青い目覚め
横尾茂明:作

■ 幼心2

由美は子供の頃から、可愛い! と皆に言われた。最近は身長も163cmを越えた。自分でも脚が長くてスゴク綺麗と思う時がある。


(近所のお風呂屋で裸になると皆が私を羨望の目で見る…)

(この間なんか近所のおばさんが私の裸を正面から見て、綺麗ねーと驚いたように言い、男泣かせの体してるネって言った…)

(男泣かせの体ってどんな事…この体が10万円になるの?)

(何時間おじさんと居たら10万円貰えるのかしら?)

(まさかずーと居なくちゃいけないの?)

(今10万円有ったら…)

(携帯が買える…あの欲しくてたまらないセーターも買える)

(お母さんには絶対おねだり出来ないから由美…我慢しているけど…)

(10万あったらスゴクいいなー)

(修学旅行の払い込みの時期はとっくに過ぎて…先生から催促が来ている)

(お母さんには…言えないしナー……)

(10万円…かー…スゴク欲しい……)


由紀の想像はドンドン膨らんで行き、お金を貰う事が罪悪とは考えにくいものになって行った。


(おじさんに今度会ったら聞いてみよ)

(何時間一緒に居たら10万円貰えるのって)

(でも恥ずかしいな)

(10万円も貰うんなら…いろんな事しなくちゃいけないんだろうな)

(でも由美…なにしたらいいか分かんないヨー)

(そうだ!明日由紀ちゃんに聞いてみよ)


16才の由美は、余りにも幼な過ぎた、この時代に偶然にも純粋培養そのもで育った由美がいたのだった。

学校での昼休みは、由美はいつも由紀とお弁当を食べる。
「由紀ちゃんのお弁当…いつも可愛いね!」
「由美ちゃんのお弁当も美味しそうだよ」
「由美のお弁当…センスないもん」
「ただお腹が膨れればいいって感じにしか見えないヨー」
「そんなことないよー、そんなこと言ったらお母さん可哀想だよ!」
「そうだね……」

最近由美の母は毎日遅いせいか朝が辛そう…
今日も由美の弁当を作ると、
「由美ちゃんゴメン…もう少し寝かせて」
母はそう言って又フトンに潜り込んだ。

由美は弁当を見て……
(前のように可愛くしてくれないんだ!)
と思った……生活に疲れている母の姿が弁当に寂しく映っていた。

「由紀ちゃん……援助交際って…したことある?」

……由紀は口に含んでる物を吹き出しそうになった。

「由美ちゃん! 何を言うの…、援助交際の意味を分かって言ってるの!」

「……んー、男の人にお金を貰ってHなことするんでしょ?」

「由美ちゃん分かって言ってるなら…由紀怒るわよ!」
「由紀のこと…そんな子だと思ってたなんて……グスン」

由紀の目に、みるみる内に涙が湧いて出た。

「………」

「由紀ちゃん……ゴメン…ゴメンなさい…由美…よく分んなくって…」
「由美…変なこと言ったならゴメン…ごめんなさい…グスン」

由美の目にも、みるみる涙が湧いた。

二人は箸を手に持って泣いた。

由紀が先に泣きやんだ…。
「由美ちゃん! もー泣かないで」

「エーン…由紀ちゃんゴメンなさい…由美バカだから…」

「由紀ちゃんに聞いたら何でも知ってると思って…由美甘えてたの」

「由美…由美…何にも知らなくて…男の人のこと…何にも知らなくて」

周囲の女生徒達はこの二人の泣きを…また始まったと思った…。

この二人はハッキリ言ってクラスで浮いた存在だった。

現代のこの情報化時代に、こんな無垢な女の子の存在が許されるなんて。

クラスの皆は、この二人を特別扱いしていた。クラスのマスコット的存在でも有ったのだ。

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