僕の転機
MIN:作

■ 第2章 救いの手4

 データーを処理しながら数分経つと、防犯カメラの映像が綺麗にトリミングされ、鮮明に変わっていた。
「昌聖、こいつらか。お前の店に来たの?」
 宗介が問い掛けると、ディスプレイに映った映像に昌聖が驚き、コクコクと頷き答える。
 さらに数分後、そのディスプレイに映った写真を見て、昌聖は目を丸くした。
 ディスプレイには、警察の前科者リストが映し出されている。
「これって、警察の…」
 昌聖の間の抜けた質問に
「以外の何に見える?」
 少し惚けた返事が返ってきた。

 パソコンを操作し始めて1時間半程が経つと、宗介が顔を上げ、目頭の辺りを揉み
「大体の事は解った、うちの会社のデーターベースも使ったから、かなり精度は高いよ」
 笑いながら、今分析した事の全貌を話し出した。
「まず、昌聖の話から行くと。お前の件は、完全な濡れ衣だな。話に出て来たこの男達は、弁護士でも学生でも無い。2人ともチーマーで、被害者を名乗る女の子も、今では此奴らの言い成りになっている。いわゆる奴隷状態だ。で、この3人が関係しているチームに、深く関わっているのが…。この子…」
 薄く笑って、ディスプレイを指差す。

 ディスプレイに写っていたのは、美由紀だった。
「どうやらこの子は、このチームに女の子を供給する係りらしい。美咲ちゃんも最終的には、こいつらのオモチャにされてたんだろう」
 淡々と話す宗介の顔から、徐々に表情が消えていった。
「そして、この子を使って女の子を供給している大元が、この女。山田歩美…今回、俺の仕事で、大いに係わりがある女の子だ」
 無表情で歩美の写真を見詰める宗介は、何処か獣のような雰囲気に変わっていた。
 次に、写された写真を見て、宗介が少し優しい口調になり
「この子は、有る意味、君達と一緒だ…。生い立ちは惨憺たる物だ…。許してやれとは言わないが、加減はしてやれ…」
 そう言い、佐知子の報告書を宗介が読むと、昌聖と美咲は一様に息をのんだ。
 その、内容は惨憺たる物で、美咲は涙を浮かべ震えていた。
「情報はこんなモンで良いかな?」
 宗介が着信メールをチェックし始めると、新着メールが届く報告音が鳴る。
 ニヤリと笑いながら宗介がパソコンを操作し、メールを開いて内容を確認し、顔を上げた。
「フフン、返事が来たぞ。これからが本番だ」
 宗介が残忍な笑みを浮かべ、昌聖と美咲に宣言した。

 昌聖は、的を得ず、戸惑った表情で宗介に詰め寄り
「宗介さん。自分だけ判ってないで、僕達にも説明してよ」
 美咲の方をチラチラ見ながら、宗介に質問する。
 宗介は、昌聖の言葉に戯けた態度で肩を竦め
「俺が美咲ちゃんの処女を買ったの。50万円って送ったら直ぐに返事が来たよ」
 昌聖の依頼に応えた。
「え〜っ!どうしてそんな事?美咲ちゃんをどうするつもりなの」
 宗介の答えと態度に、昌聖が慌てて食って掛かる。
「まだ分からないか?50万円の金を回収するのに、お前なら人任せにするか?」
 昌聖の態度に、宗介は眉を顰め昌聖に問い掛けると、アッと気が付いた表情に成り
「最低一人は、お金の受け取りに現れる」
 ボソボソと呟く。
「そう、後は芋づる式に拉致して、この後の契約を話し合うんだ」
 宗介の言葉に、またも首を傾げて不思議そうな顔をする昌聖に
「当たり前じゃないか、脅迫や力ずくだったら犯罪だろ?俺がするのは、契約だよ。…そう、あくまでお互いの利害が、納得する形での契約だ…」
 そう話しながら、宗介の表情は変わらず、漂う雰囲気のみが残忍さを増して行った。

 美咲は、その変化を食い入るように見つめ、自分の内心の変化に戸惑う。
 ゴクリと唾を飲み込んで話しを続けようとした昌聖は、美咲の携帯電話の着信音で話の腰を折られた。
 電話の相手は、美由紀のようで、美咲が出ると、
『あっ美咲〜?美由紀だよ。今日やっとお前の交尾相手が見つかったよ。どっかの金持ちが、やってくれるって。時間は7時からだし、今から豚を送ってやるから、勝負パンツに変えてホテルに来な。私達3人で見送ってやるから』
 それだけを一方的に話すと電話が切れ、数秒もしない内に昌聖の携帯が鳴る。
 さっき美由紀が言った通り、ショーツを外す指示をするとまたも、一方的に電話が切れた。
「3人一辺に話しが出来そうだな…手間が省ける…」
 宗介は、そう言いながら立ち上がり、美咲に話し掛ける。
「さぁ、時間が無い。一端、家まで送るよ」
 そう話しながら車の鍵を拾い、玄関に向かって歩きだす。
 鞄を手に、急いで後に付いて行く美咲。
 昌聖は、少し迷った後、その後を追い掛ける。
 車は真っ直ぐ、美咲を家まで送りそのままUターンする。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊