僕の転機
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■ 第3章 少女の目覚め2

 リビングに残された二人は、モジモジとお互いを意識して会話が出ない。
(宗介さん、話し振るだけ振って逃げるんだもん…。でも、僕が美咲ちゃんを好きって…)
(嫌だ、私。昌聖君の事そんな風に考えた事、無かったけど…全てを見られてるし、受け入れて貰えるなら…)
 お互いが思惑に押しつぶされそうになりながら、耐えきれなかったのは昌聖だった。
「美咲ちゃん、ごめんね。宗介さん変な事言っちゃって…」
「ううん、大丈夫よ。こんな汚れた女の子を好きになってくれる人なんて、居るわけ無いし…」
「そんな事無いよ、美咲ちゃんみたいに、可愛い女の子だったら絶対、素敵な人が現れるって」
「ふふっ、それでどうなるの?自分の過去がバレ無いかって、怯えて暮らすの?」
 自嘲気味に笑いながら話す、美咲の言葉に沈黙するしかない昌聖。
「誰でも、引くと思うわ。犬のように扱われた女なんて、そんな女を誰が愛してくれる?」
「僕!僕じゃ駄目?美咲ちゃんの事を全部知った上で、僕が美咲ちゃんを愛する…と言うか、全部知ってるけど僕の中の1番なんだ!」
 昌聖の言葉に、言葉を失う美咲。

 それを、否定と受け取った昌聖は、肩を落とし項垂れながら
「御免、やっぱり迷惑だよね。こんなデブが美咲ちゃんの、恋人になれるわけ無いよね…」
 身体を回し、リビングから立ち去ろうとする昌聖の背中に、美咲が抱きつく。
「昌聖君、昌聖君!本当に愛してくれる?美咲を、美咲を愛してくれる?」
 縋り付く美咲に驚き、身体を入れ替え正面から美咲を見つめ。
「僕はずっと美咲ちゃんが好きだった!だから、美咲ちゃんが、どんな女の子であろうと、ずっと愛し続けるよ」
 昌聖の言葉を遮るように、美咲が唇を重ねる。
 唇を重ねながら、美咲が言葉を昌聖の唇に送り込む。
「どんな女の子でも構わない?」
「どんな、女の子でも構わないよ」
 唇を離し、俯く美咲。
 黙り込む美咲を怪訝そうに見る昌聖。
「あの、あのね昌聖君…宗介さんの所に来たのは、別に理由があって…。えっと、…あの…」
 俯く美咲の顔が、真っ赤になっていく。
(美咲ちゃん、宗介さんに調教して貰いたかったんだ…、今までされてた事と宗介さんの調教が違う事に、美咲ちゃんも気付いたんだ)
 どう、言い出して良いか解らず、モジモジする美咲。
(宗介さんが責任持てって、言ったのはこう言う事だったんだ)
 美咲を遠ざけようと言った宗介の一言は、美咲がこうなる事を予測していたのだ。
 昌聖の中で、黒い物が身動ぎをする。
 抑圧されたそれは、出口を求めるかのように、昌聖の心の隙間を探していた。

 美咲を抱き締める腕に力を込め、昌聖が美咲の耳元に囁く。
「僕が、美咲ちゃんを調教してあげる。美咲ちゃんが、マゾだった事に気付いたように。僕も、自分がサドだって気付いたんだ…」
 昌聖の腕の中で、ビクッと震えおずおずと顔を上げる美咲。
 昌聖は自分の、発した言葉に驚く。
 そして、昌聖の心の隙間を見つけたそれは、大きく存在を主張し始める。
「僕が、美咲をずっと愛してあげる。」
 美咲が、震える唇を昌聖に重ね合わせ。
「ずっとなんて言わなくて良いです。美咲を、可愛がってくれる気持ちが、有る間だけで構いません」
 激しく舌を絡ませながら、美咲が続ける。
「その間、美咲を飼って下さい…」
(美咲ちゃんは、この世界にはまりこんでしまったんだ。僕もこの世界から抜け出せそうに無いや…。なら、開き直るぞ!)
 昌聖の中で、大きく音を立て、何かが外れた。
 それは、昌聖が押し込めていた物の、鎖の一つだったのかも知れない。
 美咲が舌を絡めてくるのを止め、唇を離しソファーに腰を掛ける昌聖。
 昌聖の態度の変わり方に、不安を押し殺せない美咲。
「美咲。僕に綺麗な、お前の身体を見せて」
 昌聖の言葉に顔を輝かせ、洋服を全て脱ぐ。
 全裸になった美咲は、昌聖の前でゆっくり回り出し、自分の身体を全て見えるようにした。
「美咲、おいで」
 昌聖の声に四つん這いになり、昌聖の足下ににじり寄る。

 しかし、昌聖は自分の膝の上をポンポンと叩きながら、膝の上に乗る事を指示した。
 美咲は、初めての要求に対し、躊躇いながら昌聖の膝の上に座る。
 膝の上に座った美咲は、どうして良いのか解らず、手を太股の上に置き固まった。
 昌聖が、そんな美咲を抱き寄せて、手を首の後ろに回させた、そして頭を自分の胸に引き寄せる。
 ビックリした美咲は、そのまま昌聖の胸に頭を預けてウットリとする。
(これ、気持ちいい…昌聖さんの胸大きい…恥ずかしい格好してるのに、恥ずかしくない。こんなの初めて…)
 美咲は、自分の変化に酔っていた。
(やっべ!美咲ちゃんが…。裸の美咲ちゃんが!僕の膝の上に…膝の上に座ってる!夢?これは、夢じゃないよね?夢でも良い!覚めないで!)
 昌聖は、表面上の落ち着きとは裏腹に、かなりテンパッていた。
 美咲の形の良い乳房に、恐る恐る手を伸ばす昌聖。
(柔らかい、でも指を弾くみたいに張りがある。綺麗だ…この身体を、完全に僕の物にしたい…)
 美咲は、昌聖の気持ちに気付く事無く、乳房を触られる感触に甘い声を出す。
「美咲は、どんな風に扱われたい?」
 興奮で、口の中が乾いた掠れ声で、昌聖が訪ねた。
「昌聖さんが、望むようにして欲しいです。でも…、最初から凄く痛いのや、怖いのは少し嫌です。恥ずかしい事なら一杯出来ます」
 美咲は、既に自分が調教を受ける状況に酔っている。
(美咲ちゃん?性格変わった?それともこれが、本当なのか?)
 美咲の変化に、自分を解放する決心を決めた昌聖。
「よし、じゃぁ、今から美咲は、僕のペットだ!美咲は、ペットとしてどう振る舞えば良いか考えなさい。僕の考えと違っていれば、その時注意する。解った?」
 ぶちぶちと音を立て、昌聖のサディズムが頭を持ち上げる。

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