僕の転機
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■ 第2章 救いの手15

 美由紀の口から出る泡が、徐々に小さくなり途切れると、宗介が髪の毛を鷲掴みにし、引き上げる。
 激しく咳き込み、水を吐き出し、新鮮な酸素を取り込もうとする美由紀。
 宗介は、そんな事を気に掛ける風でもなく、引き上げると直ぐに美由紀の耳元に、
「どうしてこんな目に有ってる?」
 問い掛け、数秒待ち、手を放す。
 水の中に落ちて行く美由紀。

 また美由紀の口から泡が溢れ、徐々に小さくなる。
 引き上げて、囁く宗介。
 激しく息をする、美由紀。
 手を放す。
 沈んで行く。
 溺れる美由紀。
 引き上げられる。
 延々と繰り返される、溺死体験。
 その光景を、宗介と美由紀以外の者は、凍り付いたように成り、目も反らせずにいた。

 10回目を数えた頃、引き上げられた美由紀が、息を整えるより先に
「ごほ、もう一度げほ、チャンスげほ、くらはいごほ、ごほ」
 宗介に懇願した。
 すると宗介の左手が初めて動き、クレーンを操作する。
 美由紀の身体が、ドンドン持ち上がり、水から離れて行く。
 水槽の直ぐ横の床に、降ろされた美由紀は、グッタリとして動けずにいる。
 宗介が手早く拘束を外すと、美由紀は顔を上げる。

 宗介は、無表情で美由紀に針を放り投げる。
 針を拾い上げ、ジッと見詰める美由紀。
 宗介に視線を移し、右手で針を持ち、左手で左乳首を摘む。
 乳房に視線を移し、針を乳首の横に移動させる。
 また、宗介に視線を戻した時、宗介は首を横に振り美由紀に近づこうとした。
 泣きそうな顔に成り、美由紀は固く目を閉じ一気に針の半分まで乳首を貫いた。
 プシッと軟らかい肉を針が貫く音が、調教部屋に響くようだった。

 美由紀は、涙を流して宗介を見、「出来ました」と言わんばかりの表情をする。
 宗介は、そんな美由紀に無表情で、もう一本針を放り投げ、
「2度目だからな…」
 静かに告げる。
(宗介さん鬼だ…。ここまで追い込むのが調教なのか…?僕に出来るか…)
(酷いわ…流石に、これは同情する…でも、宗介さんに合わなければ、逆の立場に成ってたかも…)
(怖い!怖い!怖い!この人は、危険すぎる…私これから、どうなるの…)
(人で無しだわ…こんな奴らは、一人残らず地獄に堕ちれば良いのよ…淫売も!変態も!みんな…)
 4人が、無言で思う中、呆然とする美由紀の口から、
「約束が…違う…」
 ポロリと呟く声が漏れた。

 宗介は、それを聞き逃さなかった。
「馬鹿な女だ…」
 少し哀れみが入った声で呟き、美由紀を拘束しだす。
「えっ、違う!違います!今、今しますー!」
 暴れようとする美由紀だが、宗介の取り押さえる技術の前に、為す術もなく拘束される。
 あっと言う間に吊り上げられ、水槽に戻される美由紀。

 先程と同じ光景、同じ繰り返し。
 只、違うのは美由紀の左乳首に刺さる針と、宗介の囁く声が無くなった事。
 沈み、溺れ、引き上げられ、沈む。
 何度も何度も繰り返される、既に拷問である。

 美由紀の顔から、表情が消え、顔色も蒼白になって来た頃。
 宗介が、一言引き上げた美由紀を覗き込み告げる。
「ラストチャンスだ」
 美由紀は、表情のない顔で、唇をはいの形に動かした。
 もう、聞き取れない程の声しか、出す事が出来なくなっていた。

 水槽から出され拘束を解かれた美由紀は、その顔に何の感情も、浮かべてはいなかった。
 宗介が先程と同じように、針を放り投げると、美由紀はそれを拾い。
 左手で針を持ち右手で右乳首を摘んで、何の躊躇いも無く貫いた。
 その後、手を放すと平伏して指示を待つ。
 宗介がしゃがみ込み、
「上体を持ち上げて、腕で乳房を持ち上げ、右手で左乳首、左手で右乳首を摘め」
 指示を出すと、言われた通りの行動をする。
 2本の針の外側を掴むと
「動くな」
 短く命令して、一気に引き抜く。
 その間、美由紀は声どころか、微動だにしなかった。

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