僕の転機
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■ 第2章 救いの手8

 満足げに頷いた宗介は、最後に残った佐知子に向き直る。
 その顔には、既に勝利の微笑みが浮かび上がっている。
(こいつは、一番簡単だからな…さてと、詰めていくか)
 佐知子に近寄り左の耳に顔を近づけ、佐知子だけに聞こえるように名前を囁く。
「春日さん。貴女は、どうする?」
 その名前を聞いた瞬間、佐知子の顔が、驚愕の表情に変わった後、深い落胆へ沈んでいった。
(知っている…この人は全てを知っている…もう終わりだ…)
 佐知子は、身体中の力を抜き、人形のようになった。

 そんな佐知子から身体を離すと、宗介は一枚の紙切れを佐知子に見せた。
「これが何だか解る?今の君の家は借地なんだ、知ってた?」
 宗介の言葉に不思議そうな顔をして、首を横に振る佐知子
「今、君の目の前にあるのが、その借地契約書。見た通りあと、3ヶ月程で契約が切れる」
 そう言われ書類に目を落とす佐知子、確かに言う通り3ヶ月程で期限が切れるようだ。

 そして、土地所有者の名前の欄を見た時、宗介の言わんとする事を理解した。
「契約更新出来なかったら中川さん、困るだろうな…」
 宗介が最後まで喋る前に佐知子が、悲鳴のような声で話す。
「止めて!お願いします…許して、お母さんも最近具合が良くないの…何でも言う事聞きます。両親には手を出さないで…」
 最後は泣き崩れるように、嗚咽混じりで話す佐知子。
「契約成立だな」
 佐知子に念を押すように言う宗介に、ハイと短く答える佐知子。

 宗介は3人の真ん中の歩美の前に立ち、これからのルールを説明しだした。
「これから君達には、私達の奴隷になって貰い、色々な調教を受けて貰う。期間は、特に定めたりはしない。終わりを決めるのは君達だ」
 そう言うと、3人を見渡し反応を確かめる。
「基本的に10日間の奴隷契約期間を設ける。これは、調教の結果と質により増減する」
 ルールの本質に近づいてくるにつれ、歩美達も真剣に聞き出す。
「調教の方法としては、単独若しくは集団で行うが、その時の内容により最大3日の増減が行われる」
 うんうんと真面目に話を聞く3人、事前にこの調教の内容を聞いていた昌聖達は、この調教ルールの落とし穴に、いつ誰が気が付くか冷や冷やしていた。
「調教の基本的難度から説明して行こう。レベル1は、道具がメインで行われる軽い物。レベル2は、調教師が加わる調教。レベル3は、肉体の変形や改造が伴ったりする比較的重い調教。ここでポイントは、調教のランクを自分で選べる事だ」
 言葉を句切り、奴隷達の理解を推し量る宗介。
「1日に用意されている調教は、レベル1が3つ、レベル2が2つ、レベル3が1つだ。これは、時間の関係上、この数が限度だからだ」
 宗介が説明する事に徐々に引き込まれて、頷く3人の奴隷。
「そして、どの調教を受けるか選べるのは、早い者勝ち若しくは競争による勝者だ」
 宗介が此処までを理解したか、3人に聞く。

 すると、歩美が質問を投げかける。
「それじゃ、早い話レベル2と3を二日間成功させれば、それで契約終了になるんですね」
 歩美の質問に大きく頷き
「そう、その通りだ。成功させれば最速二日で、終わらせる事が出来る」
(成功させられればね…)
 後ろで聞いていた昌聖が、ニヤリと笑う。
「早い者勝ちと言われたけど、それは文字通りで良いんですか?朝早く来て、レベル3を受ける事も可能なんですか?」
 佐知子が、怖ず怖ずと質問する。
「ああ、構わないが私も仕事をしている身だ、朝4時に来て調教をしろと言われても困るから、7時を調教開始時間にする。そこから、レベル3を受けて、普通の生活を送れる自信があるなら、受けてみてくれ」
 宗介の答えにうっすらと、その重さを感じ、3人とも黙り込む。

 質問がとぎれた事を確認し、宗介が続きを話し出す。
「最後は、ペナルティーについてだが、反抗と依頼だ。重い物は10日、軽い物でも5日だ」
 話の意味が分からず、思わず美由紀が口を挟む。
「反抗は解りますが、依頼って何ですか?」
 美由紀の言葉に、軽く手を広げ制すると
「今から説明するが、反抗の軽い奴は、拒否や不服従、言葉遣いや態度の悪さ等。重いのは、暴行や暴言、その他奴隷にあるまじき不遜な態度だ」
 そこら辺は解ると言った美由紀の態度に、苦笑を浮かべながら宗介が言葉を繋ぐ。
「次に依頼だが、これは単純に言えば、[SEXして下さい]や[イカせて下さい]等の主人に対して、快楽を求める行為の事だ、これらは無条件に10日のペナルティーだから憶えておけ」
 宗介がそう言うと、美由紀がそんな事有り得ないと言わんばかりの顔をして。
「本当にそれだけですか?」
 繰り返し質問をする。
 このペナルティーが、後でどれ程効いてくるかを、この時3人の奴隷達は、誰一人理解していなかった。
 説明が終わり、このルールに従う事を誓うかと宗介に聞かれ、3人とも了承し、契約が完了した。

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