僕の転機
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■ 第2章 救いの手9

 全員の契約がなされ、宗介は背後に回り3人の拘束を解きだした。
 項垂れている佐知子に、歩美が凄い目線で宗介を襲えと指示を出す。
 歩美の指示に逆らえずに、小さく首を縦に振る佐知子。
 宗介が全ての拘束を外し、佐知子の前に無防備な背中を晒す。
 佐知子がその背中に、無言で飛びかかる。
 一瞬、佐知子の前から宗介の姿が消えると、佐知子の身体が大きく宙を舞い、背中からリビングの床に叩き付けられた。

 背中をしたたかに打ち付けた佐知子は、肺に溜まった空気を一挙に吐き出した。
 そこに、宗介が足で佐知子の喉を踏み、気管を押さえ込む。
「佐知子。どんな理由が有ろうと、反抗はペナルティーだ。10日の期間延長。判ったな…」
 宗介が宣言すると、顔を真っ赤にしながら頷く。
 宗介は、佐知子の豊かな乳房を鷲掴みにすると、おもむろに引き上げた。
 喉を踏み付けられた状態で、身体を持ち上げられた佐知子の意識は、一瞬で無くなり気絶した。

 そんな佐知子への仕打ちを、恐怖で固まって微動だにできずに見つめる歩美達。
 宗介は、歩美に一瞥をくれ、リビングの隅に置いてあった騎乗鞭を取って戻り、歩美の目の前で2・3度振ると、顔を上げた歩美の目を見つめる。
(お前の指示で、佐知子がこうなったんだ。覚悟しろよ)
 と言わんばかりの目に、震え上がる歩美。
 宗介が鞭を振りかぶると、歩美が怯えて身体を丸める。

 勢い良く振り降ろされた鞭は、歩美では無く佐知子の乳房を捉える。
 スパーン「ヒーッ」鞭の打ち抜かれる音と佐知子の悲鳴が響く。
 鞭の当たった箇所は、ブラウスはもとより、ブラジャーのカップまで裁ち割り、その下の白い乳房に、ゾッとする赤い線を走らせていた。
「いつまで寝てるつもりだ?早く起きろ…」
 先程とは、違う威圧感を漂わせ宗介が佐知子に言い放った。
 佐知子は、痛みを押し殺し、飛び起きて平伏し、何度も詫びの言葉を発した。
(駄目だわ…、今ので分かった…。この人には、決して逆らえない…。今迄の暴力と全てが違う…質も、正確さも、何もかも…。また、あの日々が始まるのね…)
 佐知子は、過去の経験から、宗介の恐ろしさを強く感じて絶望した。
 佐知子の詫びを受け、許しを与えると、3人の奴隷達に向かい
「此処では、ろくな調教も出来ない。場所を変えるぞ」
 立ち上がらせて奥に進みだす。
 暫く歩くと、廊下の突き当たりの床が、開いていた。
 地下に向かって降りる階段を進むと、鉄製の大きな扉が有り、それを潜るとコンクリート剥き出しの広大な空間が広がっていた。

 そこは、一目見て虐待を行う目的の物で溢れていた、牢屋のような鉄格子や、大きな水槽、鉄パイプで組まれた拘束具、大型犬のゲージ、X字に組まれた拘束台、三角木馬に産婦人科の診察台、三角の山が連なっている板、そして、無数のバイブやローター、鞭や縄。
 天井には、縦横に走る鉄製のレールに無数のフックや滑車。
 そして、その場所には不似合いな豪奢なソファーセット。
 昔の映画に出てくる、拷問部屋のような雰囲気だった。
 後ろでこの部屋をマジマジと見ていた昌聖が
「凄い、これ本当の調教部屋なんだね。リアルで有るなんて初めて見た」
 と興奮気味に口を開き、キョロキョロと辺りの物に目を移す。

 宗介達3人がソファーに座ると、立ち尽くす奴隷達に宗介がポツリと呟く。
「契約期間中のお前たちは、奴隷だよな…。そのままで、良いのか?」
 宗介の言葉を聞き取り、いち早く佐知子が行動を起こす。
 着ている服を急いで脱ぎ捨て、全裸に成り、宗介の前に平伏する。
 一瞬躊躇った歩美が、佐知子に続いて脱ぎだしたが、美由紀は状況を理解出来ずに居る。
 歩美が、佐知子の横に平伏した時、宗介が静かに言った。
「終了!これで今日の調教メニューが決定した。佐知子レベル1、歩美レベル2、美由紀レベル3だ。何をしてる美由紀、早く服を脱がないか」
 宗介の言葉に、これが、調教メニューの選抜だった事に初めて気付いた美由紀。
 自分の迂闊さにうなだれながら、服を脱いで行く。
(あ〜ぁ、失敗しちゃった…これで、鞭とかで打たれたりするんだろうな…)
 美由紀は、漫然とそんな事を考えながら、歩美の横に平伏した。
 この後、自分の想像力がどれだけ足りなかったのかを、死ぬ程悔やむ事に成るとは、この時は夢にも思わなかった。

 3人の奴隷は、宗介に指示され、ソファーの前に集まる。
「調教を始める前に、今からお前達の身体を把握させて貰う、付いて来い。昌聖も来て見ろ、多分勉強になる」
 そう言うと奥に向かって歩き出す、4人が付いて行くと一人取り残された美咲に、手招きする昌聖。
 不安だった顔を輝かせ、昌聖の後ろをトコトコと小走りで付いて行く。
 宗介の横に昌聖が並ぶと、宗介がインカムを渡し
「突き当たりに来たらこれを着けて、俺の指示通りに動いてくれ」
 そう言って、ポンと昌聖の肩を叩いた。
 通路の角を左に曲がると、直ぐに突き当たりだった。

 正面には、透明なガラスで区切られた、2m四方の箱が有り、中に直径1.5m位の円筒形のガラスが立っていた。
 その部屋は、手前のガラス面以外が真っ黒に塗られていて、良く見るとガラスの筒の上の方に、太さ15センチほどのリングが付いている。
 小部屋の前に立つと、左手にナンバーロック式の扉が有った。
 昌聖にインカムを着ける合図をすると、宗介がキー操作し、扉の中に消える。
 『昌聖、佐知子に扉を開いて、円筒形のガラスの中に入るように言ってくれ、入ったら足下のマークに重なるように立ち、目を閉じてリラックスしろと伝えるんだ』
 指示された通りの事を、佐知子に伝える。
 佐知子は、驚きながらも怖ず怖ずと指示に従う。

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