声か?
ただの獣の唸りみたいだ。
ハンカチが暗くなった…今、目の前に顔が来ているな。
耳がこそばゆい。あ…

「あらら、一瞬蛹が痙攣したわ。おっかしい。斜塔も一緒に震えたわ。ちょっと柔らかくなって来たかしら?」


あっ! 冷たい…
こんなとこ摘まみやがる。

「フルフルフル…おっかしい。」

ミミは狂ってるんじゃないか?
いったいなんの企みだ?

「さ、ソースも味わってもらわなきゃね。身体の真ん中辺にクリーミーなソースが掛かってますの。さぁ、どうぞ。」

あ…足がほどかれてる。何をするつもりだ?

「さぁ、脚を開いてちょうだい。あなたの大好きな人があなたの味を味わうんだから。」

…え? 僕に言ってるのか?

「何してるの、さっさと開きなさい。でないと、あなたの夢はここでお終いよ。」

夢? …ちくしょう…ミミの奴、図に乗って…
あぁでも、なんでだ、なんでこんな場面で八木先生の指先や唇が浮かんで来るんだ…

「あらら、フルフルがまた元気になって来たわ。あ、やっと分かったのね。ほら見て、脚が開き出したわ。」

股の辺がスースーする。
またあの鼻息だ。

「いかがです? ソースの香りは。この生き物は自分でソースを出すんですよ。ね、言ったでしょ? 天然の香り100パーセントです。」
「ハーッヴ…」

あぁ、もうここまでしてるんだ。ミミ、とにかくこの顔のハンカチのけろよ。
ん? これは硬い服の感じ…まだこの相手は服を着ている。ちくしょう、僕だけがこんな惨めな格好なのか?

「ン? ヴ…ン? ン?…」
「あららら? 我慢出来ないんですか?早く食べたい?
アツアツを食べたいの?」
「ヴー…ンンン…」
「じゃ、全身舌になる?」
「ンン! …ンンン!…」

訳が分からない。とにかく見せて欲しい。お前らはどんな状況なんだ? 僕はまだこのままか? ミミ、いくら5万円でも、これはひどいぞ。

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